第六話 『約束』
「ただいま〜。」
「お帰りなさいませ、夜月様。」
メイが笑顔で迎えてくれた。
「あれ、今日はメルじゃないんだ?」
「お姉ちゃんは寒気がすると言って布団に寝込んでます・・・。」
メイは、あははと笑う。
「あ〜もしかして。」
夜月は苦笑いをする。
「私は夕飯の支度をしてきますね。夜月様はお姉ちゃんの所に行ってあげて下さい。」
そういってメイは台所へ走っていった。
メルの部屋のドアをノックする。
「はいっても良いか〜?」
「う〜、どうぞ。」
言葉に甘えて部屋に入る。
「大丈夫か?龍貴が噂でもしてたんだろう。」
「さ、寒い・・・。その龍貴とかいう奴、どうにかならないんですか。」
「うーむ、龍貴はあきらめが悪いからな、多分無理だろう。」
「そうですか・・・。」
メルは残念そうに布団に潜り込む。
「・・・一つ聞いていいか?」
「どうしました?」
「光月のことだ。」
メルはピクッ、と反応する。
「光月は修道院にいるはずだぞ、どういうことだ?」
「それは・・・。」
「言っておくけど、隠すなよ。ご主人様からの命令だ。」
「・・・弱りましたね。そうたいしたことではないのですが、修道院から抜け出したかったんでしょうね。」
「はぁ?なんでだよ。香月がいるじゃねえか。寂しいことなどないのに。」
「多分違います。光月様は・・・。」
「夜月様に会いたかったんだと思います。」
「!!!」
そうか───。
確か昔交わした約束があったっけなぁ・・・。
俺は7歳で、あれは修道院から親父に引き取られるときだった・・・。
「・・・行っちまうのか、夜月。」
「ああ。元の家に帰れるなんて夢のようだしな。香月、お前は来ないのか?」
「いいんです、お兄様。修道院には愛着がありますし…。光月兄様もいます。私のことは気にしないで下さい。」
香月は笑顔でそう返す。
「香月…。」
「夜月…、約束しよう。高校生になったら必ず会いにいく。いいな!」
「ああ。」
「絶対だぞ!」
・・・すっかり忘れてた。
「…思い出せましたか?」
「うん…9年ぶりだったなぁ。奴は昔から変わらない顔をしてたな。」
「夜月様…。」
「・・・さて!そろそろ晩飯の時間だ。腹が減っては戦はできない、だろ?」
「…そうですね。いきましょう。」