第四話 『心友と親友』
「むむっ…。この学校には邪悪な気配が漂っている・・・。」
夜魔が独り言のように語り出す。
ビクッ、と夜月はナイフのことと思い、戸惑っていた。
夜魔は気配を感知する能力を持っているようだ。そのせいで取り憑かれてるのかも知れない。
「どうした夜魔?邪悪な気配って。」
それを聞いていた俺の親友、龍貴が話に入ってきた。
「沢山ありすぎて捉えにくいけど、2つは捉えた。1つは夜月君。もう一つはC組から・・・。」
やっぱりナイフかよ! いや、まずいことになったぞ…。
「紅乃さんが…ですか?」
「夜月ぃ!?そんなことあるわけがないだろう!俺は小学校の時から一緒だったが、邪悪なんて一片もなかったぜ?」
渚は天然、龍貴はバカで良かった。まあ逆にムカつくところもあるけどな。
「・・・だといいんだけど…。」
「いや、夜魔。俺はこの通りいたって正常だぞ。」
「だよなぁ。こいつの家は金持ちで、しかもメイドがいて…。くぅ、羨ましいぜ!」
「へぇ〜紅乃さんお金持ちなんですか!凄いですね!」
渚はまるでお金を拾ったみたいな、とても瞳がキラキラ輝いていた。
「違う話になってるぞ。金が沢山あるのは親父のおかげだけどな。あと龍貴、お前今日もメルに手紙送っただろ。」
「あんな美しいお方を見逃す男が何処にいるか。どんな手をつかってでもGETしなければ!」
本気のようだ。魂が燃えている。顔からして分かった。
「残念。俺がもうお嫁にしておきました。」
「な、なんだってー!?お前はいつの間にそんな男になった!?まだ早い、早すぎるよ。お父さん泣いちゃうよ?」
「冗談。お前もそんな男だろ。まったく、俺はお前みたいな心友がいて嬉しいぜ。」
「・・・話についていけない・・・。」
夜魔が寂しそうな目でこちらを見ていた。
一方、紅乃家では…。
「・・・くしゅん!」
「お姉ちゃん、風邪?」
「いや、誰かが噂でもしているのかな。多分あの龍貴とかいう男。」
「あ〜…。十分あり得ますね・・・。」
時は流れ、放課後になった。
「おい、夜月。渚ちゃんと一緒に学校回ってみたらどうだ?」
夜月は少し驚いたが、呆れたように
「・・・お前狙ってるだろ。顔に出てるぞ。」
渚も断るだろうと思っていたのだが、
「見学ですか?いいですよ〜。」
即答かよ。
「いいのか?」
「はい、男の人と回れるなんて嬉しいです。」
「良かったな。それじゃ、行ってこい!」
龍貴はニヤニヤしながら夜月の背中を押した。
教室から出たとき、光月がキョロキョロしていた。
「お、いたいた。夜月、久しぶりだな。探してたぜ。」
「光月!久しぶりじゃないか。」
「お知り合いですか?」
「ああ、こいつは紅乃光月。俺の従兄弟だ。」
「へぇ〜従兄弟さんですか。」
「その子は彼女か?早すぎると思うぞ。」
「ち、違うぞ!学校を見回りにいくだけだ!」
「ふっ。そうか、まあ頑張れよ。」
「へいへい。と、香月の方はどうだ?」
「ん、元気だぞ。安心してくれ。」
「そうか、良かった。」
「それは置いといて、彼女を待たすといけないんじゃ?」
「おっと。そうだった。渚…」
「紅乃さん、行きますよ!」
渚は急に夜月の手を引っ張る。
「いてて!ちょっと待ってよ!」