さりげない告白
帰り道、私はある男子と二人で帰っている。付き合っている、とかそんな関係じゃない。ただ帰る方向が同じなだけ。それなりに仲のいい友達、という関係である。
と、相手には思われているだろう。ただの友達だ、と。まあ、ここまで言えば分ってもらえると思うけれど。
私は彼に恋している。
告白とかはしない予定。きっと叶わないだろうから。今の関係が壊れるのもいやだ。
「ねえ、好きな人とかいる?」
「いるよ」
即答された。これはもう望みないな。
誰だろう。クラスの子…先輩…他校の子…アニメの中のキャラクターとか言われたらどうしよう。
「告白しようとも思ってる」
「え、そうなの」
「うん。叶わないかもしれないけど」
叶わないでほしい。他の子と一緒にならないでほしいと思う。それでも。
「がんばれ、応援する」
なんて心にもないことを言うのだ。なぜ言ってしまったのだろう。いい子でいたいから?嫌われたくないから?どっちもそうだ。腹黒い、私。彼が女の子としゃべっているだけでヤいてしまうのに。
「ありがと。お前だったらどんな風にコクられたい?」
「え、うーん…」
告白されるところを想像する。彼からならどんなのでも嬉しいかも。
「普通にさらっと言ってくれるのがいいかな」
「へー」
そんな反応をした後、パンっと頬をたたいた。
「よっしゃ、やったろ」
やらないでください。
あーあ、余計なこと言ったな。
「あ、そういえば今日さあ」
「うーん?」
そして話はそれて今日あったことの話になった。数学のパゲ田が唾飛ばしてノートにかかったとか、もうすぐテストで嫌過ぎる、とか。
そんな話もキリがつくと、彼は少し微笑んだ。
あまりに優しく笑うから、ドキッとしてしまうほど。
「好きです」
……。
「え、ちょ、何か反応して」
「え、あ、ああ、練習かあ」
「違うよ。練習なんかじゃないよ」
「でもさっき好きな人いるって」
「だからお前のことだよ。俺はお前のことが好きなの。超好きなの。だから、付き合って下さい!」
みるみる顔が赤くなるのが分かった。うっすらと手に汗がにじむ。
「あっれー?さらっと言えてなかった?」
「さらっとしすぎてるから驚いてるの」
頬を赤く染めた彼が、またにっこりと笑う。
「俺と付き合って下さい」
それはまるで夢のようで。
私にこたえられる返事はただ一つ。
「…はい」