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光と闇  作者: 緋翠
序章
5/22

05

翌日からどうやら訓練が始まった。

と言っても一度幼馴染と聖女様と他の何人かと会って、騎士みたいな人に図書室に向かえと言われたぐらいだからまともな訓練を受けられるのは幼馴染だけなんだろうけど。

勿論その幼馴染は聖女様と共に訓練場へ。

他の人も皆女性ばかりで、幼馴染を囲うようにして行った。

もうハーレムになってるんだね……なんて思いながら、図書室に向かおうとした時だった。


「そこのお前、レニア・フォーゲルを見かけなかったか?」

「レニア様でしょうか?えぇと確か……」


不意に後ろから掛けられた声の正体を知ろうと身体の向きをそっちに変える。

そこにいたのは幼馴染と同類と言え、私にとっては忌避すべき存在――つまりイケメンだった。

どうして話し掛けられたんだ、と思いながらさてあの女はどこへ行ったか、と考えてはたと思いつく。

そういえばこの教団にいるものは皆聖女様と呼ぶのに、目の前の男はフルネームで訪ねてきた。

立ち振る舞いとかそこら辺の人とは違うし、なんだか華やかしいし…もしかして結構な御偉いさん?


『その可能性は有り得ますね』

『つかあの口ぶりはなんだっつの』


お前ってなんだよ。

でも心の声はしまったまま。

口調は上品に。


「確か訓練場の方に向かわれたと思います」

「訓練場に?」

「先日、勇者様が召喚されてご一緒に付き添われているみたいなんです」

「そういう事か。済まないな、足止めさせた」

「いいえ、とんでもございません」


謎の銀髪美青年の背中を見送りながら図書室へ向かおうと体を反転させる。

背後から聞こえた「あのクソ女何処で油売ってやがる」なんて、私ハ聞イテイナイ。

でもあの人綺麗な色の髪だったのに、アホ毛(っていうか跳ねてるの?)が酷かったな、そーいや。



図書室に入って、異世界でもやはりこの空間は変わらないと知り、テンションが上がる。

この閑静さが私を癒すのだ。

そしてあの幼馴染が起こすトラブルから回避できる空間でもあるのだ!

人の気配が全くしないこの空間で、集中して取り組めるのは嬉しい。

いつも妬みとか見下した目で見てくるあの聖女様に今なら感謝の言葉が言えるだろう。

よし、読むぞ!と意気込んで本のページを捲る。


「…………」


そういえば言葉は分かっても文字が分からないんだった。

がっくり項垂れる私に、フェルマーがとんでもない言葉をもらす。


『現代ティネルダ語は読めませんが、私の力で古代語ならば読む事が可能です』


いや古代語読めてもねぇ……近代の歴史とか現代の国事情とかあるじゃない?

そういうのを一応頭に叩き入れておこうかと思ったのだけど、まぁ仕方ないわよね。

それに一昨日ぐらい前に文字の習得って考えていたし、言語がなくなっただけなんだから簡単よね。

まず文字を覚えるには絵本が良いだろう。

私達も絵本を読んで覚えた。

そこからハイペースで単語を覚えれば問題ない。


『フェルマー、幻術で私の分身を創りなさい』

『御意に』


さぁ、ここから出るぞ。



身なりも上等でとても美しい女性が、働いている本屋へとやってきた。

遠目でも分かる程肌はとても綺麗で、日焼けなどした事もないような……そう、まるで深窓の令嬢。

すっと細く高い鼻、そして長い睫毛が茶色の目を影で覆う。

真剣に本を読んでいる眼差しが、近寄らせない雰囲気を漂わせている。

細い指がとても女性らしく、彼女が本を捲る度に綺麗な所作で動くから目が全く離せない。

長いブラウンの髪が陽に当たって神秘的に映る。

なんと美しいことか。

思わず恍惚の溜め息が出る。


絵本読んでるけど関係ない。

立ち読みで、全く買う素振りが無いけど問題ない。

彼女がいるだけで客が入ってくる。

そう、さっき店長が呟いてたんだから問題ないだろう。


「(あぁでも、婚約者とかいるんだろうなぁ……)」


夕方になると彼女は帰っていった。

朝から夕方まで立ちっぱなしだったというのに、疲れすら感じさせない足取りで颯爽と帰っていった。

その所作もまた美しく、思わず常套句を言うのを忘れかけていた。


「あ、ありがとうございましたー!」


おお、ついに話しかけてしまった。

来た時は緊張で言えなかった。


「また明日来ますわ」


声に振り返った彼女は微笑みながらそう宣言した。

真剣に読む表情しか見てなかったからか、にっこり笑う彼女の顔に顔が熱くなる。

可愛い。

ただその一言に尽きる。


だらしない表情を見た店長にからかわれるまで、俺はそこでずっと彼女の背中を見送っていた。



昼に古本屋を早くに見つけられたため、夕飯の時間までそこで絵本を読み通してきた。

何回も読み、フェルマーと共に文字を覚え、つたないながらも思い出しながら紙に書いていく。

どうも英語に似たような文字だったため、覚えるのは至極簡単だったが少し似ているとなるとどうしても知っている方が出てきて邪魔してくる。

だがフェルマーは全く知らないから、間違えそうになるとちゃんと伝えてくれるおかげで一日の内にアルファベットに似たこの世界の文字をマスターできた。

あとは単語を覚えていくのみ。

早々に就寝した。



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