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光と闇  作者: 緋翠
第二章
21/22

04


前回言ったような気がするので割愛させてもらう。

”銀瑠璃の遊星ラズリ・ステラ”への依頼は”四宝集めの手伝い”であり、受けて初めて皇子の意図に気付いたアディア君がバカに見えた。

ミリアはさすがに分かってたらしいけど、なんだってアディア君はバカ(アホ?)の子なんだろう。

そういえば最初に会った時もチンピラに絡まれてたし。

彼女が天然ボケならアディアはドジッ子なのか?

ミリアならまだしもアディア萌えは無い、かなぁ。


「なんだか久しぶりだよな。こうやって玲と話すの」

「そう?一哉君がいない日々も楽しいと思ってるけど」

「玲はかわいくないなぁ」


お前の言うかわいいの基準なんて知ったこっちゃねーよ。


舗装されてない街道ではあるが、揺れを全く感じない事で快適さが伴う、この最高級の馬車のおかげで全く酔わない。

というのも馬車全体が特殊な術式を用いて浮いている為である。

馬達の負担と馬車酔いを考慮したエレヴァンでは最新の技術だ、とは皇子がやたら嬉しそうに話していた。


「ところであの双子はいないけど、どうしたの?」

「双子?……あぁ、サナイフェに着いたらいつの間にかいなくなってた」


あんなに慕っていたのに、こんなすぐポーンと忘れられるなんて……なんて哀れなの。

というか着いたらどっか行ったっていうのも気になるけど。


「目的地までのルートの確認でもしておく?」

「あぁそっか……オリデュス山脈からは歩くんだったわよね」


オリデュス山脈とはニヴァーナ大陸の北に位置する極寒の地との境目であり、寒さを遮ってくれている南側の住人にとってはありがたーい山脈なのである。

よって、オリデュスという名はかつての北の英雄王に由来すると言われている。

比較的北に位置するエレヴァン皇国の首都サナイフェもこの山脈に寒さを守ってもらっていると言えるだろう。

そんな山脈を越えた先に私達の探す手がかりとやらがあるらしい。

なんでまたそんな寒い所から行くかな。


「山越えをする人なんて滅多にいないらしいから、往復含めて三週間は掛かると考えないと」

「食料と防寒具、それに雪山での体力消耗を考えると荷物はコンパクトにしましょう」

「それに魔物は強いって聞く。アディアとミリアの武器は何本か支給されているとはいえ、限度がある」

「刃こぼれしたらそれだけ仕留め損ねて体力を失くすわね」


旅慣れていないド素人がいきなり雪山に登山しにいくのは無謀だと一目瞭然である。

まったく、いきなりとんでもないものから探させるものだな、あの皇子は。

どう考えたって荷物もちのロバも連れて行けない状況で荷物が多すぎ。


「でも玲は何か活用できる方法を知っているんだろう?」


そんなことは露知らず、目の前の男は飄々と言ってのけた。

こいつはきっと私の事をドラ○もんだと勘違いしている。

で、四次元ポケットがフェルマー。

そこそこ妥当な線だと思うから否定はしない。


『あなたの本にどれだけの物を詰め込める?』

『やはりそう来ましたか。一ヶ月分入れるなど、朝飯前ですよ』

『じゃあそこにプラス素材が来ても余裕ね』

『え?あ、いやちょっ――』


「荷物面は問題しなくても平気よ。それよりも――」



「さむ……ッ!!」


交代してから馬車の中にいたため、寒さに気付かなかった。

すぐに分厚いマントを羽織ったものの、身を凍えるような寒さに震えが止まらない。

皇子が言っていた異常な力というのが、山脈の向こうにある寒さが麓の村までやってきているのだ。

今まで凌いできた山脈を越えるほどのこの寒さで、村人達の姿は全くと言っていいほど見えない。

ミリアもこの気温の所為でいつもよりテンションが更に低い。


「大丈夫か?もう一つ羽織れるものあるけど?」

「その格好を見てると寒さが余計増すわ……。でも、ありがたくいただく」


いつもの腹だしの格好でいるアディアはけろっとした顔で分厚いマントを手にしながら近付いてきた。

ご丁寧にも貸してくれるだけでなく羽織らせてくれたので、手を伸ばして余計に寒い思いをしなくて済んだ。

山はこれ以上厳しいっていうんだから、何か対策用の術でも開発しておけばよかった。

それにしても。


「一哉君、相変わらず過ぎでしょ……」

「そうかな?ディアマンテが空気を調整してくれてるんだ。寒さなんて感じないよ」

「くっ……卑怯だぞ!仲間だというなら全員分に掛けたらどうだ!?」

「ディアマンテが勝手にやってるんだから卑怯じゃないと思うけど」

「ミリア、口で一哉君に勝とうだなんて思わない方が賢明よ」


じゃあどうするんだとでも言いたげな表情に、どうやら彼女はまだディアマンテの恩恵に与る事を諦めていないらしい。


「雪山で倒れたらどうする」

「大丈夫よ。一哉君なら私達三人が雪山で倒れても一人で担いで麓まで降りてこれるわよ」


さて、フェルマーの書の中に軽い呪いを施す術式を軽くメモしていた気がするんだけど、どのページにあったのかしら。


『三百九十五ページの右下にあります』


さすがフェルマー。

検索仕様はいつ付けたのかしら?


「玲?何そのページ……もしかしてお前、俺の事脅すつもりか?」

「一哉君じゃなくてそのディアマンテって奴。さぁあなたの大好きな一哉君が呪いで不憫な目に会う前にさっさと私達に恩恵を与えなさい!」

「結局俺も脅されてるじゃないか」


しんしんと降り積もる雪のおかげで村の入り口で騒いでも誰も咎めてこない。

宿屋備え付けの馬車小屋に馬達を置いて部屋を取りに行っていたアディアは、一哉と彼に襲い掛かる二人の友人の楽しそうな姿に無意識ながら羨望の眼差しを送っていた。


「あいつら何やってんだ……?」


なんだか自分だけ除け者扱いされてる事が悲しくて、それを誤魔化すように手を振って雪にも負けないぐらい、三人に向けて大声で叫んだ。




一しきり雪の中で動いたおかげで体も温まり、良い感じにお腹も減った。

アディアがすごく寂しそうだったけど、結局あの後四人で雪合戦していた。

先程までの寒さがどこへやらと感じだが、久々に心から楽しんで体を動かした気がする。


「あんたらこの寒い中駆け回ってたのかい?」


宿屋の玄関口で被った雪を払う姿を見ていたのか、熱いお茶を一人一人に配りながら女将さんが話しかけてきた。


「そうなんですよ」

「元気だねぇ」

「そういえば、まだここの地域は積雪の季節じゃなかったんじゃないか?」

「そうだよ。だっていうのに、今年はもうこんな雪が降っちまってねぇ……おかげでまともに食料を保存できてないよ」


愚痴りながら離れていった女将さんの背中には疲労だとかそういうものが感じられた。


「あの人も大変なんだな。……でもさ、それを俺らがなんとかするんだ。頑張ろうぜ!」


見送っていたアディアが一層意気込む。

だが私達も彼女達と同じ食糧難なのだ。


「現実見てから言ってちょうだいね?」

「食料はエレヴァンから出てくる時に何日分か持ってきてるけど、きっと山越えしてる間に底を付いちゃうね」

「マジで?この前”物質永久保存できる”って言ってたじゃんか!」

「誰が?」

「レイが!」


アディア君、指を差すのはいかんよ。

一斉にこちらを振り向いた二人の視線もなんのその。


「それは理論上の話であって、まだ出来てないわよ?」

「じゃ、じゃあ……一気に移動できるっていうのも……」

「そうね。まだ出来てないわ」

「その理論、俺にも見せてくれない?」


おっとまずい。

こうなっては全て一哉君に実用化可能の所まで一気に持っていかれてしまう。

せっかく私一人(+フェルマー)で考えた理論を、こいつはたった一回で理解して術式を組んでしまうのだろうか。

この理論を確立したのに一週間も掛かったのに!


一哉君を見ると、いつの間にかフェルマーの書を読み出していた。

ちょっと待て。

分厚いマントまだ一枚羽織ってる状態でどうやって腰にあるブックホルダーから抜き出したんだ!?


「あ、ごめんね。前に盗賊の子に教えてもらってて、つい抜き取っちゃった」

「……その癖、直した方が身の為だと思うけれど?」


仕方ないか。

ここで怒りの視線を彼にぶつけるのはお門違いだ。

彼はちゃんとその前に聞いている。

だがな、借りるというその一言は欲しかったぞ、我が心の友よ。


「レイ、腹は減ってないか?そういう時はイライラしやすいと聞く」

「……そうね、何か食べましょう。ミリアは何が良いかしら?」

「ポトフが食べたいな」

「あ、俺も!」

「カズヤはどれにするんだ?」


読み耽っているおかげで一哉君の耳にはミリアの声が届かなかった。

アディアが肩を揺さぶって気付かせようと彼に腕を伸ばしたのをそっと止める。

疑問に思ったアディアに「気にしなくて良い」と言って先に三人分の注文を済ませた。

さっきは悔しく思ったが、物質をそのまま永久保存できる術が完成すれば山越えの時に便利だろう。




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