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光と闇  作者: 緋翠
第二章
19/22

02

お久しぶりです、生きてます。

更新したのが随分前に感じますね、皆さんは元気に過ごされているでしょうか。

作者は文章書かずにウハウハしながらゲームしてましたごめんなさい←


吐き気と気持ち悪いのと頭痛と格闘し始めて四日。

ようやく辿り付いたのか、扉が開けられると眩いほどに光が差し込んで何も見えなくなった。

座りっぱなしで足元も覚束ない中、出ろと無慈悲にも一言の命令に従いながら降りた時だった。


「玲!!」

「ぐはっ!」


横から掠め取るように、速すぎて何が激突してきたのか分からなかった。

まぁ声からして一哉君だろう。

力を込めて抱きしめてくる辺り、やはりこいつは相変わらずの性格である。


「ぐ、苦じっ」

「あ、ごめん!……っと、無事そうだね」

「全然無事じゃない、吐きそ……う゛っ」

「大丈夫?命の躍動、彼の者に与えよ――ヒール」


術の発動と共に、身体に光の粒子が溶け込み、一瞬で乗り物酔いが消える。

ついでにいうとこれまでの疲れも取れた感覚さえする。


「ありがとう。……そっか、治癒術習得したの」

「うん。光属性だから、丁度良かったんだ」


どうやら衣装チェンジしたらしく、あのヘンテコな勇者っぽい服ではなく白を基調とした軍服のようなものを着ていた。

アレは私も無いと思ってたから、今の服が凄くまともに見えた。

久しぶりの幼馴染との再会を楽しんでいると、横からかなり恨めがましい視線が突き刺さってくる。

なんだと思っていると聖女様と猫耳少女がこちらをじっと見ていた。


「気軽に触らないで下さい」

「そうだにゃ、あんたはカズヤにふさわしくないのにゃ」


聖女様は相変わらずとして、なんだかこの猫耳少女はそのまま体言しているようである。

どうやら一ヶ月の間でまたしてもハーレムパーティーを……もうこの際どうだって良いか。


「二人とも、いい加減にしてくれないか」

「か、カズヤ様……?」

「どうしたにゃ?あたし変な事言ったにゃ?」

「玲は俺の幼馴染だ。幼い頃からの友人に少しは敬意ぐらい払えよ」


珍しいと思った。

滅多に怒らない一哉君が感情むき出しで言葉が少し荒っぽくなってる。

二人は一哉君に言われたのが相当ショックだったらしく固まってしまった。


っていうかさ、聖女様って言われるぐらいなんだから少しぐらい嫌いな人間に対しても笑顔で厭味の一つぐらい言えるようにしといた方が良いんじゃないの。

少なくとも一哉君は女嫌いも多少入ってるんだからそれを隠して上手くやってると思うよ。


「ねぇ聞いた?私がここにいる理由」

「玲が見つかったって事しか聞いてない」

「あら?そこの彼女は私を”勇者の義務を放棄した国家反逆者”として、友人まで巻き込んでここまで護送してくれたけれど、あなたには話を通してないのね」

「はぁ!?いつ放棄したんだ?大体、お前はレニアに突き落されてから行方不明扱いになってたっていうのに?」


一哉君の冷たい目で見られている聖女様は、面白いほどにびくびくと震えながら目を合わせないようにしていた。

やっぱり言ってなかったか。

こちらからも冷たい目で見れば睨み返してくるのかと思ったら、しおらしく俯いた。

自業自得、ざまぁみろだの心で罵詈雑言を吐いていると、ミリアが眉を吊り上げ睨みながら一哉君の襟元をいきなり掴んだ。


「おいっ!今の話、どういう事だ!!」

「どういうって?この女は風の魔術を使ってまでリヴァイアサンの嵐の中、玲を海に突き落した」


気迫あるミリアの声に眉一つすら動かさず、彼は冷静にいなした。

その言葉を聞いた途端、ミリアは一哉君から離れて聖女様へと飛び掛ろうとした。

周囲にいた衛兵が反応しても、既にミリアの手の届く範囲に聖女様はいる。


「!」


か細い首にミリアの手が差し掛かろうとした時、ぴたりと突然動きを止められた彼女は、誰が止めたのか分かると悔しげな視線を寄越した。


「ミリア、その方はヘレーネ教団の聖女様よ」

「どうして止めるの、レイ!アンタを傷つけた人間だっていうのに……!」

「それでもよ」


聖女様は地面に座り込み、目からは涙がこぼれている。

正直言ってその姿を見ても許せる気がしない。

ミリアの気持ち、嬉しいけれど気持ちだけで押し留めて欲しかったかな。


「そっか、レイが嵐に巻き込まれたのはそういう事情があったんだな。で、リヴァイアサン倒したのってこの人への腹いせ?」

「心外ね。やるんだったら本人にきっちり返すわよ」

「リヴァイアサン倒してたんだ。一応でも勇者の仕事はしてた訳だ」


ああいうのが勇者の仕事なんだ……。

だったら勇者いらなくね?あぁそういえば魔王を倒せる力を持つ人間じゃないとダメなのか。

うーむ、だったらわざわざ異世界召喚に踏み込まなくてもこの世界から探すぐらいは出来たんじゃないのかね。

むしろ世界にいなかったからわざわざ異世界にまで手を伸ばしたのか、伸びてしまったのか。

でも翻訳付きの指輪渡してたから前者だろ、どうせ。


「カズヤ!酷いのにゃ!そこまでレニアに酷く当たらなくても」

「こいつはそれだけの事をやった。少しは自己を省みる事だ」


付いて来て、と歩き出した一哉君の後を追う前に、ミリアの拘束を解く。

聖女様は既に衛兵と猫耳少女に守られていたから、危害は加えないと思うが……少し心配で振り返ると案外ぴったりと後ろに付いてきていた。


「ごめん。少し血が上ってた」

「いいよ、ミリアの性格は知ってるから」


短気で仲間が馬鹿にされたらすぐに喧嘩吹っ掛けるのなんて、最初から知ってる。


色々な道に枝分かれしている城内を完全に覚えて歩くには相当な時間が掛かるだろうと予想できる。

右へ行ったり左へ行ったり。

上の階へ行ったかと思えば下の階へ降りたり。

最初は一哉君が面白半分でわざと迷った振りをしているのかと思ったが、どうやら彼自身も迷っていたらしい。

おいおい誰だよ、あんな自信たっぷりに付いて来いだなんて言ったの。


「まずい、このままでは夕飯に間に合わない……!」

「ちなみに夕飯は?」

「エビフライが食べたい」

「それ一哉君の希望じゃない」

「今日こそエビフライが出ると思うんだ」


お前は一体いつまでエビフライが出ることを望んでいるんだ。

結局四人仲良く、全く人が通らない古ぼけた通路を一哉君の言う夕飯の時刻以後も彷徨う事になった。



「遅いっ!!」

「ちょっと寄り道しちゃった」

「ちょっとどころじゃねぇよバカっ!俺が一体どれだけこの時間を楽しみにしていた事か……!」


苛立ちを隠さずテーブルに拳を叩きつけたその人物を見た時、初めて会ったような感じがしなかった。

地団駄を踏む彼の事などお構いなしに一哉君は悠々と椅子へと座る。

肘をついて、未だに顔を上げない銀髪の彼を見下ろすように眺めた。


「なんだよ、俺とそんなに飯食いたかったのか?」

「当たり前だろ?お前がいねぇと飯食えなくしたのはどこのどいつだよ!俺を飢え死にさせる気かこの野郎!!」


ビシッときれいに腕をまっすぐに伸ばして一哉君を指した。

散々文句を言い終わった後に流れた「ぐぅ」という音がなんだか場違いに聞こえないのが不思議である。

それは今まで食事が話題だったからだろうか。


恥ずかしさで一気に勢いを失くした彼はそのまま着席した。

それが合図だったかのように、彼の後ろにいた軍服の女性が私達にも着席を促した。


「あーなんか見苦しい所見せちまったな」

「存在自体見苦しいから心配いらないよ」

「フォローか?喧嘩売ってんのか?」

「後者だね」

「よし、今からお前に出す料理を全部パイラの肉にしてやる」

「この方はこの国で今一番国民に支持されている偉大な方で、そして次期皇王とも言われている方なんだ」


その素早い掌の返しようには感心する。

そしてそれを聞いた次期皇王とやらはかなり満足げである。

……そんな簡単な褒め言葉でこの国は大丈夫なのか?


ちなみにパイラの肉とは、パサパサで引き締まりすぎて硬くて食べづらいと言われている。

そして言わずものがな魔物の肉である。

唯一魔物の中で食せる肉として有名だが、あくまで非常食という考えでしかない。


「で、そのお偉いさんと私達は一体どういう了見で夕食をご一緒させて頂いてるのでしょうか?」

「あれ、覚えてないの?」


『こちらの方はエレヴァン皇国の皇子ですよ』

『あー……あの偉そうな感じの人?人違いじゃないの?』


先程までのやりとりを見ていると威厳に溢れていた第一印象とは全く違う印象を受ける所為でなのか、バカキャラに見えてくる。


「何だと?俺はお前の事を覚えているのにどうしてお前が俺を覚えていない!!」

「さぁ?何分、どこかの誰かさんに嵐の中海に落とされたりと色々ありましてね」

「む……その件に関してはこちらに任せておけ」

「そうですか」


まぁどうだって良いんだけど、たぶんごちゃごちゃと複雑な事情って奴がからまってくるんだろうね。

っていうか誰の仕業か分かってるんだ。


「まぁしばらくは勇者としての仕事もないし、ゆっくりしていけよ」



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