7-罰ゲームには気を付けよう
遂に部活動スタート!
とは言っても、放課後にいつものメンバーで集まって駄弁るだけ。
「これ本当に部活の意味あるか?!」
俺は心から叫んだ。
いやこれ特に部を作る必要なかったよね。完全に巻き込まれただけだよ。理不尽ここに極まり。名前だけ貸して幽霊部員でいいんじゃね?
「だから言ったろ。俺は部室が欲しかっただけだって。」
「けどこれは部活としてどうなんだ?」
俺は他の部員たち(とは言っても3人だが)を見ながら言う。
3人はいつの間にか持ち込まれた人生ゲームをしている。
いやいや、人生ゲームってどういうことだ?今日のこいつらの荷物にこんな形状のものはなかった。それにみんなでワイワイやるならトランプだろ。皆で大富豪とかババ抜きとかやるのが普通だよ。なのに何故誰が持ってきたかもわからない人生ゲームをここでやってんだよ。
俺は色々言いたいのをぐっと堪えて言った。
「誰がこの人生ゲームを持ってきたんだ?」
「勿論俺だが?」
祐司かよっ!そう言われれば、今日のコイツの荷物は妙に多かった気がする。
「人生ゲームだけじゃないぞ。家庭用ゲーム機だってあるし、トランプだってある。それにメジャーなものからマイナーなものまで様々なボードゲームを用意してある。」
「それはすでにゲーム部に名前変えた方がいいだろ。」
すると、祐司は悲しそうな顔で言う。
「残念ながら、ゲーム部は既にあるんだ。それに、ハルは帰宅部のエースになりたいって言ってたからな。泣く泣く帰宅部にするしかなかった。」
「いつまでそのネタ引きずるんだよ!」
「いいじゃない、別に。私もハルにエースになってもらいたいし。」
彼女が笑いながら言う。
「人生ゲームやってたんじゃないのか?」
「私が一番であがったのよ。加奈はもうちょっとかかるかな。あと、佐藤君は開拓地送りね。」
マジかよ。相変わらず颯はゲーム弱いな。今までやってきた様々なゲームで一度たりとも俺達に勝てなかったもんな。
「流石は颯だ。期待を裏切らない。」
祐司が頷きながら言う。
「あら、そうなの?」
「ああ。昔から颯はゲームの類は弱いんだ。アイツが勝ったところなんて見たことない。」
祐司が彼女にそう説明しているところで、人生ゲームは終わったらしい。
「また勝てなかったー。」
颯が頭を抱えながら叫ぶ。
「お前が勝てないのは今に始まったことじゃないだろうが。」
「それでも悔しいんだよ。」
颯はキっと睨みつけてくる。
「今度は5人で大富豪でもしない?貧民と大貧民には罰ゲームでもしてもらってさ。」
椋本がそう提案してくる。
「そうだな。罰ゲームの内容はどうしようか?」
「そうね。富豪が貧民、大富豪が大貧民に何でも一つ命令できるってとこでいいんじゃない?」
おいおい。大貧民だけじゃなくて貧民も罰ゲームの対象かよ。これは気を付けなければならない。ここらで一つ提案しておくべきだろう。
「なあ、3回勝負で3回目の結果で誰がどの地位か決めた方がいいんじゃないか?1回だとちょっと面白味がないからさ。」
頼む。この条件をのんでくれ。そうじゃないと命令される回数が増えて必然的に俺が命令される可能性が高まる。そんな危険は冒したくない。
「それでいいわよ。」
彼女はどうやらこの提案を呑んでくれたようだ。嬉しさのあまり、俺はそのとき彼女が怪しい目をしていたことに気が付かなかった。
◇
「くっ。次で最後の勝負か・・・。」
俺は今窮地にいる。なぜなら、俺は現在貧民だからである。このゲームってさ、一旦落ちるとなかなか上がれないゲームだよな。ホント現実をよく表してるよ。このままだと、また貧民になってしまう。それだけは絶対に避けたい。
現在の大富豪は彼女で、富豪が椋本、平民が祐司で、大貧民が予想通り颯。
この状況だと多分勝てない。でもどうしようもなかった。強すぎるんだよね、女性陣。赤子の手をひねるっていう表現がここまで合う状況もなかなか無いものだ。
そして、遂に最後の勝負が始まった。
俺はほとんどパスしなければならなかった。颯なんか一度もカードを出せてない。
気が付くと、上位2名はほとんど終わりそうだった。
すると、意外なことに椋本が大富豪となり、彼女が富豪となった。
俺は予想通り貧民になった。
「それでは命令しちゃいましょ~。」
「そうね。どんな命令がいいかしら?」
ここでやっと気が付いた。彼女が最初から富豪を狙っていたことに。颯は最初から大貧民決定だった。つまり、俺が命令される立場とすれば、貧民しか有り得ない。つまり、彼女は最初の2回で大富豪になり、最後に富豪になれば良かったのだ。
「じゃあ、颯君には女装でもしてもらいましょうか。」
椋本があっさりと颯に命令を下した。
「女装と言っても、服あるのか?」
祐司が疑問に思ったらしい。
俺は自分のことではないのでどうでもいいが。どっちかと言えば、これから下される命令の方が気がかりだ。
「あるとも。これさっ!」
椋本が掛け声とともに取り出したのはメイド服だった。
この用意の良さ、絶対準備してたな。おそらく最初から罰ゲーム有りの勝負を持ちかける気満々だったってことだ。
颯は泣きそうな顔で見ている。
「私はそうね・・・一発芸でもやって貰おうかしら。ダジャレとかいいわね。」
なんて陰湿な命令をしてくるんだ。一発芸とかウケなかったらとてつもなく恥をかく。だが、ここは腹を括ってやるしかないな。寧ろものすごい寒いシャレでも言うか・・・。
「わかった。今からダジャレを5連発する。多分かなり寒いが我慢しろ。それじゃ言うぞ。
・布団が屋根にふっとんだ、やーねー。
・太陽を直視すると目がいタイヨウ。
・妖怪が話しかけてきた。何かヨウカイ。
・これからあの世について話します。あのよ~。
・キャッチャーがミットを忘れた。ミットもない。
どうだ、驚いたか。」
俺は何か大事なものを失くしてしまったようだ。目から汗が・・・・。
4人全員がブルブル震えているのは見なかったことにした。
あまりにも一話一話が短い気がしないでもないですが、こんなものだとおもってください。