5-決闘って確か禁止されてたと思うんだけど
頑張ってみたのですが自分の能力では一話の量を多くすることはできませんでした。
一話の量はこの先特に何かない限りこのままだと思ってください。
相変わらず周囲の視線が痛い。だが、流石に一週間もこの視線に耐えていればある程度耐性もつく。
「手が止まってるけど、お弁当美味しくなかった?」
「いや、考え事をしていてな。弁当はいつもの通り美味いな。だが、卵焼きは好きじゃないんだ。」
「あれ?目玉焼きじゃなかったっけ?」
「いや、卵焼きだ。俺は卵料理の中で卵焼きだけが嫌いなんだ。食べられないことはないが。」
「え~と。お弁当に入れちゃいけないのは確か…トマトと椎茸と葱だっけ?」
「ああ。その食材以外なら嫌いでも食べられないことはないからな。」
「好き嫌い多いんじゃない?」
「まあ、気にすんな。」
俺は昔から、食べ物の好き嫌いが激しい子供として有名だった。幼稚園児の頃なんか食えるものがほとんどなくて、この飽食の時代にも関わらず、栄養失調になりかけたこともあるくらいだ。
「そんな過去暴露してどうするの。けが自慢みたいなものよ。」
「君は弁当を作ってもらって、その上で好き嫌いまで主張するのか。まったく信じられないほど傲慢だな。」
突然割り込んできた声に反応して俺と彼女は声の方を向いた。
「お前誰だ?」
俺がそう尋ねると、割り込んできた謎の男(一応クラスメイトだと思う)は名乗りだした。
「僕の名前かい?なんだい、まだ覚えてないのかい?では改めまして、僕の名前は西村 一斗。片桐さんを君の魔の手から救う者さ。さあ、僕のところへ。」
「何言ってんだ、お前。頭に蛆でもわいたか?」
「どうしてあなたのところに行かなければならないの?」
「そうか。片桐さんは照れているんだね。」
俺の発言を華麗にスルーし、彼女の話を曲解しやがった。
ふむ。このタイプは面倒だ。今の内に潰しておかないと後々厄介なことになるのは目に見えている。問題は、自分の都合のいいように物事を解釈する人間を一体どんな手段で潰すかだな。何かにおいて、徹底的に奴の鼻っ柱を折ってやらねばならん。だが、こういうタイプはあまり力では屈しないからな。妥当に心でも折っとけばいいか。
「悪戯を思いついたような顔してるわよ。」
言われて気づいたが、どうやら俺は知らず知らずのうちに笑みを浮かべていたらしい。
「片桐さんを君の手から救うために君に決闘を申し込む!」
何言ってんだ、コイツ。いや、逆に考えるとこれはチャンスかもしれない。観客を大量に集め、そこで何か観衆に対するパフォーマンスをし、奴のプライドをズタズタにしてやればいい。
「ちょっと待ってよ。それは「いいぜ。受けてやる。」っていいの?」
「そうか。では、放課後にグラウンドで待っているぞ。」
奴はそう言って立ち去って行った。
「ホントにいいの?」
「まあな。俺は喧嘩に慣れてるし、別に勝たなくても観客に対してのアピールを上手くやれば、奴のプライドを粉々にしてやれる。ああいうタイプはできる限り迅速に対処しなくちゃならないからな。」
「そうだな。だけど、ハルは喧嘩は強いが奴も決闘だなんて言ってきたからには勝算があるだろう。おそらく何かの格闘技とか身に着けてるんじゃないか?くれぐれも油断するなよ。」
いつの間にか祐司が近づいてきてアドバイスをしてきた。
「いつの間に!?」
「ひどいな。西村とやらが去って行った時からいたぞ。」
「だが、アドバイスは受けておく。」
「気をつけろよ。」
祐司はそう言い残し、自分の席に戻って行った。
「本当に大丈夫なの?」
彼女が不安そうに聞いてくる。
「大丈夫だ。こういうのは慣れてるから。大体対処法もわかってる。」
「慣れてるって女の子を取り合うこと?」
「違うから。笑えん冗談はよせ。」
彼女が笑いながらからかってくる。
「そろそろ昼休みも終わりだろ。戻るか。」
俺は午後の授業中ずっと作戦を考えていたので授業にはほとんど身が入らなかった。ミトコンドリアとかゴルジ体とかどうでもいい。
そして遂に待ちに待った決闘の時がやってきた。
グラウンドで向かい合う俺と奴。
その周りを取り囲む観客。
俺と奴の間に立つ祐司。いつの間にか祐司が審判になったらしい。
「僕が勝ったら片桐さんから手を引け。」
「手を引くってのが良く分からないが…。まあいい。なら俺が勝ったらお前はもう俺達に干渉しないってことでいいか?」
「それでいいとも。」
「じゃあ、祐司ルール説明をよろしく。」
「わかった。ルールとしては、金的・目潰し・噛みつき・引っ掻きがなしでそれ以外は何でも有りだ。また、決着はどちらかの戦意喪失・気絶・戦闘の続行が不可能と判断した場合につくものとする。それでは開始っ!」
俺と奴の決闘が始まった。
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「予想外の展開だったな。」
祐司は驚いたように言う。
俺も予想外の展開に何とも言えなかった。
「ハルが負けるとも思わなかったが、西村にも勝算があると思ったんだが……。」
大貴までこの始末だ。
「あいつ弱すぎだろ。」
哀れな西村。颯にまで馬鹿にされるとは。
「俺にまでってどういうことだよ。」
「そんなことは置いといても、あいつは一体何がしたかったんだか…。」
祐司も何とも言えない表情をしていた。
なぜなら、西村はとてつもなく弱かったからであった。喧嘩を吹っ掛けてくるぐらいだし何か格闘技でも齧っているのかと思いきや、あまりにも弱すぎ一発殴っただけで尻尾をまいて逃げ出したのであった。
何か颯がギャーギャー騒いでいるが無視した。
そんなこんなで帰り道。俺と彼女は一緒に歩いていた。
「決闘なんて言うから驚いたけど、終わってみたら呆れてものも言えないわ。」
「あれは決闘そのものが悪いんじゃなくてアイツが駄目すぎたのが問題だ。あの弱さでよくもまあ決闘だなんて言えたもんだよな。」
「でもこれで解決ね。」
「まあな。アイツもこれに懲りて黙るだろ。それに観客を大量に集めたからな。証人もいっぱいいるし、奴のプライドもズタズタだろう。第二第三に気を付ければ問題ない。」
俺たちは今日の出来事を話しながら家に帰るのであった。