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4-ゆするとねだるは同じ漢字

彼女の友人の名前を変更しました。一応3話をチェックしといてください。

 昼休みとなった。ここからどうなるか見当もつかない。ちなみに休憩時間の度に颯が文句を言ってきたのは気にしない。適当に聞き流しておいた。

  



 「さてと、昼飯でも食べるか。」

 俺はそう言って立ち上がり昼食を食べに行くことにした。

 ここで今までで最大の問題が発生した。

 基本的に俺は弁当を持っては来ない。故に購買で何か買って食べざるを得ない。しかし、現在の俺は何故だか弁当を食べている。決してコンビニ弁当ではない。れっきとした手作り弁当だ。誰が作ったのかという問いに対して答えは明白だ。勿論彼女に決まっている。そう。つまり、今俺は彼女と共に彼女の手作り弁当を食べている。正直周りの目が痛い。

 「何か今朝から嫌な予感はしてたんだよな。」

 「嫌な予感とはなにかしら?」

 彼女は微笑みながら聞いてくる。

 絶対わかっててやってるね、これは。実際のところ誰かさんに入れ知恵されたのだろうが。というか、周りの視線が痛すぎる。ヤのつく自由業さん達のメンチと同レベルかもしれん。原因は何なのかわかってはいるが、どうしようもないね。お手上げだ。

 「絶対やってくるとは思った。具体的にいつからかはわからんが、お約束だしな。でもまさか初日からとは思いもよらなかった。負けたぜ。今朝からお約束をやるってことはこの状況も既に予想されてないといけなかった。」

 「相変わらずね。つまり私の勝ちってことでいいのかしら。」

 「何に対しての勝利だよ…。」

 祐司が口を挟んできた。

 「何だよ、聞いてたのかよ。」

 「いや、聞こえてて当然だろうが。今俺達4人と片桐と椋本の2人でかたまって昼飯食ってんだから。」

 「まあ、そうだけど。でもさ、今まで祐司達と椋本で盛り上がってたから、てっきり聞いてないと思ったんだよ。」

 「あまりにわけのわからない会話だったんでな。思わずつっこみをいれてしまった。」

 「わかるわ。ハルったらいつも変なことばかり言うの。」

 「いつもって言うほどでもないだろ。」

 俺はそう言ったが無視された。

 「そうだな。しかしハルの真骨頂は毒舌と穿った物の見方だ。もう少ししたらわかる。まるで水を得た魚のように生き生きと相手を罵倒する様は見ていてすっきりするぜ。」

 「そこまで凄くはねーよ。」

 全く不本意極まりない。俺は決して毒舌など吐かない。相手に事実を突きつけるまでだ。という旨のことを伝えたが、祐司は相手にしてくれなかった。

 結局、昼休みはなんだかよくわからない会話と食事によって消費されたのだった。

 



 何時の間にやら今日の授業が終わっていた。初日だしまともな授業ではないが、時間が進むのが早い気がしないでもない。

 「『少年老い易く学成り難し。一寸の光陰軽んずべからず』、か。」

 「突然何?」

 「妙に1日が短いような気がしてな。」

 「老人みたいね。」

 失礼だ。確かに俺は若者らしくないと自分でも思う。だが、決して老いているわけではない。断じて!

 「ちょっといいかな。」

 彼女は昨日に続き信じられない提案をしてきたのであった。

 「今日私の家に来てくれないかな。っていうか来て。」

 ここまでいくと本当に清々しい。ここまで俺の予想をこえるとはね。くっくっく。ここまで俺を虚仮にしたお馬鹿さんはいませんよ。

 俺はあまりの混乱に怪しい電波を受信してしまったようだ。

 「だが断る。」

 「拒否権は認められないわ。」

 人権を返せ。憲法にだって明記されているだろう、基本的人権が存在することを。公共の福祉に反しない限り守られるものだぞ。

 「昨日あなたの家にお邪魔したのだから、今日は私の家に来てもらわないと。」

 そうは問屋が卸さない。大体彼女の家に行くということはどれだけ自殺行為かよくわかる。それに父親がもしいたとすれば、その先の結果は誰でも予想できるものだ。というよりも俺が単純にいきたくないだけだったりする。なぜなら女子の家に行くとか、そんなのどうすればいいのかわからないからな。

 「おい待て。手を引っ張るな。」

 俺は懸命に彼女を説得しようと試みたが、敢え無く失敗し無理やり連れて行かれるのであった。男として何か物悲しいところがあったが、そこは目を瞑る方針で。




 「ただいま。」

 「お邪魔します。」

 俺達は昨日と立場が逆転し、俺は昨日の彼女のように振る舞うのであった。つまり、失礼のないくらいの声の小ささであいさつしたのであった。

 けれども、何故か物音がしないのである。

 「言ってなかったけど、私一人暮らしだから。」

 最大の衝撃が俺を襲う。

 「ちょっと待ってくれ。」

 俺は気持ちを落ち着かせるために深呼吸した。

 落ち着け。考えることは3つだ。何故彼女は俺を家に呼んだのか。何故一人暮らしであることを言わなかったか。一体この状況は何だ?

 「おい、何のつもりで俺をここに連れてきた?」

 「そんなのわかりきってることでしょ。」

 彼女は顔を真っ赤にして言ってきた。

 やばいな。こんな感じだけど目が本気(マジ)だ。

 「悪いが、帰らせてもらう。」

 「駄目よ。今日は帰さない。」

 「それもっと違うシチュで体験したかったな。」

 俺は遠い目をして言う他なかった。

 「とりあえず人の邪魔が入らないところで話したかったのよ。さっきのは冗談。」

 「笑えない冗談をありがとう。」

 くそう。この程度の冗談も抜けなかったか。




 居場所を所謂リビングに移して話を始めることにした。

 「話のついでに夕食も家で食べてくれると嬉しいな。」

 「なあ、知ってるか。強請る(ゆする)と強請る(ねだる)は同じ漢字なんだぜ。」

 「それがどうかしたの?」

 「別に。」



 

 結局結構話し込んでしまって、時計の長針がⅨを指している。夕食はかなりおいしかった。昼の弁当でわかっていたが、まさかここまでとはな。

 「また明日ね。」

 「そうだな。明日だな。今日は水曜だし。じゃあな。」

 俺はそう言って、家に帰るのだった。 




 彼女に聞いた話をまとめると、次のようになる。 

 彼女は現在実家を出て、マンションを借り暮らしているそうだ。実際お邪魔したわけだが。そして、ここの学校に通うのが目標だったらしい。どうやら彼女の両親と学校にある桜の木に関係があるらしい。そこはお茶を濁らされた感がある。そこで、俺と出会い、彼女曰く一目惚れをしたそうな。で、ここからが重要なんだが、これから毎日俺の家に来るなどと恐ろしいことを言っていた。なんだそりゃ。誰か助けてくれないか。俺は女子に縁がなくても平穏無事に過ごせれば文句はないというのに。

 このまま流されるしかないのだろうか。だが、女に勝てるとも思えない。運命を受け入れろということか。

 俺は嘆息しながら眠りについた。

なかなか話が進みません。次からはもうちょっと一話の分量を増やします。


次話は今回から少し時間が跳ぶ予定です。

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