表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/20

3-朝起きるのは辛い

 「いい加減起きなさい。」

 俺は夢見心地で微睡んでいたところ、誰かが起こしに来たらしい。

 「あと3日。」

 「そんなに寝かせてあげるわけないじゃない。今すぐ起きないと言葉では言い尽くせない世にも恐ろしい出来事が待っているわ。」

 俺はいつもと違う声に対して不審に思い目を開けた。目の前には彼女の顔があった。

 「もうちょっと目を閉じててくれればキスできたのに。」

彼女は不満げに言う。

 俺は目の前の状況が良く理解できなかった。何故俺の部屋に彼女がいるのか、何故彼女が俺を起こしに来ているのか。

 「何故ここにいる?」

 「起こしに来てあげたのにそれはないでしょ。」

 どうやら彼女は昨日の宣言通り、俺を迎えに来たらしい。ついでに俺を起こしに来たらしい。

 状況は理解できたが、俺は今にも叫びたくなった。何で俺の家に普通に上り込んでいるのか。こういうのは幼馴染の仕事だろ。彼女は家の前でしおらしく待っているのが典型的なパターンだろうが。俺は寝起きで頭がよく働かず、そんな益体もないことを考えていた。




 「全く、いつになったら自分で起きられるようになるのかしら。」

 朝食の席で母さんはため息をつきながら言う。

 それはきっと永遠に来ないだろう。低血圧と朝弱いことに科学的根拠はないらしいが、俺は低血圧だし、朝も弱い。休日など油断すれば、昼過ぎまでずっと寝ている。

 そんなようなことを母親にいつも通り力説しようと思ったところ、いつもより朝食の席に約一名多いことに気付いた。

 「何で一緒に朝食食べてんだ?」

 「朝食に誘われたからに決まっているでしょう。」

 彼女はしれっと答えやがった。

 「家で食べてこなかったのか?」

 「朝食はいつもはあまり食べないのだけど、誘われたからね。」

 「無理して食べる必要ないぜ。というか、何故こんな早くから家に来る必要がある?迎えに来るんだったらもっと遅い時間でもいいだろ。」

 「少しでもはやく会いたかったから。」

 彼女は顔を赤らめて言ってきた。

 母さんとかバカの優奈とかが無責任に冷やかしてくる。どうすればいいんだ?ググれば答えとか書いてるのか?これが四面楚歌ってやつか。

 



 8時頃家を出た。

 「言っておくが、学校ではできる限り接触を控えたいのだが。」

 「え?できる限り学校で一緒に過ごしたい?そう言ったの?わかってるわ。」

 「耳腐ってるんじゃねーのか?あまり近づきたくないって言ったんだよ。お前みたいな人種といると、いらん嫉妬も買うし、暗い夜道も気をつけなきゃならなくなるからな。」

 ここまで言うと、彼女は何故か頬を膨らませながら言った。

 「名前で呼んでって言ったのに。」

 「わかったわかった。そこは気を付ける。だが正直あまり詮索されたくないしな。不必要な会話をしないってことで手を打ってくれるとありがたいんだが。」

 「やだ。」

 「は?どういうことだ?」

 「折角恋人っていう立場に立ったんだし、そんなことはしたくないの。」

 俺はため息をつきたくなる気持ちを堪えて言った。

 「でもな、俺みたいな見た目が普通の奴と沙紀みたいなその…なんというか……綺麗な娘と一緒にいるのは基本的に男が不必要な嫉妬を買うと相場は決まってるんだ。そして俺はそんなものを買いたくない。つまり、沙紀と学校ではあまり接触しないのが望ましい。まあ、学校以外だったら良いが。」

 何故か彼女の顔は真っ赤だったが、何か気に食わんらしく反論してきた。

 「恋人同士だったら学校でも一緒にいるのが当たり前でしょ?私はそんなの気にしないから。避けるんだったら、寧ろ積極的に話しかけるから。覚悟しておいて。」

 そこまで言われると流石に俺も何とも言えん。思わずため息をつきながら、

 「わかった。そこまで言うなら、断りきれん。俺も闇討ちに気をつけるようにするしか生き残る道はないか。」

 と言う以外道は残されてはいなかった。

 全く、某涼宮ハ〇ヒに振り回される報われない男のように「やれやれ」と言いたくもなる。




 学校に着くといつものメンバーに質問攻めにあうという予想された状況に陥った。質問してくるのは主に颯だったが。

 「ハル、お前片桐には興味ないとか言ってなかったか?」

 「ああ、言ったとも。それがどうかしたか?颯君」

 「じゃあ何で今日一緒に登校してんだよ?」

 「俺もそれには興味があるな。」

 祐司が口を挟んできた。

 「昨日呼び出されたことに関係があるのか?」

 大貴まで質問してきた。

 おかしいな。祐司や大貴はあまりこういうことに興味はないと思っていたんだが。

 「お前だってそうだろう?」

 にやっとしながら祐司は言う。

 祐司が心を読んできた。やはり、祐司は読みが鋭い。いつも4人の中でリーダー的存在であっただけあるな。基本的に何でもできるし。オールラウンドプレーヤーという感じだろう。

 俺はおとなしく大貴の質問に答えることにした。勿論颯は基本スルーで。

 「ああ。昨日コクられた。」

 「なるほど。」

 相変わらず大貴は冷静だ。コイツはサッカーをやってる割には冷静なんだよな。「スポーツ選手は冷静であるべきだ。」とか言ってたし。というか、颯が文句言ってきて五月蠅い。

 「それでハルはどう返事したんだ?」

 「祐司、お前案外えげつないな。大体わかるくせに。」

 「まあな。でも、本人の口から聞くのが一番だろう?」

 「断る理由も特になかったしな。つまりそういうことだよ。」

 「予想通りの回答だな。それよりもハルの今後のほうが心配だな。今見るだけでも、男子のほとんどが敵視してきてるし、女子の半分くらいが品定めするかのごとくこっちを見ているな。」

 やはりそうか。あまり目立ちたくなかったのだが。仕方がないか。これが諦めの境地ってやつか。




 ザワザワしたHRが終わると、彼女とその友人らしき人物が近づいてきた。

 「あなたがこの子のカレシさんですか。なるほどねぇ~~。」

 「誰だ?」 

 「おおっと。自己紹介が遅れましたな。私の名前は椋本加奈(くらもとかな)ですよ~。君の名前は「ハルでいい」なるほどハル君ね。それより昨日はどうでしたかな?」

 「お前の差し金だな。」

 「あらら、バレちゃしょうがない。勿論全部ワタクシの作戦ですとも。昨日沙紀に可愛く相談されたからには計画を練ってあげるのが筋ってものだからね。その顔を見る限り作戦は成功ということでいいみだいだね。僥倖僥倖。」

 聞きながら、自分の顔が苦虫を噛み潰したような表情になっていった。

 この女一筋縄ではいかないな。こんなしゃべり方してる割にはかなり頭が回るみたいだ。気をつけねばなるまい。油断すれば、逃げられないところまで追いつめられる。

 そんな思いとともに授業開始のチャイムが鳴るのであった。

1週間に一度以上更新していければ、と思います。

感想・助言・誤字脱字の指摘等お願いします。


彼女の友人の名前を変更しました。気を付けてください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ