1-入学式は退屈で眠いものだ
4月7日
俺は何故かは知らんが、高校の入学式である今日、とても早い時間に目が覚めた。どうやら自分でも気が付かなかったが、少々気分が高揚しているようだ。
今日は一応中学の時の友人達と待ち合わせをしているのだが、学校の校門であるので、さっさと学校に行ってしまおうという至極珍しい考えが浮かんだ。おそらく中学時の友人達の一人である中谷祐司は嵐が来るなどといったことをいうだろう。それ程に珍しいことであった。
俺がテケテケと学校まで歩いていくと、校門の近くに植えられている桜の木のそばに立っている女生徒を見かけた。俺は何となく近づいてその娘の近くに立って木をボヘーと見ていたところ、彼女は突然振り向いてきた。
「ちょっと、あんた何?」
と言いながら、彼女は睨みつけてきた。
だが、俺はそんなことよりも彼女の美少女っぷりに驚いた。俺は基本的に何かを褒めるということはしない性質ではある。しかし、彼女の大きな目、すっと通った鼻、桜色の唇、真っ黒なストレートの長い髪、モデルのような体形、どれをとっても一流以上であった。俺は恥ずかしながら見とれてしまった。けれど、俺の口は思考とは別に動いていた。
「俺が何者であるかなど些細な問題だ。この学校の制服を着用している以上ここの生徒であることに間違いはないのだからな。」
「そういうことを聞いてんじゃない……きょわ!」
彼女は、俺が彼女の髪についたゴミをとってやると奇声をあげた。
「いきなり何すんのよ。」
「いや、君の髪にゴミがついていてな。とってやっただけだ。大したことでもあるまい。それよりも何時までも俺を睨んでいても仕方ないだろう。笑ったほうが似合うぞ。」
俺はにやっと笑ってそう言った。
「なんか口ぶりが偉そうね。」
などと彼女は顔を赤らめながら言ってきた。
「あんた名前は?」
「人に名を尋ねるときは自分から名乗るべきだと思わないか?」
「わかったわ。私は片桐沙紀。」
「そうだな。俺のことはハルとでも呼べ。」
「何であだ名なの?」
「俺の知り合いは一人残らずそうよぶからな。」
「じゃあまた会いましょう。」
彼女はそう言って立ち去っていった。
腕時計を確認するとそろそろ待ち合わせの時間だった。予想以上に時間が過ぎていたらしい。
「しっかしハルがこんな早くから学校に来るなんて天変地異の前触れか?」
中学時代の友人佐藤颯は開口一番そんなことを言ってきた。まったく失礼な奴だな、と思っている内に、2人目の西園寺大貴が到着した。
「何だ。今日は祐司の奴がビリかよ。」
「珍しいこともあったもんだ。」
と祐司がこっちに向かいながら呟いていた。
いつものメンバーがそろったところで、俺達はどのクラスに所属しているか確認しに行った。
「お、俺達全員6組みたいだな。」
祐司がそう言ったとき、俺は見覚え(正しくは聞き覚えだろう)のある名前が同じクラスにあるのをみて、少々憂鬱な気持ちになった。
4人でクラスまで行ったところ、都合よく4人で固まれるだけの席が空いていた。
「おい、すっげー美少女がいるぞ。」
そういうのに興味津々といった口調で颯は言う。
「まあ確かに。だが、美少女っていう言葉は何かいただけないな。どことは言えないのだがどこか気に食わん。」
謎なことを祐司は言い始めた。
「確かに美少女の使い方としては問題ないのだろうが、美少女という響きが気に入らないというのは同感だな。」
俺がそういったところで、担任っぽい人物が教室に入ってきた。
「はーい。整列して体育館まで行ってください。」
担任?はそう言いながら教室を出ていきやがった。
「何だあいつ。」
「仕事ぐらいはしてほしいものだな。」
颯の言葉に受けるような形で大貴は呟いた。
入学式はかったるかったので、寝ていたからよくは覚えていない。
式は無事終了し、俺は祐司に起こされ、教室まで無事に帰還した。そこで、俺が口を開こうとしたところ、担任?が教室にやってきた。
「えー。私は1年間君達の担任をすることになった橘健吾だ。よろしく頼む。」
と奴はおざなりな自己紹介を終えた。
この教師大分適当だな。仕事する気があるのだろうか。というかこんな教師が増えてきたから日本の教育は駄目になってきたのではないだろうか。そうに違いない。と俺が思考に没頭していると、どうやら自己紹介が始まったらしく俺の番になったが、いかにもなテンプレートなセリフによって事なきを得た。
その後、しばらくボーとしていた。人間にはやはりボケっとする時間は必要だと思う。煩わしい人間関係や社会のしがらみにとらわれず、一人で思考に耽るのは良いものだ。
ここまで考えていると、何やら教室が騒がしくなった。どうやら件の美少女が自己紹介する頃合いのようだ。だがまあ、俺の人生には朝の出来事以上に関わることはないだろうと思っていた。後になって、この考えが間違っていることがわかるのだが、この当時はそう思っていた。
自己紹介も終わり、担任が必要な連絡をし、解散となった。俺達4人はかたまり、雑談を始めた。
「颯、お前あの片桐とやらをずいぶんと熱心な目で見つめていたじゃないか。」
「うるせえ。大貴だって気になったんじゃないのか。」
「いや、お前のように下心満載な視線ではない。素直に感心していただけだ。」
「だがハルは全然気にしていなかったな。」
「当たり前だぜ、祐司。どうせ俺の人生に関わることなどないだろうからな。」
「なかなか誰しもお前のようにはいかないと思うぞ。何せあの容姿だ。」
「そうだそうだ。男ならつい見てしまうのが本能ってもんだ。」
「「「颯は黙ってろ。」」」
「すいませんでした。」
「ちょっといいかしら。」
突然、鈴の鳴るような声が聞こえたので全員で振り向くと、話題の中心人物が立っていた。
「ハルさん。今すぐ私と一緒に来てくれませんか。」
「特に問題はないが。」
「よかった。では来てくれますね。」
俺は何故か彼女に呼び出されてついていくこととなった。
「ハル。何故お前が~。」
颯が呪詛のような言葉を漏らしていたが無視した。他の奴らはあまりのことに驚いて思考がついていかないらしく、口をあんぐり開けたままだ。こう考えると、実は颯がすごい奴のように思えて少々不愉快な気持ちになった。
初めてだとなかなか上手く書きたいように書けません。かなり大変です。ですが、思っているより更新のペースははやくできそうです。