16-歓迎祭~作戦確認編~
すみません。謝罪から入りますが、今回は学校のテストが重なって予想以上に時間がありませんでした。ので、本来一つだったものを急遽二つに分けて投稿せざるを得ませんでした。よって今回はかなり短めです。
「改めて説明するが、今回の私達の勝利のためのプロセスはこうだ。」
学級委員長である佐々倉 萌絵は黒板の前で宣言した。効果音にはバーンとでもついていそうな光景だな、これは。
この佐々倉は勝利にここまで貪欲だとは、これまでの練習だの、勝つための作戦などの練り具合から見て、初めて知ったよ。とは言っても、入学してから一か月ちょいしか経ってないからな。知らないのも当然っちゃあ当然ではあると思う。
だが、佐々倉からは凄まじいほどの執念を感じる。これで負けたら生霊になって祟ってくるんじゃないかと思うほどだ。
「同感だな。」
人の思考を読むんじゃねえ。
「いや、声に出してたぞ、お前。」
「マジで!?」
恥ずかしい。思考をブツブツと呟くなんてアブナイ人まっしぐらだよな。これからは注意しないと。
「そこ。真面目に私の話を聞きなさい!」
怒鳴られてしまった。結構迫力がありますねえ。
「祐司が口出ししてくるから怒られたじゃねえか。」
「お前が口に出しているのがいけない。」
俺達は小声で互いの責任を擦り付け合う。(醜い争いであることには目を瞑ろう。)
「真面目に聞け!私達のクラスの勝利が懸かっているんだぞ!」
怒りも露わに怒鳴る佐々倉。
これは怖すぎる。主に勝利への執念に対してだが。
ところで、この佐々倉って奴は入学当初は自ら率先して学級委員だなんて面倒な役職を希望してたから、目立ちたがり屋か、内申目当てだと思っていた。
しかし、その考えが覆されたのが歓迎祭の練習が始まってからだった。
佐々倉は俺達のクラスが学年一位になるための綿密な作戦を練り始めた。そしてそれを俺達に口外することを禁じる。それだけでも十分に凄いことだが、それだけでは止まらなかったのだ。
佐々倉はそれぞれの競技の人選も一人で勝手に決め、尚且つ物凄い練習を課した。筆舌に尽くしがたいほどの暴挙だ。それほどに勝ちたいのか、とこちらが感心してしまった。
「はい、一旦中断されたがもう一回説明する。」
俺達が静かになり、続けても良いと判断したのか、作戦をもう一度説明し始める佐々倉。ここまでするか。すごいな、いろんな意味で。
「まず、綱引きだ。これは今までの練習試合で勝っているからこそ、より一層の注意が必要だ。常に実力が上のものが敗北を喫する原因が慢心だ。だからこそ、気を引き締めろ。次は縄跳び。これは兎に角、声を出して皆で一緒に跳ぶ。これしかない。今までの練習を思い出して頑張ってくれ。3つ目は卓球だ。前田、大室。言うことは一つだ。絶対に勝て。4つ目はバスケ。これもバスケチームの野郎共。取り敢えず勝て。それ以外は後で考えろ。最後。クイズはチーム中谷だったか?何をしてでも、石に齧りついてでも勝て。私からは以上だ。」
無茶苦茶だ。後半とか『勝て』しか言ってないからな。どんだけ学年一位になりたいんだか。俺には理解し難いものだ。
とまあ、そんな感じで始まった歓迎祭。
どうなることやら・・・。
◇
「そういえば、今ふと思ったんだけど・・・。」
「何だ?ハル。どうした?」
「高校生になってまで綱引きとか縄跳びとかどうなんだよ。」
「いいじゃないか。童心に戻るのも悪くない。」
「お前、一体いくつだよ!」
「無論15だが。」
「童心に戻るの意味が分からん。まだ子供の俺達に、何が童心だよ。」
「高校生になったら綱引きとか縄跳びがどうか、って言ってる時点でそれを言う資格はない。」
「いや。そんなにキッパリ言われても・・・。」
「大体、この歓迎祭のコンセプトは新しいクラスでの団結を図るものだ。綱引きや縄跳びは多くの人間と協力して行わなければならない。だから十分理に適っていると思うぞ。」
「確かに・・・。それより、一番疑問なのが卓球だよな。あれは温泉でやるもんじゃないのか?」
「そう思われがちなのは否めない。しかし、或人曰く、『卓球とは100mを全力疾走しながら計算を解くようなものだ。』とのこと。脳を鍛えるのに良いからじゃないか?」
「なんか扱いがぞんざいだな。もうちょっと援護してやれよ。」
「本音を言えば、俺も卓球は疑問視せざるを得ないな。だが、競技の種目の中に含まれるには相応の理由があるということだろう。」
「なるほどな。そういう考えか。それにしても悪戯が成功した時点で俺達の歓迎祭は終わったも同然なんだがなあ。」
「そういうな。心待ちにしていた生徒だってたくさんいるだろう。そいつらの為だと思って取り敢えず参加すればいいさ。幸い、俺達はクイズ大会にしか出ないみたいだし。」
「しっかし、一体何を参考にクイズ大会のメンバーを決めたんだ?」
「俺が自薦して、他のメンバーも俺が決めた。」
「なんだ・・と・・?」
「そうじゃなきゃ決められる訳がない。まだ知り合って大してじかんが経っていないんだからな。じゃ移動しようぜ。」
※とある二人の会話より抜粋
次回は24~26日のどれかの日にちゃんとした分量をお届けします。次回は激闘編ですかね。