15-歓迎祭の始まり始まり~悪戯編~
今回の話はやっと歓迎祭に入りました。取り敢えず、今回は悪戯編です。まあ、タイトルにバッチリ書いてありますが。
残念ながら、今回はタイトルは真面目にしなくてはならなかったのです。あんまり変なのだと、話が全然わからなくなるからです。涙を呑んで諦めました。そう言えば、悪戯編とありますようにまだまだ続きます。長いとか思わないでください。そういうものだと思って、暖かい目で見てくれれば嬉しいです。
「遂に歓迎祭当日か・・・。仕込みはどうだ?」
「ばっちりだ。あとは上手くそれが芽を出せば言うことなし。」
俺と祐司は今日の大まかな流れを確認している。
どうやら、祐司達の方も仕込みの方は問題がないようだ。今回の悪戯は成功した、と言えるだろう。あとは、不確定要素をどれだけ潰せるか、か・・・。
「ねえ、何の話してるの?」
俺達がコソコソしているのが気になったらしく、彼女と椋本もこちらに来る。
「勿論今日の確認に決まっているだろう。」
祐司が堂々と答える。
いやいや。堂々と答えちゃ拙いでしょ。誰が聞いてるかわからないんだし。こんな些細なことで計画がが瓦解するのは何としても避けたい。でも、聞き方によっては問題ない発言とも取れるな。これを見越してさっきの台詞と態度だったら、素直に感心できる。
「拙い・・・。堂々と答えちまった。」
あれ?何も考えてなかっただと・・・。まさか祐司に限ってそんなこと・・・。
「考えてなかったわ。だが安心しろ。さっきの会話で読み取れる人間など存在はしない。故に問題ないとだけ言っておこう。」
「心配するだけ無駄だと思うよ。あれでわかったら超能力者だって。」
確かに。心配しすぎなんだろうか。しかし、保険は何重にも掛けておくべきだろう。もしも、があってからでは遅いからな。
「寧ろ、成功するかどうかよりも終わってからのことを考えた方がいい。ほら、よく言うだろ?『獲物を狩った時が一番危険』だと。今から後始末とかの段取りを決めておけ。」
最近空気化してきた気がする大貴の有難いお言葉である。
学校ではあってるはずなのに・・・どうも存在感が以前より希薄な気がしないでもない。
「多分部活に出ているからだろ。それでお前らのやってる怪しい部活に参加できてないから、学校の朝から放課後までの時間しか会ってない。だからそういう風に思うんだよ。」
「そうだったのか・・・。」
俺が気が付かなかっただけと。でもそれだけではない気がする。が、ここでは黙っていた方が良いような、そんな感じというか予感めいたものがあるので素直にそれに従う。
「そろそろ開会式の時間じゃないか?」
「それにしても開会式ってどうなんだ?」
俺と祐司は再び話始める。
「一応『歓迎祭』なんて言ってるけど、実態は体育祭みたいなものだからな。必要なんじゃないか?」
「そんなもんかな。」
秘密って秘密の時はすごく気になるんだが、それが暴かれたときって大体虚しい気持ちになる。蓋を開けたら全然大したことじゃなかったり。それまでのドキドキワクワク感を返してくれ、って誰かに言いたくなるほどだ。
おそらくこれも同じものだろう。実態は祐司が言ったのと多分変わらない。『事実は小説よりも奇なり』とバイロンは語ったが、そうでもない。いつでも事実は拍子抜けするようなことばっかりだ。
そんなことは置いといて。
「開会式の為に集まるんだろ?」
「そうだ。あと十分程で移動だな。」
面倒なことだ。わざわざ開会式を行うなんて。誰もがきっとそう思ってる。
「いや、特には。」
否定しないでくれ、祐司よ。
◇
「え~、皆さん。これから歓迎祭を始めたいと思います。」
思いのほか短い校長の台詞。これはありがたい。校長の話と言えば、長いと相場は決まっているものだが、こんな行事の前だし、空気を読んだのかもしれない。意外と話がわかる校長で良かった。こんな時に延々と話をされてもな。
「それでは、生徒会長からの開会宣言です。」
ちょっと待て。開会宣言ておかしくないか?これ一応『歓迎祭』という名称のはずだろ。祭りなのに開会宣言なのか?謎は深まるばかりだ。俺は隣にいる颯をつつく。
「おい、なんだよ。」
「なあ、これ、開会宣言でいいのか?」
「いいもなにもそうなんだろ?」
ぐあ。颯に訊いた俺が馬鹿だった。コイツはまるで何も疑問を持っちゃいなかった。何も考えてないに違いない。寧ろ俺が考え過ぎなのか?誰か教えてくれ、ド〇えもーん。
すると、大貴が真相を教えてくれた。
「これは名前こそ歓迎祭だが、生徒達の認識では春の体育祭のようなものらしい。尤も俺も部の先輩に聞いただけだが。」
「いや。それでも助かった。このままじゃ、考え過ぎて、果てのない迷宮に入り込むところだった。」
「大袈裟すぎないか・・・?」
気付くと、会長の話は終わっていた。
「次は、スライドによる歓迎祭の進行説明です。」
放送委員の言葉と共に、スクリーンがスルスルと降りてくる。
生徒会のメンバーがプロジェクターを使って、おそらくパソコンでつくっただろうスライドをスクリーンに映し出す。
最初の2、3枚で大体の進行の説明は終わった頃だろうか。突然画面が切り替わる。
『はっはっはっ。元気かね、諸君。』
何やら、怪しい暗い部屋に椅子が一つだけ置いてあり、そこに座っているお面を被って黒尽くめの格好をした男が写っている。先ほどの台詞もそいつのものだ。ついでだが、お面は光の国から地球を救いに来た巨大宇宙人の顔だった。
『このスライド説明の時間は私が戴いた。まあ、特に理由はないがね。』
「ふざけるな!」
生徒会の人間の誰かが叫んだようだ。無駄なのに。既に録画されてるものに対して文句を言ってもねえ。テレビに向かって相槌を打っている人と同じだよ。恥ずかしくないのだろうか。多分、怒りのせいでそこら辺が良く分かってないんだろうね。今の発言で、寧ろ生徒たちが我に返ってざわめき始めた。
「おい、これどういうことだ?」
「わからん。」
「とりあえず、生徒会の計画にはないものみたいだ。」
「というか、あの映ってる怪しい人だれ?」
「あんな格好恥ずかしくないのかな。」
すると、まるで現在の状況がわかっているかの如く、スクリーンに映ってる奴は喋り出す。
『諸君。ざわめくのは程々にしたまえ。ほら、生徒会の人たちが困っているだろう?』
すると、ざわめきが徐々に小さくなっていく。凄いな、ウ〇トラマン。あ、言っちゃった。折角、迂遠な言い方をして暈していたというのに。
『本題に入ろう。私の目的は2つある。1つ目は、この時間を乗っ取ることだ。これは既に達成されたからもういい。2つ目だが・・・。スパ〇大作戦は面白い。諸君も見たまえ。これで私の2つ目の目的も達成された。それでは楽しい歓迎祭を。アデュオス。』
そう言って、謎の男の映像は終わった。
「「「「・・・・・・・・。」」」」
全生徒の無言の時間になった。
確かに。どう反応していいかわからん。ス〇イ大作戦とか一体いつの作品だよ、とか叫びたくはなるけどな。
「え、え~。それでは、これから歓迎祭を始めましょう。」
あまりにインパクトのある映像のせいか、放送委員も自分達の台詞を忘れたらしく、しどろもどろである。無理もないけどな。
◇
「見たか?あの反応。ほんと可笑しかったぜ。」
祐司は笑い過ぎてヒイヒイ言いながら、今回の成功を祝いあう。
「あれは・・・なんというか予想以上だった。」
俺はそう思う。突っ込みどころ満載だった。寧ろ、ツッコむところしかなかったとも言える。
「でも、あの生徒会の人の反応もウケる~。」
机をバシバシ叩きながら椋本も笑っている。
「でも、よくあんなの成功するよね。」
一人感心しているのは彼女だけだった。
颯は笑い過ぎて死にそうになってる。これを見ると、笑い死ぬってのが強ち有り得ないことではないように思えてくるから不思議だ。
「ということで、俺達の悪戯は成功した。俺達の勝利だ!」
そうなのだ。あのスライドでいきなり怪しい人物の映像に切り替わったのは、すべて俺達の悪戯であった。まず、あの映像を撮影し、その後あれを生徒会のパソコンに入れて、パスワードを入れないと解除でき無い様に設定したのだった。一番大変だったのが、人知れず生徒会室に侵入することだったりする。
余談だが、あの黒尽くめの怪しい奴は祐司だった。意外とノリノリで撮っていた。
俺も全校生徒のあの唖然とした顔を思い出すと、笑いが止まらない。
そんな感じで、俺達の悪戯は大成功を収めたのであった。
次回は6月17日か18日の更新になると思います。