11-蟹の味噌汁
更新遅れてごめんなさい。色々忙しくて更新できませんでした。これからは多分週に一回の更新速度になると思います。
今回の話はアホな話です。最近思ったんですけど、この作品って一応ラブコメのはずなのに、コメディーばっかりの気がします。ジャンルを恋愛からコメディーに変えた方がいいのでしょうか。謎です。
「今日集まってもらった理由をこれから説明しよう。」
祐司が仰々しく咳払いをしながら言う。
「今日はこどもの日、所謂端午の節句だ。勿論、今日集まってもらったことと関係ないが。」
「さっさと本題に入れよ。」
俺は少しイライラしながら言う。なぜなら、今日は休日である。家でのんびりと自堕落な生活を送ろうと考えていたところで、祐司によって無理矢理部室に集められたのだ。この場合は殴っても許されるんじゃないか?
「ハルが五月蠅いから本題に入るとしよう。今日集まってもらったのは、他でもない新入生歓迎祭のためだ。 」
「新入生歓迎祭ってあれだよね。何か、体育祭みたいなやつでしょ?それならここで話すよりも、クラスで話した方がいいんじゃないの?」
椋本が至極真っ当な意見を言う。
そういや、新入生歓迎祭って名称突然出てきたな。わからない人もいるだろう。
それでは、ここで新入生歓迎祭とは何か説明しよう。新入生歓迎会とは新しいクラスで様々な競技や、出し物をする会である。コンセプトは新しいクラスでの団結らしい。クラスを替えたばかりであまり馴染めていないだろうから、新入生を歓迎する会と一緒にやってしまおうという考えの下できたらしい。着眼点はそんなに悪くない。
何か今、怪しい電波を受信した気がする。でもここには青春ポイントを集める男はいない。
「ああ。それぞれの競技ならそれでもいいと思う。だが、俺が狙っているのはそういうことじゃない。」「じゃあどういうことだよ?」
祐司の勿体ぶった態度によって颯が興味を持ったようだ。
祐司はいかにも待ってましたという顔をして、口を開く。
こういう時は無視するのが一番なのに・・・。颯はすぐに何も考えずに質問するからな。それで、祐司の怪しい計画に乗って痛い目に遭うんだよ。少しは学習して欲しい。毎回俺も巻き添えを食らっているが・・・。
「俺は何かの競技に対して悪戯をしかけたいと思っている。例えば、借り物競争においてかぐや姫並みの難関なものを仕掛けたりとかな。そういう悪戯を仕掛けるためには、やはり一人では難しい。故に皆に協力してもらいたい。」
「面白そうだねぇ~。」
早くも椋本が乗り気である。ここまでノリがいいのも若干不安ではある。
「そうは言うけど、実際には何をするの?大体競技と言ってもこの時期に外で走り回るようなものなんてほとんどやらないじゃない。」
どうやら彼女はまともな神経の持ち主のようだ。
「それは既に考えてある。それは───────」
◇
「とまあ、こんなところだ。」
「それ、本気でやるつもりか?」
一応確認しておく。といっても、祐司がこうやって提案する以上、本気に決まっている。形だけ確認しただけだ。
「まあ、成功するかどうかは蟹の味噌汁だ。」
「蟹の味噌汁?何それ。」
「聞いたことがないわ。」
椋本と彼女は初めて聞いた言葉に疑問を隠せないようだ。仕方ないので俺が説明する。
「蟹の味噌汁ってのは、とある言葉の聞き間違えから発生したものだ。実際は『神のみぞ知る』ってことさ。聞き間違いってのは往々にしてあるものだからな。」
この言葉はとある本を読んでいて、それを発見した時から、俺達はよく使うようになった。決してとある落とし神とかは関係ない。
「ちょっと面白いかも。」
椋本はしきりに頷いている。
「まあ、聞き間違えってのは面白いものだからな。」
と、俺は同意してみる。
「こないだ、恥ずかしい聞き間違いをした人もいることだし。」
俺は彼女に話を振った。
「え・・・そ、そんなことなかったけど・・・。」
彼女は動揺している。
「確か、あれは俺がくしゃみをして、『鼻かみたいから、ティッシュくれ』と言ったんだよな。そしたら、突然顔を真っ赤するだから、どうしたのかと思ったけどなあ。」
「ちょっと聞き間違っただけでしょ!『な』が『だ』に聞こえたからなんだっていうのよ!」
いけないいけない。怒らせてしまったようだ。あんまりからかい過ぎるのも考え物だな。
「ふむ。人間は母国語でさえも七割程度しか聞き取れていないらしいからな。後は脳による補完らしい。だったら、多少の聞き間違えなど大した問題じゃないと思うけどな。」
畜生。俺が言おうと思ったことを祐司に言われてしまった。しかも何か少し自慢げだな。そんな知識ひけらかして楽しいか?
「楽しいとも。少なくとも、優越感には浸れる。」
「まあな。人間ってのは自分よりすごい人間がいるのを認めるかどうかわからないけど、どんな奴でも自分より下の人間がいると必ず思ってる。面白いよな。そんなどうでもいいことは置いといて、重要なことはもう終わったから解散するか?」
「いや、何らかのゲームでもやろう。そうだな・・・しりとりでもやってみるか。」
「いやいや。この年齢でしりとりはきついだろ。」
「敢えてここで挑戦するのが漢ってもんだろ。じゃあ、俺からで『リンゴ』」
結局高校生でしりとりなんかやる羽目になってしまった。
順番は祐司➔椋本➔俺➔颯➔彼女となった。
「ゴマ」「鱒」「スイカ」「貝」「イルカ」「過酸化水素」「ソース」「スパイク」「車」「マイク」「クジラ」「ライス」「スルメ」「メダカ」「カン」「ンザンビ」「ビスマス」「す・・・すってなんだ?もう無理だ。」
「なかなかやるな。やはり颯は弱いが、結構善戦したんじゃないか?」
「今の何か突っ込みどころがあるんだけど。」
どうやら、彼女には今のしりとりで腑に落ちないところがあるらしい。
「ンザンビって何?」
これには言った張本人である椋本が答える。
「えーっとね、アフリカの神様のことでね、ゾンビの語源かな。」
ゾンビか・・・。ゾンビと言えば、ジョージ・A・ロメロの作品『ゾンビ』だよな。あと、有名どころはルチオ・フルチの『サンゲリア』とかかな。
と言うか、誰か俺の華麗なる『す』攻めに気付いて欲しい。しりとりは相手に対して語尾を一つの文字に集中させると勝ちやすいんだよな。でも誰も気づいてはくれなかった。
「それはいいとしても、しりとりって『ん』で終わったらダメなんじゃない?」
「いや、続けられるなら何処までも、が俺達のキャッチフレーズ。その程度で終わらせるわけにはいかないのさ。」
そんなこと語ってないで、しりとりは終わったんだからさっさと帰りたい。
俺のそんな目に気付いたのか、祐司は
「まあ、とりあえずしりとりは終わったから帰るか。」
と言い残し、一人で帰ってしまった。
一体何のためにしりとりをしたのやら・・・。
今回彼女がした聞き間違いは作者の実体験です。友人がその時言った言葉を勘違いして、同性なのにそんなことを・・・。と驚いたのは記憶に新しい。その後、さんざん冷やかされました。
話は変わりますが、次回はまたもアホな話の予定です。歓迎祭は少なくとも次々回以降でしょう。
それでは、次回また逢えることを願って。