10-寝言は寝てから言え!
感想ありがとうございます。モチベーションとか上がりますね、本当に。
それで、ご指摘のあった箇所なんですが、読者様の多くも変だと感じているでしょう。前回のラストのことです。
言い訳させてもらうなら、あれを書いているときテンションが一時的におかしくなっていたのです。予定ではあんな終わり方ではなかったのですが、一時のテンションに身を任せた結果ああなってしまったのです。
基本的にこの小説の書き方は、ネタとなる出来事をもとに大まかな流れを作って書いているのですが、キャラが度々暴走し、思い描くのとは全く別の進み方によくなるのです。いつかのダジャレラストは戦慄が走りました。
作者が甘かった、と考えてもらって構いません。今回の教訓は『一時のテンションに身を任せた奴から滅ぶ』といったところでしょうか。なんか、銀魂のサブタイトルみたいですね。
話は変わって、今回は勉強会です。サブタイトルは毎回考えるのが大変です。
それでは、前書きはこの辺で終わらせてもらいます。
俺は授業が終わると、颯ににやにやしながら話しかけた。
「颯、お前明日のテストの準備ちゃんとしてたか?」
「は?何それ?」
俺は予想通りの回答に内心ほくそ笑みながら、颯に現実を突きつけてやった。
「新入生歓迎テストのことだよ。もしかして、忘れてたか?」
俺はわざとらしく訊く。勿論嫌がらせの為だ。
「え?そんなのあったっけ?」
颯は処理落ちしたらしく、ポカンと口を開けたままだ。
「大分前から説明されてただろうが。覚えてないお前が悪いな。」
颯は固まったままだ。
「そういうハルは対策してるの?」
彼女は首を傾げる。
「いや、特にはしてない。する必要を感じないからな。」
「?どういうこと?」
「ハルは昔から勉強が良くできる奴だった。」
祐司が口を挟んでくる。
「うそっ!?」
彼女が口に手を当てて声を漏らす。
「失敬な。俺が勉強できちゃいけないってか?」
「そういう訳じゃないけど、意外。」
「そ、それで今回の範囲はどこなんでしょうか?」
颯が復活したらしく、今回のテスト範囲を聞いてくる。復活の呪文を唱えたのは誰だ?全くコイツは学習しないな。よく高校に入れたもんだ。どもりながら聞いてくるんじゃねえよ。それに、この時期のテストだ。範囲ぐらい予想つきそうなものなんだがなあ。
「そんなもん、今まで学習してきた全てに決まってんだろうが。寝言は寝てから言え!」
颯が石化していく。終わったな、コイツ。多分ビリから数えた方がはやいな。受ける前から結果が予測できるなんて・・・。
「ねえ、私にも勉強教えてくれない?」
彼女が珍しく頼んでくる。
「別に構わない。どうせ颯にも教えないといけないしな。勉強会でもやるか?付け焼刃だと思うが。」
「それはいい案だ。」
相変わらず突然割り込んでくるな、祐司は。
結局、今日は俺の家で、6人で勉強会をすることに決定した。
一つ、気がかりなのが優奈の存在である。気にしない方向でいこうと思うが、アイツは突然突拍子もないことをする。十分に注意しておこう。
◇
一行は俺の家に到着した。
「おかえり~り~り~」
あれ、何かデジャヴを感じる。というか前も同じことを言ってた。別バージョンはないのか?同じことばかりやってると飽きるぞ。
「あれ?今日は人数が多いね。一体どんなイベントかな?」
興味津々といった風で優奈は訊いてくるが、俺は敢えてつまらなそうに答える。なぜなら、優奈は自分が面白そうだと思ったことは必ず首を突っ込んでくるからだ。
「今からコイツらの勉強を見てやらねばならない。どっか行ってろ。」
「それはフリだね?」
「前フリじゃねえ。ほら、勉強の邪魔になるから自分の部屋にでも戻ってろ。」
ったくコイツはどこでそんな言葉を覚えたのやら。将来が不安で堪らん。
全員で俺の部屋に集まると、早速勉強を始めた。
まずは数学だ。苦手な奴が多いので決まった。
「ハルこれどうやって解くんだ?」
颯、お前は二次方程式も解けないのか・・・。一体どうやって高校に入学できたんだろう。一瞬裏口入学を疑ってしまう。ウチの高校はそりゃレベルはそんなに高くはない。だけど、単純な二次方程式ぐらい解けて然るべきだろう。
「お前よく受かったな。奇跡が起きたんじゃないか。」
「うるさいな。受験前は多分できた。それはいいから解き方教えてくれよ。」
俺は嘆息しながら、解き方を颯に教えてやる。
ふと、周りを見渡すと、皆意外と真面目に問題を解いている。
「結構真面目にやってるな。」
「まあな。テスト前ぐらいは皆必死に勉強するさ。しないのはハルみたいな奴か、諦めた奴ぐらいのものだろう。」
祐司は問題集から顔を上げずに言う。
そんなもんか。俺は本棚から漫画を取り出して読み始めようとした。
「ハル、ここが良く分かんないんだけど。」
俺は仕方なく読もうとしたのをその場に置いて、彼女が悪戦苦闘している問題を見に行った。
問題を見るに、図形の証明問題だ。三角形の合同や相似を証明しなくてはいけない。
「この問題はそこそこ難しいな。」
俺は彼女に合同のための条件やらをいろいろと教える。
すると、隣で椋本が驚いた顔をしている。
「何だ?そんな顔して。何かついてたか?」
「そういう訳じゃなくて。純粋にここまで勉強ができるなんて聞いてなかったし。何か納得いかないな。そんなに勉強できるならもっと上の進学校にでも行けば良かったのに。」
「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん。」
俺が口を開こうとしたとき、タイミング良く優奈がやってきた。
そのネタは大丈夫なのか?っていうか、やっぱり乱入してきやがったか。極力避けたかったが、コイツがやってきた以上普通に勉強なんてできるはずがない。でも、まあいいか。どうせ今日頑張ったところで付け焼刃にしかならないだろうし。範囲が広すぎて、ヤマを張ることもできないだろ。
そういえば、ヤマを張るの『ヤマ』はもともと鉱山のことだっだらしい。鉱山を掘り当てて一攫千金を狙ったことからこんな言葉が生まれたとかなんとか。
結局、その後は勉強会にならず、何故かゲーム大会になってしまった。スマ〇ラでトーナメントとかやってた。意外なことに優勝は優奈だった。何時の間にやり込んでたんだろう。
後日、テスト結果が発表された。廊下に順位表が張り出されることはなく、個人個人に点数と順位の書かれた紙を渡された。
「颯、どうだった?」
この学校は40人1クラスで全10クラスある。したがって、400人が学年にいるわけだ。
颯は泣きそうな顔で自分の順位を見せてくれた。下から5番目だった。上には上がいるが、下には下がいるもんだ。
「ご愁傷様。」
俺は形だけ颯を慰めてやった。
「そういうハルは何位だったの?」
「3位だ。」
彼女は目を見開いた。
「そうか。ハルの上にまだ2人もいたか。中学の時は常に一番だったからな。正直意外だな。ついでに俺は68位だった。」
祐司は聞いてもいないことを教えてくれた。
「祐司でもそのくらいか。俺は平均ぐらいだったが。」
最近影が薄い大貴も参加してきた。
「そういえば、俺に順位を訊いてきた張本人はどうだったんだ?」
俺が意地悪く尋ねると、彼女は素直に教えてくれた。
「えっと、私が121位で、加奈が84位だった。」
どうやら、椋本は見た目や喋り方に反してかなり優秀な奴らしい。
「勝手に椋本の順位を言って大丈夫なのか?」
「大丈夫。寧ろ本人から伝えてくれ、って言われたから。」
なんという自信・・・。俺もとあるゲームのキャラみたく大丈夫だ、問題ないとか言ってみたいな。その自信を少し分けてくれ。
俺は撃沈された颯を傍目にそんなことを考えていたのだった。
感想はドシドシ送ってくれて構いません。というか、送ってください。こんな作品でも読んでくれているのだと思うと嬉しくなります。
次回は少し時間が飛びます。GWあたりの話になるのではないでしょうか。
それでは、次回で。