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忌避された破壊魔法使いの私、嫁ぎ先の辺境公爵さまにかけられた呪いは、なぜか私にだけ発動しませんでした  作者: 秋名はる


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第43話(完結話) 結婚式の陰謀

次の日。

空はよく晴れ、澄んだ青空が広がっていた。


国王陛下への謁見を終し、陛下から直々に立会人として結婚の許しを得た私とユリウス様は、そのまま教会へと向かった。


教会内にはたくさんの親族や貴族たちが詰めかけ、私たちの新しい門出を祝福してくれた。


式は滞りなく進み、協会での誓いの儀式を終えた私たちは、続いて教会の外へ出て参列者から祝福の言葉を受け取っていた。


その時――それは突然起こった。


「お待ちくださいまし!」


式の参列者達が作った花道、その先にエルミールが立っているのが見えた。


「エルミール、一体どうしたの?」


私は思わず声をかけた。

周囲の人々も、突然現れたエルミールを訝しんで見ている。


それもそのはず、眼の前にいるエルミールは

まるで、怪我を負ったかのような、ボロボロの服装で私の前に現れたのだ。


「エルミール、怪我をしているの?

 一体何が__」


「お姉様、そうやってみなさんを欺くのはおやめくださいまし」


「…えっ?」


エルミールに駆け寄ろうとした私は、しかし彼女に鋭い目つきで睨みつけられて、その場に立ち止まった。


「私は以前からお姉様に言ったはずです、

あなたは、人を傷つける危険な破壊魔法使いなのだと」


「何を言っているの?」



「みなさんも聞いてくださいまし。

 今朝、私はお姉様の式に参列するために、この協会にやってきました。

 しかし、姉はそんな私のことを冷たく一瞥すると、恐ろしい呪われた破壊魔法を放って、私を傷つけたのですわ」


それを聞いた周囲からどよめきが上がる。


エルミールが涙ながらに訴えれば、周囲の冷たい視線が今度は私の方に向けられた。


「まさか、私はそんなことはしないわ」


私はすかさず否定したが、またしてもエルミールに跳ね除けられてしまった。


「いいえ、騙されては行けません。

皆様も、ご存知のはずです。ここにいるフェンネルお姉様は、以前に危険な魔物を討伐したことがあるのだとか。

でも、彼女はとても危険な存在なのです。今までだってそうして何度も私は周囲の人々を傷つけてきたのですわ!」


エルミールは、そう言って自身のボロボロのドレスを翻して、聴衆の前にうなだれる。


「彼女の呪われた力のせいで、私は腕を骨折して、こんなにもたくさんの怪我をしてしまいました」


「そんな、嘘よ。

私は、あなたを傷つけたことなどないわ」


私は、あまりにも見に覚えのない状況に、慌てて周囲に対して弁解する。


しかし、弱々しくうなだれる哀れな姿の妹と、私。どちらが聴衆の関心を引くのかは、歴然だった。


「お姉様、言い逃れはおやめください。

私は、幼い頃から何度もお姉様に危険な目に合わされてきたのです。この怪我はその証拠です」


エルミールは、更に視線をユリウス様の親類や、友人たちに向けて訴える。


「皆様、この婚姻は無効です

 お姉様がこんな危険な魔力を持っているなんて、ユリウス様には相応しくありませんわ」


言われて、ユリウス様の親類達は黙り込んでしまった。


私の眼の前に絶望が広がる。


確かに、考えてみればこれは予想できたことだった。エルミールはいつだって自分が一番でなければ気が済まない。


私が表立って何かをしようとすると、すぐに邪魔をして台無しにしてしまうのだ。


ずっと前から、考えないようにしていたことだけれど、妹が私のことをよく思っていないのは明らかだった。


こうして公衆の間で結婚式を台無しにされ、ユリウスさまにも迷惑をかけてしまった。


すっかり気落ちした私が、悲壮の面持ちでユリウス様の方を見上げると、ユリウス様はなぜだか私の方を見て、優しく微笑んでくれた。


「エルミール、残念だが嘘をついているのは君の方だ」


ユリウス様は、そう言って私の一歩前に躍り出ると、こう吐き捨てた。


「ーー君は怪我なんて微塵もしていないだろう」


エルミールは目を見開いた。


「そ、そんなはずありませんわ 

これらは全て、お姉様に傷つけられたものです」


いいながら、エルミールは背中に冷や汗が伝うのを感じていた。


確かに、エルミールはこうして派手に姉からの攻撃魔法の被害を演出してみせたが、実際に自分の身を傷つけるまでの度胸は無かった。


「では、今すぐにここで調べさせてもらう」


ユリウスさまが合図をすると、会場の周辺を警護していた家来たちが、エルミールを取り囲んだ。


「さ、触らないでくださいまし!」


エルミールは周囲に対して威嚇するように叫んだ。

しかしユリウス様は、冷静にエルミールに対して畳み掛ける。


「エルミール、私にも君と同じく治癒の能力がある。

だから、最初から君に癒すべき箇所が無いことくらいわかっていたよ」


「なっ…!」


あまりにも冷たくそう言われて、エルミールは言葉を失った。


「……そんな、ハッタリですわ!

ユリウスまで、どうしてそのようなことを言うのです」


思えばこれは至極当然のことだ。

しかし、この時のエルミールにはある勝算があるとおもっていた。


昨晩、エルミールはユリウスのもとを訪れて、ユリウスに思いを打ち明けた。


今までだったら、エルミールが周囲の人々を誘惑することで、彼女になびかないものなどいなかった。だから彼女は、ユリウスが自分の訴えを信じると思い込んでいたのだ。


「エルミール、いい加減にしないか!」


するとそこへ、参列者の集団の中からエルミールの夫のエドワードが躍り出た。


「エルミール、外でもない実の姉の結婚式を台無しにしてしまうなんて。一体、何を考えているのだ」


「エドワード様…」


「昨晩、ユリウス様から聞いたよ。君が取り乱して、自分の寝室に押しかけて来たのだとな。私は君の愛を信じて今まで共に生きてきたのに…。」


言われて、エルミールは顔面蒼白になった。


(ど、どうして昨晩のことがエドワード様にバレているの……?)


完全に、彼の心を掴んだはずだったのに_エルミールは眼の前が真っ暗になった。


「エルミール、君が私たちの結婚式を台無しにした罪は重い。

 しかし……フェンネルの妹という立場を考慮し、警備隊に突き出すのは見逃してあげよう。

今すぐここから出ていけ!」


そう言い渡すと、エドワードは蒼白になったエルミールを引きずるようにして、式場から連れ出してしまった。


***


一悶着あったものの、式は無事に終了した。


式の後は、歓迎会が催された。

歓迎会が始まる頃には、参列者たちの混乱はおさまり、和やかに進行が進む。


ユリウス様の信頼や友人たちは、私の事を気遣って、気さくに接してくれた。



式が終わってユリウスさまと私は、王都近郊にある公爵家のタウンハウスへと帰ってきていた。


北部の屋敷にいることの多いユリウス様は、この屋敷を長く空き家のままにしていたようだが、家主が不在の間も、屋敷は常に整備されて保たれていた。


「今日は私の妹がご迷惑をおかけしてしまい、すみませんでした」


私はユリウス様に、昼間の妹の不手際を詫びた。

以前から、何かにつけて突っかかることの多かった妹であるが、まさかあんな大胆なことをするなんて、想像もしていなかった。


「いいや、気にしないでほしい。

わたしも、エルミールの言動にもっと気を配るべきだった。彼女があんな大胆な手に出るなんて、知っていればもう少し早く手を打てていたかもしれない」


ユリウス様は苦々しげに呟いた。


「いえ、ユリウス様のせいではありません

あんなことをしても、それでも彼女は私の妹ですから」


彼女を止める事はできなかっただろう。


そういってユリウス様の方を見上げると、ユリウスさまもまた、おもむろに私の方に向き直る。


「フェンネル、これからは私が君の家族として、君のことを心から愛し、支えると誓うよ。どんな事があっても_」


「ユリウスさま…」


ユリウス様は温かく、そして頼もしい眼差しを向けて微笑む。私も自然と頬が綻んだ。


私達は、再び強く抱きしめ合うと、温かな春の夜に溶けていった_。


最後までお読みいただきありがとうございました

もしよければ、★評価や感想などお待ちしております‼️


また、他の作品も色々執筆しておりますので、そちらも是非よろしくおねがいします!

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