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17.5、ダントンとエマ

 辺り一面には、暗がりの中で一層深い緑を帯びた森林が広がっていた。

 その一角で地を震わすような爆発音が響いた。

「〈煉獄〉」

 エマの放った呪文が周囲の敵を樹木ごと焼き払った。土煙が立ち込めるなか、一体の植物型モンスターが飛び出してくる。

「ダントン!」

 エマの叫びに呼応するように重装備をまとった戦士が飛び出し、ひと振りの剣戟が動く植物を仕留めた。

「エマ、大雑把な魔法の使い方はやめなさい」

 剣のついた樹液を振り払いながら、ダントンはたしなめた。

「仕方ないじゃない。人手が足りないんですもの」エマは口をとがらせた。「手っ取り早く魔法で焼き払うのが効率的ではなくて?」

「それで一匹取り逃しているのだから世話はない」

「あなたへのお仕事を残しておいたんですのよ、前衛さん」

 ダントンはそれ以上言うのをやめた。

 実際問題、二人でのダンジョン攻略のセオリーなど、最下層部ではあてにならなかった。

「まったく、イアン様も無茶なことをおっしゃる」ダントンは言った。「クラン単位での攻略ならともかく、二人でなど・・・」

「それだけ信頼されているということでしょう。イアン様の目に狂いがあるはずがありません」

 言いながら、エマは背後から近づくモンスターを魔法で燻しあげる。「実際、こうして先に進めているわけですし」

「しかし、想定よりはペースが遅い」ダントンは言った。「急がねばなるまい。イアン様のご計画では、ここを攻略することは必須条件だ」

「言われなくてもわかってます。ですが」

 エマは遠くを見やったが、ダンジョンの階層を隔てる天井があるばかりだった。「あの短気な男が事を順調に進められるとも思えません」

「そう言うものではなかろう」と、ダントン。「あの男だって好きでああなっているのではない。これは〈屍者〉の宿命だ」

「それもわかってますわ」

 小うるさい小言は聞きたくないとばかりにエマは手をひらひらと振った。「要は、何が起こっても大丈夫なように余裕を持って攻略すればいいのでしょう」

「わかればよろしい」

 ダントンとエマは武器を構えてダンジョンの奥を目指していった。

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