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零:報せ
のどかな光の降り注ぐ昼下がり。
彼は木の上に登って、太い枝の上に寝そべっていた。
艶やかな黒髪と黄金の双眸をもつ長身の青年だ。
彼の名は、ゼイン・クルーズ。
この島国エルドラドで名を馳せる盗賊である。
「……ん?」
何かを感じ取ったらしい彼は、ふと目を開けた。
空を見ると、白い鳥が何か紙のようなものを咥えて飛んでいるのが見えた。
それはゼインの前に舞い降り、その紙を差し出す。
「ご苦労さん。なになに? そうか、謳姫が決まったのか……新たな犠牲者が……」
その紙は、エルドラド王国の王都ベルエアでばら撒かれた新聞だ。
ゼインは意味深長に呟き、呪文を口中で唱えた。
手紙が一瞬で燃え、塵となって消えていく。
「……まぁ、ちょっと見に行ってみるか」
彼は、眼下に広がる王都を一瞥し、不敵な笑みを浮かべたのだった。
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