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子狐のウエディング  作者: 志喰寝
第2章
11/21

第10片

 トイレから出ようとドアを開けると、目の前に見慣れた顔がぬっと現れた。



 「……!」

デイドリームは腰を抜かした。


「どうした?急に」


「こっちのセリフだよ!」

デイドリームはレオに対してツッコミを入れた。


 「急に走りだしたからさ、どうした?って思って」

レオが聞くと「トイレだけど?」と誤魔化した。それにはレオも気づいた様子で、


「他には?困ってる事あったら言っても良いから」

(急に優しいな、コイツ)とか思いながら、デイドリームは「大丈夫、困りごとなんかないよ」と答えた。


 デイドリームがトイレの個室から出ると、レオがこう言った。


「お前、汗かいてんじゃん」


「え?」

デイドリームは汗をかいていた事がばれてしまった。


 さっき念入りに拭いたつもりだったが、まだ残っていたみたいだ。



 レオが聞いた。 


「本当に何かない?困ってる事」


「実は……」


 デイドリームは言葉に詰まりながら本当のことを話した。周りからの視線を意識するようになった事とか、トラウマで能力を使えない事とかを話した。


 すると、レオの口から予想外のひと言が飛び出した。

「ごめん!俺が悪かった!」


「は?」

トイレの外まで聞こえるような大声での謝罪に対し、目を見張り思わず言ってしまった。


 「マジでごめん。あのいたずらが原因で、能力使えなくなったんだよな」


「まあ、それはそうだけど」


「ごめんな」


「うん。全然大丈夫」


デイドリームは強がってしまった。大丈夫なはずないのに。


 そして、お茶を濁そうと、「もう試験戻ろう」と促したが聞いてくれなかった。


「あと……」

デイドリームは(まだあるのかよ)と内心、思いながら聞いた。


 するとまた、レオが平常心を失いそうな予想外のひと言を発した。


「実は、周りにデイドリームの能力の事、ばら撒いたの俺なんだ!」


デイドリームは二度目の「は?」を繰り出した。


「ここに、職場体験で来た時とか……ウェザーズモールに遊びに来た時とかに調子乗ってばら撒いてしまったんだ」


 (どこまで自分を追い詰めるんだろうか)と、デイドリームが思った矢先、レオが自分から窮地に立つようなひと言を発した。ウェザーズモールとはウェザーヒーロー達が休憩時や退勤時に通うことで有名なショッピングモールだ。


 そして間髪も入れずに発した言葉が会話に終止符を打った


 「あとSNSとかでもばら撒いてた」


「は?」



 デイドリームの三度目の「は?」が炸裂した。


 デイドリームは流石に腹が立った。そんな事をしたのに、レオは自分と気安く話していたのか……




 デイドリームは最悪の長話を切るように、トイレから出てさっきの会議室に向かった。青空が少し、くすんで見えた。


 一方、レオはトイレの中でくずおれていた。そのまま、しばらく呆然としていた。

読んでくださりありがとうございます。これからも読んでくださると作者は踊って喜びます!

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