STORIES 014:アイ・ウィル・コール・ユー
STORIES 014
行間を埋める。
文章を書いたり、脚本を演じたり、想いを伝えたり。
台本に書かれた文言をなぞるだけでは、優れた芝居は成り立たない。
最低限のシナリオに、演出と動きと表情と感情が付け足され、昇華される。
もちろん、僕らの殆どは俳優を生業としているわけじゃない。
現実の世界を、毎日ひたすら泳いでいる。
ただただ疲弊して眠りにつくまで。
まぁ、そういう意味では…
毎日きまった役柄を演じている、と言えなくもないか。
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友達や家族や恋人とのコミュニケーション。
むかしは手紙が連絡手段だった。
やがて電話で簡単に話せるようになった。
しかし…
ネットの普及は、Eメールでのやり取りを瞬時に行えるようにしたし…
より気軽な、テキストメッセージを使うようにも変わった。
話をするより面倒がない。
電話じゃなくて、メッセージで送っておいてよ。
時代は、文字でのやり取りに戻ったのだ。
またしばらくは、ね。
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長い文章を書くと、複数の行にわたって文字が続くことになる。
するとそこには、あちこちに隙間ができる。
まるで、何か伝えたいことや重要な何かが、そこから抜け落ちてしまったかのように。
行間…
その隙間を埋めて補いたい。
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言うまでもなく、コミュニケーション手段としては、顔を合わせて話をするのが一番良い。
ちょっとした身振りや表情で、言葉以上に伝わるものがある。
ときには、触れ合うこともできるかもしれない。
それが難しければ、電話の出番となる。
顔は見えないけれど、声やニュアンスが伝わる。
そこには、感情や意図が乗りやすい。
世界のどこにいても、いつでも繋がれる。
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あなたの声を聞きたいなんて言ったら…
いつでもどうぞと、君は笑うだろう。
でもね、誰かの時間を奪ってしまうことに、躊躇いを感じてしまう自分もいる。
電話をしている時間というのは、受話器の向こうに相手を縛りつけてしまうことになる。
それはエゴなのではないか。
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だから、文章にして送ってみる。
けれど文字を書くのはもどかしい。
その代わりに、書き直したりじっくり考えたりもできる。
そして、気が向いた時に返してくれれば良いなんて、少し安心したりもする。
でもね、行間を埋め尽くして全てを伝えるというのは、やっぱり難しい。
本当はたった一言、伝えたいだけなのに。
そしてたった一言を、聞きたいだけなのに。
このかけがえのない夜が明ける前に…
あなたの声を聴かせて