表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

STORIES 014:アイ・ウィル・コール・ユー

作者: 雨崎紫音

STORIES 014

挿絵(By みてみん)



行間を埋める。

文章を書いたり、脚本を演じたり、想いを伝えたり。


台本に書かれた文言をなぞるだけでは、優れた芝居は成り立たない。

最低限のシナリオに、演出と動きと表情と感情が付け足され、昇華される。


もちろん、僕らの殆どは俳優を生業としているわけじゃない。


現実の世界を、毎日ひたすら泳いでいる。

ただただ疲弊して眠りにつくまで。


まぁ、そういう意味では…

毎日きまった役柄を演じている、と言えなくもないか。


.


友達や家族や恋人とのコミュニケーション。


むかしは手紙が連絡手段だった。

やがて電話で簡単に話せるようになった。


しかし…


ネットの普及は、Eメールでのやり取りを瞬時に行えるようにしたし…

より気軽な、テキストメッセージを使うようにも変わった。


話をするより面倒がない。

電話じゃなくて、メッセージで送っておいてよ。


時代は、文字でのやり取りに戻ったのだ。

またしばらくは、ね。


.


長い文章を書くと、複数の行にわたって文字が続くことになる。

するとそこには、あちこちに隙間ができる。


まるで、何か伝えたいことや重要な何かが、そこから抜け落ちてしまったかのように。


行間…


その隙間を埋めて補いたい。


.


言うまでもなく、コミュニケーション手段としては、顔を合わせて話をするのが一番良い。


ちょっとした身振りや表情で、言葉以上に伝わるものがある。

ときには、触れ合うこともできるかもしれない。


それが難しければ、電話の出番となる。


顔は見えないけれど、声やニュアンスが伝わる。

そこには、感情や意図が乗りやすい。


世界のどこにいても、いつでも繋がれる。


.


あなたの声を聞きたいなんて言ったら…

いつでもどうぞと、君は笑うだろう。


でもね、誰かの時間を奪ってしまうことに、躊躇いを感じてしまう自分もいる。


電話をしている時間というのは、受話器の向こうに相手を縛りつけてしまうことになる。


それはエゴなのではないか。


.


だから、文章にして送ってみる。

けれど文字を書くのはもどかしい。


その代わりに、書き直したりじっくり考えたりもできる。

そして、気が向いた時に返してくれれば良いなんて、少し安心したりもする。


でもね、行間を埋め尽くして全てを伝えるというのは、やっぱり難しい。


本当はたった一言、伝えたいだけなのに。

そしてたった一言を、聞きたいだけなのに。


このかけがえのない夜が明ける前に…

あなたの声を聴かせて

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ