とんだ珍客
御早う御座います!
「下袖木の野猿峠を抜けた辺りだ」 男が妙にきっぱりと言うのが聴こえた。俺は否が応でも聞き耳を立てずにはいられないのだった。「板野駅南口に出ようと、君の駆る車は、とんでもなく先を急ぐんだ。客に急かされてな」「ほう」「君の乗せた客は、何でも、親友の結婚披露宴の3次会に間に合わせなければならない、とかで、とんでもなく急いでいて、君を急かして急かして急かしまくる。時速百キロを出して走れ、と迫るのだ」 俺はいつの間にか黙って聞いていた。 暇潰しのための酔っぱらいかなにかによる四方山話の一種だと思って聞けば、少しは運転の退屈も癒やされるのかもしれないのだし、まあいいかと思えてきた。 この男は、未来から来た俺自身だと言っていた。 二十年後の未来ではタイムマシンも発明されて、時空を自由に行き来出来るのだろうか。それは愉しいものなのか。果たして、それを使って歴史を塗り替えるようなことは出来るのだろうか。そして、未来の自分とやらは今回、何をしに俺のもとを訪れたのだろうか。考えることは山程あった。良い退屈凌ぎなのかもしれない。
有難う御座いました!




