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現実アンチは色付ける。  作者: 新田 穂摘
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EP5 雛

大きく未来を観ている薄茶色の瞳、光を反射していると錯覚する様な艶のある肌、長い紺色の髪が靡く姿が魂だけになった今でも何故だろう・・・忘れられない。

身長も低くでもどこか妹という感覚とはかけ離れる程大人と感じる時があった。

たった22年程の人生されどと言うものなのだろうか。共に長くいると人は思わせぶりなのかと思う程に通常ではない一面を見せてくる。普通の人間ならこれは脈と言うものになったりするのだろう。ただ俺は違った。

特別と言う意味では他人の感覚と異ならないものの、俺にとってはそれは脈ではなく生きる意味そのものだった。

俺にしか見せずではなく、俺にしか見せられない。俺にしか話さないでは無く、俺にしか話せない。こんなふうに勝手に脳内で変換されていたのだから・・・。

そして最後の夜、ついに知った。いや、そう感じてしまった。

きっと、全て俺の感覚でしかなく、本人はそこまで重症ではない、依存などしていないのだろうと。

考えれば考えるほど捻れる。「そうだ、優しくもない俺はあいつに依存されるような人間じゃないよな」

このように・・・ 生きる意味=自分自身を自ら否定した。


だが死んでからこれまでたくさんの不思議なことが起きている。

みどり自身、死後の世界などいった事も知った事もない。

だが、魂になって尚、みせられ気付かされ傷つけられるこの状況は地獄以外の何者でもない事くらいみどりはわかっていた。眠る間もなく選択肢や生き方を考えさせられては、気付かされ一色、一色と付け足される部屋は、人間を成長させるためでは無く人間ではないものを人間にするための授業であり、後悔であり、懺悔である。

この部屋は、心の地獄。人間になるまで出られない教室だった。

みどりにとっては生きることより余程辛い、激痛の日々が始まった。

眠りから覚め必ずと言っていいほど汗だくで始まる生活。だが幻かのように一瞬で濡れている感は消え去る。

そして読めない文字の羅列を見ては泣いて後悔と懺悔を繰り返しまた眠りにつく。

これをただひたすら義務かのように無限と思える時間繰り返す。

光は消えず時計も音も空腹も何もないこの部屋で。

そんなみどりを優しく見守るように、窓奥には広大な青空が広がり続けていた。

「母さん・・・」魘されるように呟くみどり。その心には二つ母が存在した。

広大な青で包み込んでくれる母。そして生前近くで見続け励まし生き方を教え続けてくれた・・・

「鎰黄」その人だ。気付き傷つく事は愚かなことではなく、新たな感情を発見しみどりの拠り所を形成した事を証明した。


部屋にはいつの間にかこの部屋に初めて来た時に見た扉があった。

そしてたまに聞こえる人の会話。風と共に部屋には土や草木のような懐かしくも初めての大地の匂いが付け足されていた。

みどりはいつものように眠りから覚める。だが異なった状況に唖然としていた。そして涙が溢れる。

この膨大な感情はなんなのだろうか。それは言葉では表すことはできないのだと、その一瞬で理解した。

そしてみどりは立ち上がり半開きの扉に近づいていく。音やら匂いやらはきっと夢ではないことにみどりは確信した。止まっていた秒針が動き出すかのように。修復したグラスに水が注がれるように。

今だけみどりは無知で無邪気な子供となって辿り着いたその扉を開け飛び出して言った。







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