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現実アンチは色付ける。  作者: 新田 穂摘
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EP1 鎰と鍵

『イコール、敵』

いつからかこんな言葉が心を支配するようになった。

現実には様々な理不尽がある。人間関係。金。権力。マナーやコンテンツ。その他にも色々、数えきれないくらいに。ただそれらが無ければ楽なのかと言われるとそうじゃない事くらいこんな歳になればわかる事だ。

だから、理不尽なのだ。

そんな理不尽に人間は抗い苦しみ成長する期間がある。反抗期だ。

子供が世の中の理不尽に抗い親に迷惑をかける。そして気付かされる。

まるで、脅迫だ。

まあ大抵はこうなるのがお決まりの展開だが。

俺には怒ってくれる親もいなければ八つ当たり先もない。

居たのはただ、生まれてすぐに行方不明になった親の代わりに育ててくれた児童養護施設の人と妹のようにずっと一緒にいた病弱な女の子<白石シライシ 鎰黄イツキ>だけだ。

イツキは、ある事故をきっかけに大怪我を負ってほぼ完治不可の歩けない身体になった。

事故前は、有名な鍵職の両親に憧れて手伝いをしていたらしい。

まあ、憧れに関しては今もが正しいが。

「おにい、今日もリハビリ頑張った」

「へー、凄いじゃん。これからも頑張れ」

お決まりの報告だ。出会った時から今日まで毎日この時間があった。

「冷たいなー、本当に思ってる?」

「思ってるよ、鍵職人になるんだろ。ほんと頑張るよね」

「いつかおにいに作ってあげるよ。皇 みどり専用の鍵」

「なんの鍵だよ別に特注するような物じゃないだろいらねーよ」

「そんなこと言わずに・・ね?色は、みどり!いややっぱり皇帝みたいな苗字だから黄金色かな・・・」

「うわー金ピカとか高そーやっぱいらね」

「ひどーい・・・でもきっと役に立つよ」

やけに今日はよく喋っていた。


まるで見透かされるように・・・

「さて、部屋に戻ろう。」


話は戻りこのように毎日を忠実に迷惑をかけぬように必死に生きていた。

その為か、頼る事の心強さも、頼られる事の喜びも知らない俺は、精神だけが擦り減る毎日に生きる意味を見失った。だから・・・死ぬ道を選んだんだ。

「やっとこれで楽になれる」

怖かった。でもこんな世界から解き放たれることを考えるとウキウキしたし初めて笑いながら泣けた。

「さよなら色褪せた世界」

そんな事を呟きながら、深い呼吸と同時に喉元にデパートの安売りコーナーで買った果物ナイフを突き刺した。

最後に見た光景は涙でぼんやりとしか写らなかったが、少し開いたカーテンの奥の窓に映った逆さまの鎰黄の姿だった。

イツキも辛かったのだろうか。苦しかったのだろうか。

その一瞬という時間の中では考えることはできなかった。

だが何故かその涙に滲みながらも映る姿が美しく見えた。


「まるで、鍵みたいだな。これが皇 みどり専用の鍵か・・・ただの使えない綺麗な鍵じゃねーか」


その光景を最後に黒い雨が降った。

そして俺は、幕を閉した。




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