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次からは帝国編になります。(予定)

ヴィルヘルムが外堀を埋めている描写も時折出していけたらと…。

(婚約破棄から一週間後のランドン侯爵邸)


兄が急遽帰国した。


「どうして、俺の可愛いリズが婚約破棄をされなくてはいけないのですか、父上!!」

「王太子殿下は子爵令嬢の成果をリズが横取りしたと仰られた。

もちろんリズに心当たりはなかったが、あの場は婚約破棄を了承するしかなかったんた…。」

「横取り?」

「お兄様、お帰りなさいませ。わたくしが説明を…。

つまりですね、ジュード王太子殿下はわたくしが聖女様が作った薬を自分が作ったと言ったり、わたくしが平民を看るなんて嫌!と言っていると聖女様から聞いていてガッカリされたのですわ。」

「聖女?ディルス子爵令嬢が?」

「はい。どうやら、パーティの前には神官のみで聖女の認定を頂いたとか。」

「聖女認定は神官長のみに与えられているものだぞ?」

「存じてます。ですが、神官長はパーティ当日の深夜まで王国にはお戻りになりませんでしたから、神官たちは神官長には事後報告でいいだろうとなったのでは?」

「は?王国の神殿は腐っているのか?」

「お兄様、神に遣える神官を腐っているとは本当でも口に出してはいけません。」


私も神官長不在でいつクラリスを聖女認定したのか疑問だったが、婚約破棄の翌日に国王からの書簡で神官たちが長不在で独断で行ったことを知った。

しかしその後速やかに神官長が彼女を仮の聖女に認定したという。


「お兄様、国王陛下は殿下と子爵令嬢の婚約は宣言しておりません。子爵令嬢が国母になったことは歴史上ありませんし元より、王族と婚姻して王族として残る場合は伯爵家以上と定められておりますから。

ジュード殿下はそこがすっぽりと抜け落ちているのでしょう…。

それか、多くの民を魔法と薬で癒やす聖女であれば爵位は関係なく婚姻できると思った。とかでしょうか?」

「この国大丈夫か?俺、臣下としてジュード殿下に忠誠誓えるかな?」


兄は心配そうに父と私を見た。


「大丈夫です、お兄様。ディルス嬢は仮。本当の聖女様は他にいらっしゃいますから。」

「そうなのか?」

「はい。数日前から既にわたくしの後任を育てております。お父様とお兄様にはその子の後ろ盾として、わたくしが帝国へ行ったら頑張ってほしいのですわ。」


私が父と兄にお願いをしたことは少なく、ふたりともジュードの出方次第ではあるが私の気持ちを尊重してくれると言ってくれた。


………


(サーラの輿入れを祝うパーティの後日談)


「父上、お時間をいただきありがとうございます。」

「ジュードよ。吹っ切れた顔をしているな。」

「はい。方方でご迷惑をお掛けしたこと、心より謝罪申し上げます。」


ジュードは頭を下げる。


「自身の間違いに気づけたのはいいことだ。

だが、もうエリザベート嬢が帝国へ行くこと変わりないぞ?」

「はい、分かっております。元よりエリザベート…ランドン嬢の苦労を知っていながら、一時の感情に流されてしまった私の落ち度です。」

「そうだな。見事にノルバンディス公爵子息にエリザベート嬢を攫われてしまったようだしな。」

「父上もご存知だったのですか!?」

「ああ。あいつは喰えない男だ。帝国の次期宰相に最適な逸材だろう。」

「私もそう思います。」

「して、お前はどうする?儂はまだディルス子爵令嬢との婚約は認めておらんぞ?」

「はい。ディルス嬢につきましては神殿や王家に虚偽を訴えたことについて取り調べた後に然るべき対処をする予定です。ですが、以前のパーティで私はディルス嬢を婚約者と紹介した事実は変えられません。

ですから、私を王太子の任から…」


ジュードは弟であるアランが王位に就く気がないのを知っていたが王太子の任を解いてもらおうとした。


「アルベルト皇太子とノルバンディス公爵子息はあのパーティで何も聞いていない。聞いたのはジュードとエリザベート嬢の婚約破棄と彼女がサーラに付き従って帝国へ行くというのを儂が宣言したことだけだと言っておったぞ?」

「ですが、国内の貴族は…」

「ディルス子爵は爵位の返還を検討しているそうだ。

平民では王族と婚姻できぬ。

元より、子爵家では王子妃にはなれない。そうだろう?」


国王は側にいた王弟でもある宰相に視線を向ける。


「はい、陛下。王族の正妻は伯爵家以上と決められております。

それに、ジュード殿下に王太子の任を降りられては困るのです。(アランの婚約者)は国母にはむいていないのですから。

陛下がディルス嬢との婚約を認めるとは発言しておりませんし、ランドン侯からも王太子を降りろとまでは言われておりませんから。」

「しかし、宰相…」

「ジュード殿下のパーティでの発言をなかったことにはできませんが、貴方様が心を入れ替えるのであれば、国内の貴族を黙らせることくらい、我が公爵家とランドン侯爵家を以てすれば雑作もありませんよ。

侯爵から力を貸すのは吝かではないと言質も貰っております。」

「お前が行動に責任を果たしたいのならば、伯爵家以上の令嬢を正妻としろ。」

「…」

「ジュード、エリザベート嬢はなお前に一方的に婚約破棄されたのにも関わらす、神殿へ薬を持っていき、後任の育成までもしてくれたのだぞ?

彼女への贖罪として、お前ができることは何だ?」

「私にできること……」

「お前にその気があるならば、新たなる聖女を王家に迎え入れようと思う。」

「新たなる?」

「近々、聖女認定される令嬢で、エリザベート嬢が直接指導してくれたのだ。」

「エリザベートがそこまで…。

父上、私の婚姻に関して全て父上に従います。」

「分かった。宰相よ、それで動いてくれるか?」

「承知しました。」

「私はこれから私の出来る全てで以てこの国を豊かにするために精進して参ります。」


ジュードの将来を見越した表情に、国王は早めに譲位してもいいかもしれないと少しだけ思った。

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