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翌週になり、アンネとネフィに支度してもらってから、ノルバンディス公爵家の馬車を借りてコレッソ邸を訪れた。


「ランドン様、お越しいただきありがとうございます。」

「コレッソ様、お招きありがとうございます。」

「本日、当主である父は不在で母も他家のお茶会へ参加しております。」

「(つまり、ご両親には説明したくない状況なのね。)

そうでしたか。またの機会にご挨拶させてください。」

「はい。申し伝えておきますわ。では、こちらへ。」


アイシラの案内で通された部屋には同年代と思しき貴族子息が一人、そして仮面をつけた幼い男の子が座っていた。


「ご紹介致しますわ。こちらカロン=ダンゼン()()とその弟君のバート様です。

カロン様とは幼馴染ですの。」

「はじめまして、ダンゼン伯爵家当主のカロンです。こちらは弟のバート。さっ、挨拶なさい?」

「は、はじめまして…。」

「ダンゼン伯爵様、バート様。はじめまして。エリザベート=ランドンです。」

「実は…」

「待ってくれ、アイシラ嬢。僕から話をしても?」


アイシラの言葉を遮ってカロンが話をするといったので私は頷いた。


「弟は幼い時に酷い火傷を負い身体を上手く動かすことができません…。」

「えっ…」


バートが仮面を取ると火傷の跡がみえた。彼らは異母兄弟で弟バートの母親が亡くなったことで前伯爵が引き取ったが、前伯爵夫人は妾の子であるバートに酷い仕打ちをしていた。

カロンは学生寮に入っていたので事実を知らず、長期休暇で帰宅した際に火傷をみて驚いた。

そこからのカロンは手際よく母親を法で裁いてもらい、父親に家督を譲らせたのだそうだ。


「この火傷、治せるでしょうか…?」

「治せると思いますわ。時間も惜しいですから早速取り掛かりましょう!

バート様、魔法が効いてくると熱くなることがありますが、驚かないでくださいね?」

「うん、わかった…。」


私は手を翳して治癒魔法を使う。数秒後「どうですか…?」と声を掛けるとアイシラが泣きながら手鏡を持ってきた。カロンも泣いている。


「ね!カロン!見て!バートの火傷の跡が…!」

「ああ!バートの本来の顔だっ!!」

「(アイシラ様はカロン様がお好きなのかしら?とても嬉しそう…。)」

「お姉さん!痛みがなくなったよ!」


アイシラとカロンはバートを抱きしめる。


「治ってよかったですわ。」

「ランドン様、本当ありがとうございます!」

「ランドン嬢、本当にありがとう。」

「ありがとう!」

「ふふ。どういたしまして。」


私はそろそろお暇しようと席を立つ。


「ランドン様、あの謝礼を!」

「コレッソ様、わたくし治癒魔法に対する謝礼は受け取っておりませんの。」

「ですが、ランドン嬢…!」

「そうですね…ではコレッソ様がわたくしと友人になってくれるということでいかがでしょうか?」

「えっ!?」

「わたくしはご存知の通り帝国へ来たばかり。

同年代の友人がほしかったのですわ。」

「しかし…」

「コレッソ侯爵家は帝国でも有数の資産家で手広く商才を揮っていると記憶してます。

コレッソ様もその腕を揮っていますよね?是非ともいっぱいお話してみたいのですわ!」


私はアイシラにそんな提案してみる。


「そんなことで本当に宜しいのですか?」

「はい、ですからどうぞエリザベートと呼んでくださいませ。」

「では、エリザベート様。わたくしのこともアイシラとお呼びくださいませ。バートを治してくれて本当にありがとうございます。」

「ランドン嬢、本当にありがとうございます。

お困りのことがございましたら、当家へもご相談ください。尽力いたします。」

「ふふ、あっ!それともう一つ宜しいですか?」

「「何でしょう?」」

「おふたりのお式には声をかけてくださいませね?」

「「えっ!!」」


私は顔を真っ赤にするふたりと「お姉さんの言う通り早く結婚してしまえ!」という表情をしていふバートに礼をして帰ることにした。


………


もうすぐ私が帝国へ来て一年。

この一年で私の治癒魔法の噂が拡がったことで御夫人方の味方が増え、ヴィルを慕っていた令嬢たちも両親に諭されたのか私と仲良くしてくれている。

因みに神殿からお誘いがあったが、治癒のお手伝い程度ならいいが専従することは出来ないと言って、毎月行われている開放日に治癒に行くことにしている。


「サーラ、もうすぐ婚姻の儀ね。」


この所、忙しく会うことができていなかったサーラとお茶をしている。


「ええ。やっと準備も落ち着いたし、リズが不足していて大変だったわ…。」

「ふふ。アルベルト様もお忙しいとヴィルが言っていたわ。」

「ええ。わたくしも皇太子妃教育と並行して執務をいくつか任されているのよ。」

「そうだったのね。でも執務ならば王国でも少しはしていたでしょう?」

「それでも郷に入っては郷に従えと言うこともあるわ。」


私はサーラに笑顔を向けて手を翳す。


「疲れが癒えたわ。ありがとう。」

「どういたしまして。」

「お茶が冷めてしまったわね。替えてくれるかしら?」


サーラが侍女に頼むとサッと新しいお茶が出てきて、侍女は下がっていった。


「ねえ、サーラ。今の侍女は新しい方?」

「えっ?あの子は確か先月配属になった5年目の侍女よ。どうかしたの?」

「そう…。ごめんなさい。何でもないわ。」


私とサーラは紅茶を口にした…。

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