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「伯爵家のお茶会ですか…?」


帝国へ来て2週間。義母の友人の伯爵夫人からお茶会へ誘われたと言われた。


「ええ。わたくしの学院時代の同級生なのだけど、久しぶりにお呼ばれしたのよ。」

「そうでしたか。」

「エリザベートちゃんがサーラ様以外にパイプを作っておくのもいいかと思うのよ。」

「わかりました。招待、お受けいたします。」

「よかったわ。娘を連れてお茶会へ行くのが夢だったのよ!」

「宜しくお願いします、お義母様。」


………


お茶会当日。


「本日はお招きありがとう、伯爵夫人。」

「ようこそお出でくださいました、公爵夫人。

そちらが、噂のご令嬢ですか?」

「ええ。エリザベート、挨拶なさい。」

「はい。初めてお目にかかります。エリザベート=ランドンと申します。本日はお招きありがとうございます。どうぞ、宜しくお願い致します。」


私がカーテシーすると伯爵夫人だけでなく、近くにいた夫人や令嬢たちが感嘆しているのを感じた。

この一ヶ月。サーラに呼ばれて城へ行く以外は義母に帝国でのマナー、次期公爵夫人として立ち居振る舞いを徹底的に叩き込まれた。

義母の指導は厳しかったが、王国で王子妃の教育をやってきた私は基礎が完璧に出来ていたので、問題はないと義母に太鼓判を押された。


「エリザベートさん、はじめまして。本日はお越しいだき、ありがとう。どうぞごゆっくりしていってね。」

「はい、ありがとうございます。」


伯爵夫人は少し顔を引き攣らせて私の前から去っていった。


「エリザベートちゃん、素敵なカーテシーだったわ。流石は王国の筆頭侯爵家のご令嬢ね。」

「いいえ、お義母様のお力あってです。」

「さて、他にも挨拶したい友人がいるのよ。行きましょう?」


義母と沢山の夫人や令嬢と挨拶を交わした。

その内の何人かから「今度、我が家のお茶会へいらしてください。」と誘っていただけた。

もちろん、好意的な反応ばかりではない。

そう、やはりヴィルは目つきが悪くてもモテるのだ。

確かに昔は目つきで怖がられていたの事実だし、本人はモテたことがないと言っていた。

が、本人が無頓着だっただけで令嬢からの視線は熱かったらしい。

これは彼の従兄弟でもあるアルベルトが言っていたから間違いない。

そもそもアルベルトとヴィルが並べばそこだけ世界が違うようなものだ。

そんなヴィルの婚約者である私は、王国出身で皇太子妃となるサーラに付き従っている一貴族令嬢である。

ぽっと出の私をよく思っていない人も多いのだ。


「大丈夫よ、エリザベート。貴女はこの帝国で皇妃様の次に貴い存在になるの。堂々としていなさい。」

「はい、お義母様。」


私も王国で王子の婚約者だったのだ。こんな視線には負けない。が…やはりヴィルがモテすぎていたことに嫉妬している。

義母が離れたときに近くにいた令嬢が言ったのだ。


「昔からノルバンディス様のことお慕いしていたのに…」

「どうして、王国から…しかも王子に婚約破棄されたキズモノ令嬢なのでしょう?

わたくしの方が相応しいのに…」

「ノルバンディス様の隣に立ちたかったですのに…」


私は「言わせておけばいいのよ。」と思い、そのお茶会の終盤を迎え、私はとある出会いをする。


「あのランドン様、少し宜しいですか…?」とひとりの令嬢が声を掛けてきた。


「貴女は、確かコレッソ侯爵家の…?」

「はい、コレッソ侯爵家のアイシラですわ。」


コレッソ侯爵家は数代前に皇妃を輩出したり、皇女が降嫁したりしている名門貴族である。


「コレッソ様、どうなさいましたか?」

「あの、不躾なのですが…。ランドン様は功名な治癒魔法の使い手と聞き及んでおります。」

「どの様に聞き及んでいるのかは存じませんが、治癒魔法の使い手ですわ。」

「実は治癒をしてほしい方がおりますの…。」

「事情は深く訊きませんわ。わたくしにできることならば、協力させてください。」

「宜しいのですか!?」

「ええ、もちろんです。」


「細かいことはお手紙を差し上げますので、また。」とアイシラは去っていった。


「アイシラさん、どうかされたの?」

「いいえ。今度お屋敷にご招待されたのですわ。」

「そう。コレッソ侯爵はアルベルト皇太子殿下の妃に彼女を推していたから、裏があるかもしれないから、気をつけるのよ?」

「はい。そろそろお暇しませんか?さすがに久しぶり沢山の方とお話して疲れてしまいました。」

「そうね。帝国での初めてのお茶会にしては合格よ。」

「ありがとうございます。」


………



「エリザベート様、コレッソ侯爵令嬢よりお手紙にございます。」


お茶会から一週間後、刺繍をしている私の元にアイシラから届いた手紙をネフィが持ってきた。


「ありがとう、ネフィ。アンネ、悪いけどお茶を入れてくれる?」


私が頼むとアンネは手際よく準備し、ネフィは刺繍道具を片付けてくれる。


「「何かあれば、お呼びくださいませ。」」

「ええ、ありがとう。」


私はペーパーナイフで手紙を開ける。

「コレッソ様は奇麗な字ね。」と思いながら、手紙を読み進める。

簡単に言うと、アイシラはヴィルの婚約者の座を欲しがったことはなく、父親が一方的に縁談を持ち込もうとしただけなので、私に近づいたことは本当に治癒魔法をかけてほしい人がいるからであることが綴られていた。

私の都合のいい日を伺いたいとあったので、翌週コレッソ邸を訪れることにしたのだった。

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