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城から公爵邸へ移動する。もちろん私とヴィルしかいない。


「ねえ、ヴィル。わたくし本当に行っても大丈夫…よね?」

「もちろんさ。父上と母上は君に会うのを心待ちにしているよ?」


馬車の速度がゆっくりとなり、停車する。

コンコンと馬車の扉がノックされ「ヴィルヘルム様、お帰りなさいませ。」と穏やかな声が聞こえた。

彼は私の手を優しく握り「大丈夫。俺がいるよ。」と言って、扉を開けるように指示をだした。


「お帰りなさいませ。」

「ただいま。」


ヴィルから差し出された手を取りタラップを降り、エントランスへ向う。

そこには使用人一堂と彼と同じ髪色の男性と、彼も同じ瞳の色の女性が立っていた。


「ヴィルヘルムお帰り。」

「お帰りなさい。」

「父上、母上、ただいま戻りました。彼女を紹介しても?」


公爵と公爵夫人はニッコリと頷く。


「王国のランドン侯爵家のエリザベート嬢です。」

「初めてお目にかかります。エリザベート=ランドンと申します。」


私はカーテシーし、公爵たちの言葉を待った。


「頭を上げてくれるかい、エリザベート嬢。」

「はい。」

「ふふ。想像通り可愛らしい子ね。」

「続きはサロンでしようか?」

「案内するよ、エリー。」

「はい、ヴィル様。」


ヴィルは私が様をつけたことに一瞬表情が変わったが、両親の前だからと直ぐに納得したようだった。


「改めて、ようこそノルバンディス公爵邸へ。

私は当主のアーサー=ノルバンディスだ。こちらは妻のキャロル。私たちは君が帝国へ来てくれるのを心待ちにしていたんだ。」

「改めまして、エリザベート=ランドンです。 宜しくお願いいたします。」

「エリザベートと呼んでも構わないかな?」

「はい。」

「では、エリザベート。今更だがヴィルヘルムでよかったのかい?」

「えっ!?」

「親の私が言うのもなんだが、初恋を拗らせて、君が婚姻するまでは縁談は断ってくれと私や陛下に10年前から言っていたような男だ。

一途なのは認めるが、幼い頃に一度会っただけでそんなに重い愛情を向けられて困惑しないだろうか?」


ヴィルはあの時からずっと私だけを想っていてくれていた。

でも、私にそんな魅力があったのだろうか…?

とはいえ、私もあの時からヴィルのことが好きだけれど…。


「いいえ、公爵閣下。私もヴィルヘルム様のことお名前も存じないのに心に留めておりましたので、彼の愛情が重いとは感じません。」

「そうか。それは良かった。」

「ふふ、エリザベートちゃんの歓迎パーティをしなくちゃ。」

「パーティですか!?」

「そうよ。婚約披露パーティは皇太子殿下たちの婚姻の後だからだいぶ先だけど近々、貴女をお披露目しなくちゃ!」

「いえ…あの、そこまでしていただくわけには…」

「エリザベート、ヴィルヘルムから話を聞いた思ったが、ヴィルヘルムの婚約者だと吹聴し、我が家に喧嘩を売っている輩がいるんだ。

だから、君のお披露目をしておくべきなんだ。」

「エリー、すまないがパーティは必須だよ。」

「分かりました。宜しくお願い致します。」

「では、明日早速マダムを呼んで衣装を沢山作らなくちゃね!そうでしょう?アーサー様?」


公爵夫人は公爵に問いかける。


「そうだな、キャロル。とりあえず、急ぎで3着頼んで、後はゆっくり作ってもらうのはどうだろう?」

「そうですね。お披露目パーティはヴィルヘルムとコーデを合わせてもらいましょう!」


夫人が盛り上がり、公爵はうんうんと頷いている。


「心配いらないって言っただろ?」

「ええ。とても嬉しいわ…。」


そんな穏やか?な時間を過ごしていると執事が公爵へ、耳打ちする。

すると公爵の表情が顰めていく。


「はあ…。応接室に通しておけ。

ヴィルヘルム、私とお前に客だ。キャロル、エリザベートと楽しく過ごしていてくれ?」

「えっ…ああ…。わかりましま。エリー、少し席を外すよ。母上、彼女をお願いします。」

「あら?またなの…?ふたりともごめんなさいね?

エリザベートちゃん、女ふたりで楽しくお話しましょう?」

「あ、はい、キャロル夫人。」

「あら、エリザベートちゃん、お義母様って呼んでいいのよ?」

「お?では、エリザベート。私のこともお義父様と呼んでくれるかい?」


ノリノリの公爵…義父と義母に私は「はい、お義父様、お義母様。」と笑顔を向け、それを確認してからヴィルと義父はサロンを出て行った。


………


「待たせたな、バーナ侯爵、それに侯爵令嬢。」


応接室にいたのはバーナ侯爵とその令嬢ローズだ。バーナ侯爵家は公爵夫人キャロルの生家(当主とは異母兄妹)だ。


「いえいえ、公爵閣下。お約束もなくすみません。

ヴィルヘルム様が帰って来たと聞いて、娘が挨拶をしたいと。」

「アーサー伯父様、ご機嫌よう。ヴィルヘルムお兄様、お帰りなさいませ。」


この侯爵令嬢はヴィルのことを昔から好きである。

ヴィル以外の全員が知っている。


「ああ、ローズ嬢。では、父上。挨拶は済んだので僕は失礼させてもらいますね?」

「ああ。戻りなさい。」

「えっ!?ヴィルヘルムお兄様!?」


ローズの声を無視してヴィルは応接室を出ていってしまった。

その後、侯爵がローズを連れてそそくさと帰ろうとしたところに義父が

「そうだ、バーナ侯。近々、息子の()()()()のためにパーティがあるんだ。招待させてくれ。」と侯爵を牽制したのは言うまでもない。

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