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「エリーの滞在先についてなのだけど…」


帝国に入って直ぐに私はヴィルから言われた。


「我が屋敷…ノルバンディス公爵邸はどうだろうか…?」

「あの、有り難いお話ではあるけど、いきなりわたくしが行ってはご迷惑に…」

「ならない!絶対に迷惑なんかにはならないから!

父上も母上も俺が昔から君だけなのを知っている。

連れて来なかったら逆に俺が怒られそう…」

「公爵閣下も公爵夫人もわたくしをどう思うか…

イメージと違ったら…!?」


ヴィルは私を優しく抱きしめる。


「そんなことにはならないよ。

父上や母上が何か言ってくるならば俺が君を護るから。

それに…」


ヴィルは私のに視線を合わす。


「城へ滞在してはサーラ様に独占されてしまうだろ…。」

「(そ、そんなしょんぼり言われたら断れるわけないわ!!)

ヴィル、お言葉に甘えてノルバンディス邸へ行ってもいいかしら?」

「もちろんだよ!」


しかし、この時の私は知らなかった。公爵邸に既に私の私室が用意され、ノルバンディス家全体が私を歓迎ムードであることを…。


………


帝国皇帝の謁見の間。玉座には皇帝、その隣にはアルベルトの母でもある皇妃が座っている。

私、ヴィル、サーラ、アルベルトが入る。

ヴィルとアルベルトは帰国の挨拶、サーラは花嫁修業を始めるための挨拶をして、私の番になった。


「帝国の太陽、皇帝陛下にご挨拶申し上げます。

王国のランドン侯爵家が第二子、エリザベート=ランドンと申します。

ご尊顔を拝謁できましたこと光栄に存じます。」

「君がヴィルヘルムやサーラが言っていた令嬢だね?」

「は…い。」


皇帝の御前ではあったが、まさか皇帝までもが自分を知っていることに驚き、返事が上手く出来ない。


「エリザベート嬢よ、気負う必要はない。

帝国は君を迎えることができることを心待ちにしていたのだからな。」

「えっ…?」

「さて、ヴィルヘルムよ、彼女の滞在先は城か?」

「いいえ、皇帝陛下。我がノルバンディス公爵邸にございます。」

「ふむ。それではサーラが悲しむな。」


皇帝はヴィルとサーラに交互に視線を向ける。


「皇帝陛下、わたくしは毎日でも彼女を城に呼びますから、滞在先は公爵邸でも大丈夫ですわ。」

「そうか。ではエリザベート嬢の滞在先は公爵邸ということで。諸々の手続きはヴィルヘルム本人がやればできるだろう。

エリザベート嬢よ、困ったことがあればサーラにでも儂にでも言ってくれ?」

「皇帝陛下、ありがとう存じます。

あのわたくしの滞在先の件ではなく、少しお伺いしたいことがあるのですが、宜しいですか?」


私は謁見の間に入ったときから気になっていたことを訊くことにした。


「申してみなさい。」

「不敬になってしまったら申し訳ないのですが…。

皇妃陛下、ご体調が優れないのではありませんか?」

「どうしてかしら…?」


皇妃は私の口から自身の名前が出てくるとは思っていなかったのだろう。少し懐疑的に返事をした。


「皇妃陛下はお顔の色が優れないのをメークでお隠しになり、時折小さくですが震えていらっしゃいました。ですから、そう思いました。」

「少し見ただけで解るのか?」


皇帝が驚き、ヴィルとアルベルトも驚いている。

サーラだけは何故かドヤ顔で「わたくしのリズは凄いのよ!」と言っているようだった。


「はい。わたくしは王国で多くの病気や怪我を看てきましたから。」

「凄いのね…。流石、サーラちゃんが認めた子だわ。

実は、わたくし一ヶ月前から頭痛が酷くて夜眠れない程なのよ…。」

「なるほど…。それはお辛いですね…。

あの、お赦しいただけるのであれば治癒魔法をかけても宜しいでしょうか?」

「帝国の治癒師でも一時的に痛みを和らげる位しかできなかったのよ?」

「恐らく、わたくしなら治すことが可能です。」

「彼女の腕は王国…いえ、大陸一だと思います。

皇妃陛下、魔法をかけていただいては如何でしょう?」


ヴィルが援護射撃をしてくれる。


「皇妃よ、エリザベートの治癒を受けてみてはどうだ?」

「陛下が仰るのなら。エリザベートちゃんお願いできる…?」

「はい。」


私は「失礼いたします。」と皇妃に近づき手を翳した。

すると皇妃が光に包まれる。

皇帝やアルベルトが「聖女の光だ…」と言っている気がするが、ここは聞こえなかったことにする。

数秒後に光が収まり、私は皇妃に「皇妃陛下、如何でしょうか?まだ痛みはありますか?」と問いかけた。


「あら…?凄いわ!全く痛みがなくなったわ!」

「よろしゅうございました。」

「エリザベートちゃん、ありがとう!これでゆっくり休めそうだわ!」

「激務ではあるかと存じますが、適度な休憩と適度な運動を心掛けていただけますか?でないと血の巡りが悪くなり身体に不調を来してしまいますから。」

「そうするわ。本当にありがとう。」


私の手を握り感謝の言葉を伝える皇妃。


「エリザベート嬢は本物の聖女だったんだね。」

「アルベルト殿下、聖女ではありませんと何度も…」

「君が母上に治癒魔法をかけている姿はとても美しかったよ?」

「そうでしょうか?」

「まあ、でも帝国では聖女認定はしないから安心してくれ。」

「それは、安心しました。」


その後も皇帝にも感謝を伝えられ、私は自身のできることをしたまでなのにな…と思ったが、感謝は有り難く受け取っておいた。

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