Ⅲ 独占欲強いですね?
リトリアの街は赤い美しい壁で囲まれていて、その門を出ると、郊外の農村が広がっている。
城壁に囲まれた都市には、必ずその都市に食料を供給する農村が周辺にある。それがこの国の一般的な風景だった。
わたしたちがホワイトハウンド――白いもふもふ魔獣を捕まえに行くのは、その農村よりさらに先。リトリア大森林だ。
どこまでも広がる広大な森は、農民にとっては、家畜を放牧する場所でもあり、貴重な木材を手に入れることができる場所でもある。
ただし、森林はリトリア辺境伯のもので、農村ごとに使用できる森林の範囲は限られている。
鹿や猪を狩猟する権利も、原則として貴族である辺境伯だけのものだ。
「でも、わたしたちは冒険者ギルドに所属しているから、例外なのよね?」
ソフィアお姉ちゃんがわたしに確認する。
「うん。だから、わたしたちはホワイトハウンドを捕まえても問題ないの。ギルドの特権のおかげだね」
わたしたちはリトリア辺境伯公認の冒険者ギルドのメンバーだ。ギルドを通して税金を収める代わりに、いろいろな特権がある。
ダンジョンで財宝を手に入れるのだって、ギルドのメンバーじゃないとできないけど、それだけじゃなくて、森林での狩りも認められている。
だから、ホワイトハウンドを仲間にすることもできるというわけで。
横からセレナも口を挟む。
「ダンジョンと違って、明るくていいですよね! 強い魔族もほとんどいないですし」
「もう少し涼しければ、最高だったんだけどね」
まだ春なのに、今日は夏日でそれなりに暑い。南方のリトリアは、王都よりも気候がかなり温暖だ。
わたしは前衛の魔法剣士だから、攻撃を受けても大丈夫なように装備もどうしても重たくなるし、暑くて困ってしまう。
お姉ちゃんは白魔道士だからわたしよりは軽装だけれど、白いローブはそれなりに分厚くて暑そうだ。
「たしかに……ちょっと暑いですね……」
セレナは短剣使いで一番、薄手の格好なのだけれど、それでも暑いらしい。
淡い青色のおしゃれな上着を、セレナは指で胸元を少し広げた。わたしはどきりとする。
「せ、セレナ……」
「? なんですか?」
「そ、その格好はちょっと……」
上着の胸元がかなりはだけていて、大胆な格好だ。胸の谷間まで見えている。というか、セレナは胸の谷間ができるぐらい胸が大きいのもちょっとショックだ(わたしはできない……)。
セレナはくすっと笑った。
「なにか問題がありますか?」
「さすがに、その、はしたないというか……」
「リディア先輩って真面目ですよね。貴族のお嬢様だから、当然でしょうけれど。大きな街の市民ではこれぐらいの露出は普通ですし、そもそも他に誰もいないからいいじゃないですか」
「わたしが気になるの!」
「照れてるリディア先輩も可愛いです!」
「からかわないでほしいな……」
そんなことを言い合っていたら、ソフィアお姉ちゃんがむうっと頬を膨らませていた。
「やっぱり、リディアって、セレナさんのことが気になるんだ……」
「え、えっと、そういうわけじゃなくて……」
セレナが面白そうににやにやとしている。
「ソフィア様も、リディア先輩の目を釘付けにするような大胆な格好をなさってはどうでしょうか?」
「わ、私が!?」
「はい。清楚な白魔道士の衣服もとても似合っていますが、ソフィア様ほどの美少女なら、踊り子風の胸と下半身を大胆に露出した格好をすれば、注目の的です! しかも、ソフィア様って、スタイルも抜群ですし――」
わたしがセレナの頭を軽くピシャリと叩いたので、セレナが言葉を止める。セレナはふふっと笑った。
「お、お姉ちゃんに変なことを吹き込まないでよ」
「えー、名案だと思ったのですが。リディア先輩も、ソフィア様の可愛らしい姿、見てみたくないですか?」
「それは……」
見たい、と言いかけて、思いとどまる。お姉ちゃんが横にいるのに、そんなこと言えるわけない。
でも、お姉ちゃんも顔を赤くして、「見たいの?」とわたしに聞く。
わたしは困ってしまう。本音を言えば、見たいけれど……!
「と、ともかく、お姉ちゃんが露出の多い格好をするなんて、ダメなんだから! 他の人に見せるなんて、絶対にダメ!」
セレナはくすくす笑っている。
ソフィアお姉ちゃんは、わたしとセレナを見比べ、そして照れたように目を伏せていた。
セレナはわたしの耳元でささやく。
「リディア先輩って独占欲強いですよね?」
顔を真赤にするわたしに、セレナはいたずらっぽく青い目を輝かせた。
更新再開します!
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