Ⅷ 抱きしめられる!?
お姉ちゃんは、今はわたしのことを一番大事と言ってくれる。
でも、それがいつまで続くかはわからない。お姉ちゃんは、いつかきっとわたし以外に大事な人を見つけてしまうかもしれない。
それでも、今はお姉ちゃんがわたしのことを必要としてくれている。
「お姉ちゃん……大好き!」
わたしがお姉ちゃんを抱きしめようとすると、ひょいとかわされてしまう。
お姉ちゃんは頬を赤くして、ジト目で睨む。
「だからダメだってば!」
「えー」
「残念そうな顔をしてもダメなんだから。は、恥ずかしいもの! それに……」
お姉ちゃんがちらりとセレナを見る。セレナは銀色の髪を指でかき上げ、ふふっと笑い、わたしを見つめる。
「私を放っておいて二人の世界に入らないでください。今度は私がヤキモチを焼いてしまいます」
「そうなの?」
「言ったでしょう。私はリディア先輩のことが大好きなんです。私のことなら抱きしめてもいいんですよ?」
「それは遠慮しておこうかな……」
わたしが好きなのは、ソフィアお姉ちゃんだし。
セレナも可愛いけれどね。
セレナはにやりと笑った。
「それなら、私から抱きしめちゃいます」
そう言って、セレナはわたしに抱きつこうとした。
わたしはとっさに避けようと思ったけど、失敗した。わたしは魔法が得意だけれど、身体能力はセレナの方が高いから……。
セレナが敵じゃなくてよかった。もしセレナにその気があれば、わたしを殺すことも無抵抗にしてしまうこともできたはずだ。
でも実際には、わたしはセレナに抱きすくめられただけだった。
「せ、セレナ……!」
「先輩の体、温かいです♪」
「は、恥ずかしいから……」
「先輩だって、ソフィア様に同じことをしようとしていたじゃないですか?」
「そ、そうだけど……」
わたしは身じろぎして逃げようとするけど、できなかった。年下のセレナに力で負けるなんて……。
セレナがわたしの耳元にふっと息を吹きかける。く、くすぐったい。
「リディア先輩、可愛い……」
「せ、セレナ……ど、どこ触ってるの……」
こ、殺されたりすることはなさそうだけど、このままだと別の意味で身の危険を感じる……!
そのとき、お姉ちゃんが割って入り、わたしたちを引き離した。
「り、リディアは私のものなんだから!」
「あら、ソフィア様。それなら、私みたいにリディア先輩を抱きしめればいいじゃないですか?」
からかうようにセレナが言う。
お姉ちゃんはびっくりした様子で固まった。
そこにセレナが追い打ちをかける。
「姉なら妹が甘えたいのを拒絶したりしませんよね?」
「で、でも……」
お姉ちゃんは、わたしをちらりと見た。
そして、お姉ちゃんは急に覚悟を決めたようにわたしをまっすぐに見つめた。
も、もしかして……今度は……お姉ちゃんに抱きしめられる!?





