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Ⅺ 秘密

 いろいろ筆記や実技の試験を受けた結果、わたしたちは赤銅の等級で冒険者ギルドに登録することになった。

 大雑把に言えば、下から二番目だ。


 駆け出しの冒険者としては、悪くない。


 けれど、お姉ちゃんはちょっとがっかりした様子だった。


「最初から白銀等級で登録の天才魔術師っていうふうになれるかもって期待したのに」


「お姉ちゃんって意外とミーハーだね?」


「わ、悪い?」


「ううん。わたしも『天才!』って褒められてみたいもの。これからそうなれるよ」


「……そうね。でも、あれだけ魔力がすごいって言われたら、期待しちゃった」


「今は、冒険者としての経験がないから、仕方ないよ」


 わたしは魔法剣士として戦ったことはあるけれど、そのほとんどは対人戦闘だ。冒険者として、ダンジョンを探索していたわけじゃない。


 お姉ちゃんは魔法の才能はすごいし、使える魔術のレベルも高いけれど、戦闘経験はほとんどない。


 二人とも冒険者としては素人だ。

 でも、それはこれから変えていける。


 わたしは微笑んだ。


「赤銅等級でも、新人冒険者としてはランクがかなり高いよ。それに、いきなりすごく高いランクに登録して、注目されるのも困るもの」


「私たちはお尋ね者だものね」


 よっぽどのことがなければ、リトリア辺境伯領まで王国の手は及ばないし、この町では王子の婚約者もフィロソフォス公爵家のこともほとんど誰も知らない。


 けれど、念のため、正体がバレそうになることは避けたほうがよいとは思う。

 フローラさんには、お姉ちゃんの魔力のことはギルド職員限りの秘密にしてもらった。


「でも、いつか天才姉妹って二人で呼ばれてみたいね」


「うん」


 お姉ちゃんは顔を赤くして、うなずいた。


 さて、と。

 窓の外の日は傾いていた。


 そろそろ夜ご飯の時間かな。

 ギルド併設の酒場でとってもいいんだけれど、それだと味気ない。


「お姉ちゃん。少し、街の外を散歩してみない?」


「散歩?」


「そうそう。美味しいご飯のお店もあるかもしれないし」


「たしかに、それは良いかも……」


 お姉ちゃんが顔を輝かせる。宿と職の心配もないし、今夜ぐらい、ご馳走を食べても平気だ。

 

 今は、とても平和だ。

 こんな日々が続けばいいのだけれど。

 

 わたしは自分の手を見つめる。

 わたしにはお姉ちゃんに秘密にしていることがある。


 ずっと、わたしが暗殺者で、影からお姉ちゃんを守ってきたことをまだ話せていない。


 もし、わたしが何人も、何十人もの人を殺してきたと知ったら、お姉ちゃんはどう思うだろう?

 道中でも、お姉ちゃんのために三人の男を殺した。お姉ちゃんは感謝してくれたし、わたしがいなければ死んでいたとも言ってくれた。


 でも、内心では、わたしが人を殺したことをどう思っているんだろう? 


 そして、その答えをわたしはすぐに知ることになった。

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