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4.母の心

妻というものは、夫の家を守るために存在しています。常に家を清潔に保ち、夫の機嫌を損ねない最高の空間を作らなければいけません。食事なんてその基本中の基本。常に最高の食事を作り一家の主を支えるのは養っていただいている身として当然の務めなのです。

前日の残り物やスーパーの惣菜などは論外です。あんな物を食卓に出してしまった日には、きっと罰が下されることでしょう。あんな物を食している人たちの気が知れないと言ったあなたは正しいと常々感じております。


だからそんな冷たい目であの子を(私を)見ないでください。


新婚の頃はそれがわからず、あなたによく恥をかかせてしまっていました。今思い出すと至らない点ばかりが浮かんできて悔しくて悔しくて仕方がありません。あの頃はなんと出来損ないだったことでしょう。

まぁでも、その積み重ねで今の私があるのですから。あなたを立てられる『いい妻』になれたのだから感謝しかありません。


だからもっと私(あの子)のことを見てください


あなたの幸福のために全て尽くすのが私の使命です。あの子が優秀な子になり、大企業に勤めるなり医者になりになってさえくれたら。世間から見れば『立派な息子』にさえなればあなたの人生にも箔が付くはずです。あなたの教育さえあれば、あの子は成し遂げるはずです。

でも現実はそう上手くは行かないものですね。

あの子が小テストですら満点をとれないほど出来損ないなのは全て私に責任があります。

あの子をちゃんと『立派な息子』にしてみせます。あなたに恥をかかせないようにしてみせます。


だから私のことを見てください


近所の下民たちから羨望と嫉妬を仰げるような、上のランクの『理想的な家庭』を築き上げることを常に心掛けてきていました。あの子にも『友人にしてもいい人物は選びなさい』『今の学校に通う下民共とは言葉1つ交わしてはいけない』と言いつけていますのでご安心ください。


だから私だけを見てください


あなたが複数の女性と関係を持っている事は知っています。お相手の方々から連絡がありましたから・・・。

『早く離婚しろ』

『いつまであの人を縛っておくつもりだ』

『私の方が相応しい』

『子供1人ろくに育てられないおばさんは消えろ』

手紙、FAX、電話など様々な方法で言われました。

少し調べただけで沢山の証拠が舞い込んでまいりました。探偵は『隠すつもりがないとしか思えない』と絶句しておりました。お相手は20代だったり40代だったりと幅広かったのは少し驚きました。しかし元を辿れば私の不甲斐なさがあなたをそうさせているのですから全て私の責任ですね。申し訳ございません。


だからどうかお願いします。どうか私を捨てないで下さい。


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