3話。私の知る話とは違う。ーーだからと言って無理やりフラグを立てるな!・2
「実は、お姉様が教えて下さった通りで、お父様はご機嫌だったのですがお母様が」
アンネリカが困ったように話し出す。母? 悲劇のヒロイン根性の?
「お母様が?」
「その。お姉様が子爵家を出てしまってからお母様はお父様にアレコレ言っていたのですが」
ふんふん。まぁそうだろうな、とは思っていたのでその辺は予想通り。それで?
「お父様は逆らうなら離婚だ、とお母様を脅されて。お母様はそれでいい、と言ったのに、お母様がそう言ったら世間がどうこう……とお父様が離婚の手続きを拒否されたのです」
でしょうね、としか。
あの男、世間体を気にするから。というか世間体を気にするならアンネリカの母に手を出すべきじゃないだろうに。アホなのかな。愛人作っておいて正妻にアレコレ言われて腹立てて離婚だって脅したらオッケー出された、とか日本でも居るなぁそんな奴。でも引くに引けなくなって離婚は選ばない辺り、世間体もだけど子爵家当主の資格を失いたくないってことか。
貴族の離婚って平民と違って離婚理由を精査されるんだよなぁ。この国は子が出来ないという理由で愛人を持つのは認められているけど子が出来たなら愛人とは縁を切ることになってる。……法律で。
そして夫婦の間に子が居るのなら、愛人は持てない。という法律にもなってる。……尤も表向きで。
実際には夫婦に子が居ても愛人を持っている貴族って多いけど。でもその場合は、片方だけが愛人を持つというのは狭量ということを示すので夫に愛人が居るのなら妻にも愛人を持たせてやる、という暗黙の了解がある。逆も然り。
そして互いに愛人が居ると告知しておく。これも暗黙の了解だ。
もちろん、妻や夫に愛人が居ても自分は持たないって伴侶も居る。それは当人の自由。尚、互いに愛人を持つ場合の費用はその家の共同費用となる。家族みたいなものだから。
例えば元の我が家なら、父が当主で父の血筋が守って来た子爵家。そこから父の愛人……つまりアンネリカの母とアンネリカ自身の費用は子爵家持ち。そして母が愛人を持ったとしたのなら、その愛人の費用も共同費用ということで子爵家持ち、ということ。互いに愛人を持つことに納得しているのだから。
つまり母が愛人を持ったら子爵家でその費用を持つ。母が愛人を持つ気があるかどうかは別だが、暗黙の了解なので母が愛人を持つことを父は反対出来ないし、阻止も出来ない。母の意思一つというわけだ。
まぁさておき。
思考を戻して父が逆ギレして離婚だって言ったことに母が了承して、父が離婚手続きをしていた場合。
その離婚理由が愛人を持っていたから、という内容だった場合、全面的に父の非となる。
先ず、私という子が生まれていたので愛人を持つ理由が無かったこと。それでも持ったのに告知しなかったこと。つまり母の同意無しということで、いくら自分の家のお金とはいえ、家族と見做した費用で愛人と子……この場合アンネリカ……に支払い続けていたことは、父の非であることから離婚手続き完了と同時に母に慰謝料を支払うことになる。
その場合、子爵家の資産の半分が支払われることになり、これは国が動く。つまりまぁ女王陛下の臣下に当たる方が直々にこの離婚に絡むというわけだ。
国に目を付けられたら仮令離婚と言えど父に非がある以上は、子爵家当主として真っ当に働いているのかと疑われるもんねぇ。
……ああ、そこに気づいたから離婚手続きをしたくなくて世間体が〜とか言い出したわけか。
疑いが晴れるまで調べられるわけだから、痛くもない腹を探られるのは誰であっても嫌だろうけど、はてさて父は痛くもない腹、なのかどうか……。まぁそこまでは私も知らん。
此処まで色々と考えた私はアンネリカに尋ねる。
「つまり、元両親の仲が悪いから何とかして欲しい、と話に来た……?」
これに答えたのは同じく顔を曇らせていたハレンズの方だった。
「いや。離婚したい、離婚はしない、の繰り返しで三ヶ月が過ぎた辺りから義母殿が寝付くようになって。義姉殿に会いたいと溢すようになった、と執事から聞いたんだ。それで会いに来られないかと思い、考えていたら、公爵家の執事という方が今日、この学園に来れば義姉殿に会えると仰って。それで此処に来た」
ハレンズとはマトモに話すことが無いまま私はバレース家を出て来たから、丁寧な言葉遣いで話すハレンズに居心地が少し悪くなった。……マンガのハレンズって言葉遣いがもっと砕けていたからなぁ。
とはいえ、訪ねてきた理由は分かった。
あと、公爵家の執事って何番目の人だろうなぁとは思ったけれど、やっぱり隣でずっと面白そうに話を聞いてるお嬢様ことセレーネ様の差し金か、と溜め息を吐き出した。
お読み頂きまして、ありがとうございました。
なんか早く更新出来ました。
次話更新の予告は……多分月末予定。