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2話。始まった学園生活。ーー此処は現実の世界・1

 あー、来ちゃったなぁ、学園。セレーネお嬢様の後に続いて学園の門を潜り抜けると同時に感慨深いというよりは、面倒くさいなぁって気持ちで校舎を見た。まぁ私は既にセレーネお嬢様……つまり、人を玩具にすることが楽しい公爵令嬢様の侍女なのでコミックとは全く違う立場なんだけど。セレーネお嬢様に付いているのは確かだけど取り巻き枠じゃなくて専属侍女だし、セレーネお嬢様はコミックの内容を知っているわけだし。抑々。


「アンネリカもハレンズも居ないしねぇ」


 アンネリカは私の一歳下。ハレンズは私と同い年。でも学園は年齢が厳密に決まっているわけじゃなくて学力が達したら子息・令嬢は入学出来るよってだけ。セレーネお嬢様は学力だけならもっと前に達していたけど、私の記憶にあるコミックの年齢が十五歳だったから、そこまで入学を待ってたんだよね。……アレ? 十五歳だったと思うけど違ったっけ? ……まぁいっか。それで。余程の事情が無い限りは基本的に貴族の家の子は入学するけど、私みたいに家から出ているとかお金が無いとかって事情のある子は除外される。

 で。

 アンネリカとハレンズは、元々頭の良い子達だけど、それでも貴族の学園生活が送れる程の基礎学力がちょっと足りなくて。まぁつまり未だに子爵家でお勉強してるってやつ。多分来年には入学出来るんじゃないかなぁ。


 それに。あのコミックと現実で物凄く大きな差がある。


 それを踏まえるとやっぱり此処は現実の世界。コミックじゃないよねって納得する。いくら世界観が似ていても名前は全く同じだし、セレーネお嬢様も私もコミックのデザインそのままのキャラ顔でも。

 コミックとは別。よく似た別世界だと思う。

 なぁんて考えながらお嬢様が入学式に出ている間は侍女の控え室でおとなしく待つ。此処には他の子息・令嬢の侍女や侍従がいるので、こういう時に情報交換ってやつをするのだ。


「あの、セレーネ公女様の侍女さんよね?」


 私に声をかけて来た侍女を見れば、何人もの侍女や侍従が興味津々とばかりに此方を見ている。


「はい。セレーネお嬢様の専属侍女を務めております」


 敢えて名乗ることはしない。だって名前を聞くと私が元子爵令嬢だってバレるもん。まぁ、今は前髪で額の傷は見え難いけど、隠していないから何かの拍子に額が見えたら傷痕は分かる。傷痕を見ればバレるかもしれないけど、わざわざ名乗る気はしない。


「はじめまして。あの、少々伺いたいことがありまして」


 私がお嬢様付きだと肯定すれば、声をかけてきた侍女だけでなく皆が私を取り囲む。

 では、何か、と言えば。


 お嬢様は公爵令嬢。つまり社交界を牽引するお方。まだ夜会デビューはしてないけど、既にお茶会であちこちの家から招待状が舞い込み、断るので一苦労という人気の方だ。


 原作、つまりコミックではお嬢様は人を玩具にすることで退屈を紛らわすという性格をしている、と描かれてる。コレに関しては否定しない。お嬢様はそういう性質があるから。とはいえ、誰彼構わずということもない。玩具にする相手はきちんと選んでいる。結果。現状、お嬢様の存在を認識している多くの方達のお嬢様像は。


「セレーネ公女様は、現在お気に入りのお茶やお菓子はございます?」


「セレーネ公女様は、現在どのようなドレスがお気に入りですか? また装飾品は?」


 といった具合に、所謂流行の発信者、ファッションリーダー的な捉えられ方をしている。それを私に尋ねて来るのは、お嬢様に直接尋ねるなんて畏れ多いと考えられているから。まぁそうだよね。貴族令嬢と使用人だもんね。

 そんなわけで質問に色々と答えつつ、紛れ込む質問の中の悪意を躱して交流する。質問の中の悪意とは、簡単に言えば誘導尋問的な感じ。セレーネ公女様は〇〇というドレスを最近お好みですけど✖︎✖︎というドレスは好まないのですか? っていう感じだったり、〇〇領で産出された〇〇宝石をよく付けられてますが✖︎✖︎領の✖︎✖︎宝石はあまりお好きじゃないのですか? っていう感じだったり。もっと深く〇〇領の領主とは付き合いが深いからそちらを好むのですか? なんて突っ込む質問もあるけど。


 私は、〇〇ドレスも✖︎✖︎ドレスも好きですが、新しいデザインの〇〇ドレス、お嬢様のお好きなデザイナーさんがデザインしたからです。✖︎✖︎の新しいドレスのデザインが好みなら✖︎✖︎を着ますよ、みたいな感じで流します。お嬢様は基本的に自分が懇意にしているデザイナーに新作ドレスを頼みますけど、そのデザイナーさんが〇〇領の生地を使用しませんか? とか✖︎✖︎領の生地を使用しませんか? と打診して、それで新作ドレスをお願いしてるわけですが、偶に〇〇領の生地の方が多く使用しただけで、〇〇ドレスが好み、とか見られてしまうわけです。ここでうっかり、〇〇ドレスが好みだと肯定すれば、✖︎✖︎ドレスはお嬢様のお眼鏡には適わなかった……と見做されて✖︎✖︎領の生地が廃れてしまうこともあるわけで。

 そんな迂闊な発言は出来ないのでデザイナーさんから打診された新作生地で作った〇〇領のドレスが続いたんですよ、と躱わすわけです。だから✖︎✖︎領の生地を使ったドレスをお嬢様に着て欲しいのなら、デザイナーさんに売り込んでね、と言外に告げているんですね。


 宝石だのお茶の銘柄だの有名店のお菓子だの……なんだって下手なことを言って相手に不利益を生むようなことは言えません。お嬢様の言葉一つで店一つ潰れる。それが当たり前なくらい、お嬢様の権力は強い。だから専属侍女の私も言葉は慎重に選ばないと、私の言葉はお嬢様の言葉だと受け取られかねないのです。……怖っ。つくづく貴族怖っ。


 やっぱり、あれよ、前世の記憶がある私は完全に庶民だわ。平民の感覚だからお貴族様のこういうの、ホント怖くて仕方ない。……あの家から逃げたから貴族社会のこういうのからも逃げられて良かった!


 まぁ……貴族の責務を果たすことすら逃げたからね。それをアンネリカに押し付けたのは悪いなって思うよ。ハレンズが居ても、だから大丈夫、なんて勝手なことは言えない。


 だけどねぇ。


 父親は傷痕のある私が憎い。

 母親は傷痕のある私が嫌い。

 そんな両親の元に居て、貴族の責務を果たすことを課してさぁ……私、幸せになれたのかなって自分で思うんだよね。

 これがさ、両親が私を憐れむのは兎も角として、それでも慈しむとか愛してくれるとか、そうじゃなくてもせめて、普通に接してくれていたなら。


 私も逃げなかったと思う。


 でも現実は違う。二人共、“傷痕のある私は貴族令嬢の価値がない”として見ていて。“マルティナ”って一人の人間のことは見てないんだもん。やってられないよね。


 ……あー、こんなこと考えている場合じゃない。今の私はセレーネお嬢様の専属侍女だ。しっかりしろ!

お読み頂きまして、ありがとうございました。


【弱者を泣かせる者はお仕置きです】とリンクしてますので、こちらはあちらの裏側的な感じで二話目を執筆してますが、あちらを読まなくても大丈夫なような形に執筆してます。

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