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3話。私の知る話とは違う。ーーだからと言って無理やりフラグを立てるな!・5

 取り敢えず、学園の門番が二人を迎えに来た。

 食堂の片隅で一人ひっそりと控えていた辺り、話し合いがいつ終わるか分からないから待っていたのだろうけど。……公爵家の権力って怖っ。

 門番だよ? 二人居るうちの片方が門から離れている時点で仕事放棄しているようなものだよ? でもそれが受け入れられているのって完全に公爵家の権力だよね? それとも権威の方? どっちにしても怖いから!

 取り敢えず二人が去ったのを見届けた直後。


「えー、つまらないですわぁ。シュラバとやらは起こしませんの?」


 お嬢様が宣いやがった。


「あるわけないですよね」


「あら、ティナの前世の記憶とやらにある物語では、あなたはあのアンネリカという少女を甚振るのでしょう?」


「それ、お嬢様が意地悪をしないと起こらないやつですね。私、お嬢様の意地悪に便乗するちゃっかり令嬢なので」


「うふふ。そのちゃっかり令嬢って、何回聞いても楽しい表現ですわね。便乗するとは聞きますが、ちゃっかり、なんて聞かないですもの。でもその表現は楽しくてよ」


 お気に召したようで何よりです。

 でも刺さるとは思えなくても釘は必要です。


「お気に召したのは構いませんが、お嬢様が何の手出しもしていないのに私が何かをするわけがないですからね。でもお嬢様、わざと何かしなくてよいので。あの家のことはあの家が解決する必要がありますからね」


 お嬢様は、のれんに腕押しとでも言うように、はいはいと適当に頷きます。きっと、あの二人が相談してきた母のことなど、お嬢様はご存知だったのだろう。


「暇つぶしに引っ掻き回そうとしないでください」


「あら、バレちゃった。でもね、ちょっと放置しておけなかったのよね。あなたの生家のことだし」


 お嬢様が不意に真面目な声で忠告をして来たのでハッとした。


「もしや女王陛下から何か……?」


「ええ。リーネがデルタ子爵家のことをご下問するよう周囲が動き出したようよ」


 女王陛下にご下問するように周囲が動き出した。それはつまり、女王陛下が動くようなことをあの父がやらかした、ということ……?

 現在の女王陛下だけでなく、通常、国王陛下から直々に何かを問われるというのは、その貴族家に問われるような罪がある、ということ。或いは、国王陛下が動かないとならないような高位貴族だということ。

 後者の場合は、簡単に言えば貴族制度の最高位である公爵位の家に何かあったら、それを問えるのは王家……もっと言えば国王陛下くらいなものだからだけど。

 前者の場合は、物凄く悪いことを言うなら貴族当主が人を傷つけてしまったとか、国外に国内の情報を流したとか、横領をしていたとか、罪が大きい問題だ。

 これが当主ではなく身内だった場合は、大抵の貴族家は寄親と寄子という関係の相手がいるため、先ずは寄親から問われることになる。横領だろうと傷害だろうと、当主ではない時点で寄親が先ずは動くものだ。

 デルタ子爵家の場合、寄親はお嬢様の公爵家になるわけで、例えば母やアンネリカが何かやらかした場合は、お嬢様の父である公爵様が、父にやらかしについて質問する。

 これは寄親貴族が寄子貴族のやらかしを何も知らなかった……なんて言わせないようにするため。知らないで済むか! というヤツなので、寄親貴族は有能であればあるほど、寄子貴族に抜き打ち調査を入れていく。暴かれるような罪はないか、未然に防げる災いはないか、と。

 もちろん公爵様はそうしていらっしゃるはずなので、身内が何かやらかしたわけじゃない。父である子爵についても前もって何かやらかしていれば、公爵様は承知しているだろう。その場合何か指導しているはずだ。

 同時に貴族家当主のやらかしは、王家に報告する義務がある。その報告によって国王陛下直々のご下問に至るわけだけど。

 女王陛下に問うように周りが動いている、という事は、父のやらかしは公爵様一人ではなく複数の貴族家が承知しているという事になる。

 周りが動くというのは、他家の当主達が女王陛下に、デルタ子爵当主を問い詰めるよう、進言していることだと言える。

 ……何をどうすれば、他家の当主が進言するような事態になるというのだ、あの男。

 そんなのと血の繋がりがあることが既に嫌なんだけど。

お読み頂きまして、ありがとうございました。

次話は来月の予定。ゴールデンウィーク中にストックが作れたら早めに更新します。

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