トラブルの始まり
それから数日何事もなく日々が過ぎていく。
あの授業の後は、少し妬みの視線を向けられていたが気にするほどではない。
色々と訊きに来る者もいるし目立ってはいるが、面倒なことにはなっていない。
セレン先生にも先天的なスキルだと説明して納得してもらった。
それには父さんからの遺伝ということも大きいのだろう。
父さんの魔法が凄いのは知っていたが、こんなにも有名人だとは知らなくて驚いた。
その時先生にエルフなのかと尋ねたら父さんに聞いたのかと返された。
二人はどうやら知り合いの様だ。
そうして先生がエルフなのかと訊かれうかつな質問だとそこで気が付く。
いったいどうしたものかと考えて一つのことを思い出す。
それは新たなスキルだ。
あの授業の後すぐに新たにスキルを所得していた。
所得したスキルは<看破の魔眼>。
これにはツッコんでしまった。
先生の魔眼を見て俺も欲しいなと【創造神】に依頼したら、まさかの違う魔眼。
最初、スキルが増えてると分かったとき<魔力の魔眼>かと思ったのだが違ったのだ。
何か上げて落とされた気分になった。
そしてその<看破の魔眼>だがあらゆる幻影を見抜くというもの。
先生がエルフだと知ったとき、エルフの姿見たいと思ったのに反応してできたのだろう。
これはこれで嬉しいので<看破の魔眼>を使って先生を見たのだが、何も変わらなかった。
一瞬先生は本当にエルフなのかと疑ったが、よく考えると先生が幻影で見せているのは【欺く者】の効果。つまり称号の効果。
<看破の魔眼>はスキルなのでそのせいで見抜けなかったのだろう。
本にも称号は鑑定のスキルでは見れないと書いていたし、間違いないと思う。
つまりは<看破の魔眼>は完全に使えないのだ。
いや、スキルや魔法などによる幻影なら見抜けるだろうけど、先生には効果だないし、そんな気分がするというだけだが。
話を戻して、何故先生がエルフだと分かったのかの問いに<看破の魔眼>があると説明した。
効果を説明して納得してもらえた。
本当は<看破の魔眼>では見抜けないが、先生は気づかなかった。
自分がエルフだと見抜かれたことへの動揺もあるのだろう。
誰にも言うなと強く言われたが。
そんな感じで本当に平和な日々が数日続いている。
もっと妬みなどを向けられて理不尽な行為をされるかと思っていたが考えすぎだった。
自意識過剰なのかな?
これからの学園生活もこんな風に平和に続いて行けばいいな。
こんなことを考えながら立ち上がる。
今はトイレの個室だ。
トイレの個室って色々と考えてしまうよな。
立ち上がった直後、上から水が降ってきた。
「冷たっ!?」
なんだ?
何故いきなり水が降ってくるんだ?
意味が分からず少し呆けていると扉の向こうから男の声が聞こえてきた。
「ちょうしに乗ってんじゃねえぞ」
「痛っ」
そして今度はバケツが降ってくる。
それが見事に脳天に直撃し頭を押さえる。
…‥。
もしかして、イジメ?
さっき平和な日々が続けていいとか言ったからか?
今思い返してみれば、完全にフラグだ。
自分から平和な日々を壊してくれと言っているものだった。
それにしてもフラグ回収が早すぎる。
しかもトイレの個室で水をかけるって、イジメの定番だな。
15歳はこの世界だと成人年齢なのに子供っぽすぎる。
いや、日本でも会社でのいじめもあると聞くし、年齢は関係ないのか?
そんな風に他人事に考えて個室から出る。
持っていたハンカチで顔などを拭くが髪はびちょびちょだ。
制服は少し水を弾いている。
日本のものよりいい生地だな。
そんな恰好で教室に戻る。
びちょびちょの姿を見たアイリが声をかけてきた。
「お兄ちゃん!どうしたのそれ!」
「いやー。トイレで雨に打たれてさー」
笑いながら冗談めかして言う。
「サクラ、それって…‥」
カインが暗い顔になった。
心配してくれているみたいだ。
「うん。分かってるよ。
だけど気にすんな。先生に相談するから」
こういう時はそうするのが一番いいはず。
イジメている側からしたら誰にも言わずに一人で抱え込んでるやつの方がいいだろうからな。
正直、子供っぽいことするなと、これくらいなら割とどうでもいいのだが、増長されると面倒だ。
イジメ側の嫌がることをしておこう。
授業が始まって先生が入ってきてまず俺にどうして濡れているのかと聞かれたので後で話すと返し、授業が終わるのを待った。
「と、言うことです」
授業が終わり場所を変えて先生に説明する。
「はぁ、また出たか」
「また?」
「いや、すまない。実力に嫉妬してこういう輩も出て来るんだ。
私にとっては、面倒なことの一つでもお前にとっては大ごとだったな。すまない」
軽く頭を下げる先生。
「いや、別にいいですけど。
俺もそこまで気にしてるわけじゃないし」
「そうか。
周りからイジメられて孤立して、辞めていくものもいるからな」
そんな奴もいるのか。
「実力があるものは、それを伸ばしてほしいからな。辞めてほしくない」
少し悲しげな眼をして言う先生。
過去にそういうことがあったのだろう。
先生は教師として、とてもいい教師だな。
「だから、また相談しろ。一人で抱え込むことはない。
クラスから孤立しても私が助けてやろう」
先生カッコいい。
でも俺は大丈夫だ。
「俺は別に大丈夫ですよ。アイリが居るんで」
俺が他人からどう思われようともアイリはずっとそばにいてくれる。
そう確信している。
それにアイリが居れば十分だ。
「…‥シスコンは無敵か?」
呆れた目を向けてくる先生にとりあえず今後の対策について色々と訊いた。




