無詠唱魔法
「わざと、じゃないよな?」
まさかバレるとは思わなかった。
だが確信はなく疑っているだけの様。
ここはとぼける。
「そうか…‥もう一度やってみてくれ」
先ほどと同じように詠唱に魔力を乗せずに魔法を使う。
もちろん発動しない。
「…‥…‥」
何故か無言で見てくるセレン先生。
「もう一度」
完全に疑われている。
どうしたものか。
構築をもっと雑にしてみるか?
構築をさっきより雑にし、詠唱は先ほどと同じように魔力を乗せずに魔法を使用。
「…‥ふざけているのか?」
…‥。
これは完全にバレてるな。
さて、どう言い訳しよう。
「…‥本気でやれ」
すこし言葉に怒気を感じる。
だが本気でやるのはまずい。
威力とかは置いといてもやばいのだ。
「先生。お兄ちゃんが本気でやると危ないかも!」
困っていた俺を見てアイリがフォローを入れてくれる。
「私が言っているのは魔法の発動速度だ。
威力はあの的に当たる程度でいい」
アイリのフォローの言葉にそう返す先生。
うん。それは分かってる。
もちろんアイリも。
だけど発動速度だけでも本気でやるとまずい。
本気でやれば構築も詠唱も必要なくなるのだから。
「…‥お兄ちゃん、いいんじゃない?
お父さんからの才能ってことで」
アイリが小さい声で話しかけてくる。
確かにアイリもそれだが。
「生まれつきのスキルってことにしたらいいよ。
それに、私もカッコいいお兄ちゃん見たいし!」
…‥。
アイリが言うなら仕方無いな。
「…‥悪目立ちしたくないって言ってたのに…‥やっぱりシスコン」
俺の意思を感じ取ったフローラが呟く。
いつも言われてることなのでスルーしておく。
「わかりました。本気でやります」
そう宣言してから魔法を放ったのだが、一気に静かになる。
そしてしばらくしてからガヤガヤと騒ぎだすクラスメイト達。
「…‥…‥」
先生はこちら無言で見ているだけ。
目は白黒としているが。
「サ、サクラ!?
今のって!?無詠唱!?」
目を見開きながら訊いてくるカイン。
それに頷いて返す。
本来魔法は必ず詠唱が必要だ。
しかし俺は<無詠唱>のスキルがあるのでその必要がない。
「…‥今、構築おかしくなかったか」
誰に言うでもなく一人呟く先生。
皆は俺が無詠唱で魔法を使ったことだけに驚いているようだが、やはり先生は気づいたようだ。
先生が驚いているのは、スキル<術式保存>の効果。
<術式保存>は一度構築した術式をそのまま保存しておける。その名の通り。
そのため俺は構築と言う作業が必要なくなるのだ。
これら二つのスキルにより、実質俺は魔法を使おうと思えば瞬時に発動させることが出来る。
面倒な構築、詠唱が省略されるからな。
ゲームで長いコマンドを一つのボタンだけで技を放っているような感覚だ。
チートにもほどがある。
それが先生の目にはおかしく見えたのだろう。
「サクラさんの魔法っていつみても、意味分からないよね」
「お兄ちゃんは規格外だからね」
呆れるフローラと当たり前だという顔をしたアイリが話している。
「そ、そうか…‥無詠唱の魔法が使えたのだな。
皆授業に集中しろ!」
はっ、とした先生が騒ぐ皆に授業を再開させる。
皆も先生の言葉を聞いてこちらをチラチラと見ながらも自分の練習に再開した。
「訊きたいことは色々とあるが、今は授業中だし後にしよう」
そう言って先生は他の生徒の所に行ってしまった。
訊かれたらスキルと答えよう。
実際そうだし。
生まれつきではないが生まれつきのスキルだと言えば納得してくれるだろう。
一応、父さんは凄い魔法使いだし。
「なぁ、サクラ。俺に魔法、教えてくれよ。
正直、お前の才能に嫉妬する気持ちはあるが、俺はもっと魔法を学びたいからな」
笑顔で話すカイン。
その笑顔にはどこか悲しさも感じる。
なんか申し訳ない。
本当は俺に魔法の才能はない。
全てチートのお陰だ。
だが他人から見れば俺に親譲りの才能がある様に見えるのだろう。
そんな奴に嫉妬を抱いても仕方ない。
その憎しみで理不尽なことを言うやつもいる。
しかしカインはそんなことを言ってこなかった。
嫉妬の気持ちも本人の言う通りあるのだろう。
それでも言ってこなかった。
言わなくとも離れていくこともある。
それもしな。
ただ自分が魔法が学びたいからと言う理由で。
もしかしたら今後、俺に対する憎しにが募ってぶつけて来るかもしれないが、少なくとも今はない。
今はこうして話しかけてきてくれる。
それだけでも、いいやつだと思う。
こいつとはずっと友達でいたいな。




