マリー ⑤
「くそっ」
イライラとしながらタロウが二組の固まっているところに戻ってくる。
あのカインとかいう男、強かったわね。
<剣術>のスキルもうまく使えてたし、むかつくタロウのことをボコボコにしてくれたのはスカッとしたわ。
「おいマリー!絶対にボコボコにしろよ!」
いらだちをぶつけるように命令してくるタロウ。
何回も言われなくても分かってるわよ。
だから八つ当たりもしないでほしいわね。
スキルを抜きにしてもカインの方が勝っていたように見えたし、普段から真面目に努力していないから負けたのよ。
自信だけ過剰になってね。
私もそういう所がある蛙もしれないから気を付けないといけないわね。
サクラは魔法チートだし、油断しているとこっちが負けてしまう。
二戦目は予定通りこっちからはエリス。
そして一組からはアイリだった。
その二試合目本当に凄かった。
二人ともレベルの高い勝負で、最後アイリが負けたかと思たけど、それもブラフでアイリが勝利した。
魔力量は【シスコンの加護】とかいうふざけた名前の称号で多いのは分かる。
でもそれにしても、あの制度は相当なものだと思う。
コントロールは魔力量とは直接的には関わらないからそうとうな努力をしたのね。
これはサクラも手ごわいかもしれない。
<無詠唱><術式保存>。この二つだけでも相当なチートだと思う。
その上【シスコン】による大幅な魔力量上昇に【魔導士】による魔法制御。
さっきのアイリ以上の魔法が飛んできてもおかしくない。
そう思っていたのだけど、<未来視の魔眼>に移るのは単純な魔法ばかり。
さっきのアイリみたいに広範囲に影響する魔法を使われたらどうしようかと考えていたのだけど、それを使う素振りもない。
もしかして、魔法の構築が苦手?
いやでも、【魔導士】の称号のお陰でそう言ったコントロールはやりやすいはず。
……まさかそれを入れて、やっと今の魔法が使えるとか?
<術式保存>のスキルがなかったら、本当はこいつ、ものすごく弱いんじゃ……。
何と言うか、これだけのチート能力を持っているのに、完全に宝の持ち腐れね。
これなら勝てるかもしれない。
もし何かあったとしても<未来視の魔眼>で予測できる。
広範囲攻撃以外なら吸でて躱すことが出来る。
「ロックショット!」
拳大ほどの石をサクラに向けて放つ。
それをサクラは簡単に躱した。
魔法の制度は高くなくても、やっぱり身体能力も規格外みたいね。
「ウォーターボール!」
今度はサクラが水の玉を飛ばしてくる。
それを<未来視の魔眼>で察知し躱す。
こんな状態が続くと思った。
でも私はサクラがどこに避けるのかも見ることが出来る。
そこを狙えば当たる。
だけど私が見た未来。
それはこちらへと飛んでくる大量の水の塊。
少し驚きながらも魔法を詠唱する。
「ロックウォール」
私の前に土の壁が出てくる。
それによりサクラの放った魔法が私に当たることはなかった。
でも今のは何なの?
「十連」と言っていたけど、もしかして高速で同じ魔法を連続で放った?
もしそうなら、あいつの魔力が続く限り、際限なく打てるのでは?
そんなことを考えている間にも私は未来を見る。
さっきよりも多くの攻撃が飛んでくると思ったが、そうではなく、今度は氷の槍が飛んできた。
その攻撃にも先ほどと同じように、土の壁で防ぐ。
と、そう思ったのだけど。
「ッ!?ロックウォール」
土の壁が壊されることを察しその場から飛びのくことで何とか回避した。
今のは本当に危なかったわね。
でも、さっき予想した、もし数が増やせるとしたら……。
私の嫌な予想は当たり数を増した氷の槍が飛んでくる。
それは三十になり、そして五十になって私は躱しきれないことを察した。
土の壁が壊され、目の前に氷の槍が飛んでくる。
そんな状況に思わず【暴食神】の力を使ってしまった。
「なっ!?」
サクラは驚いたようにこちらを見ている。
恐らくは当たったと確信したのね。
でも、やってしまった。
本当は【暴食神】の力は使うつもりはなかった。
この力は秘密にしておきたかったから。
そう思っていると再び大量の氷の槍が飛んでくる。
それを土の壁である程度勢いを防いでから【暴食神】で喰らう。
土煙でサクラ以外には見えていないようだし、まあいいわよね。
どうせあいつは知っているのだし。
だけど、このままだと負けるのは私の方だ。
あいつの真っ力のそこはしれないし、こっちは<未来視の魔眼>に大量に魔力を使うので、魔力切れに先になるのは私。
「まさか、ここまでとは思わなかったわ。
このままだと私が先に魔力切れで負ける。だから降参するわ」
そう宣言した。
「いいのか?」
私の降参の宣言にセレン先生が確認を取ってくる。
「ええ」
「そうか、それなら勝者サクラ」
こうしてサクラとの模擬戦は私の敗北で終わった。
サクラ自身は釈然としないと言う顔をしていたけど。
けど、思ったより楽しかったわね。
またいつか再戦して、今度は勝ちたいわ。
サクラとの模擬戦は自分で思っている以上に本当に楽しかったのだろう。
私は大事なことを忘れてしまっていた。
「ふ、ふざけるな!?」
叫ばれたタロウの言葉を聞き、サクラを倒さなければいけないことを思いだす。
私って本当に馬鹿ね。
何故かサクラが絡むといつも通りじゃいられない気がする。




