マリー④
「次の授業は一組と合同で行うので、訓練場に集まってください」
座学を終えた後、カーム先生がそう言った。
合同授業、初めてね。
訓練場で行うってことは実技を踏まえて何かするのかもしれないわね。
一組と聞いてあいつの顔が真っ先に浮かぶ。
あいつの魔法チートを見るいい機会かもしれないわね。
そんなことを考えながら訓練場に向けて移動する。
その途中で声を掛けられた。
「おい、マリー」
「……何?」
話しかけてきたのはタロウ。
私の居る孤児院に寄付をしてくれているニコラス商会の孫。
「なんだその態度は。誰のおかげで孤児院なんかがあると思っている。寄付を辞めてもいいんだからな」
こいつは何かにつけて恩着せがましい態度をとってくる。
正直うざい。
サクラに対するのと違ったいら立ちがこいつから感じる。
それとこいつのお爺さん(紹介主)には当然感謝しているけど、こいつ自身に感謝したことは一度もない。
誰のお陰って、お前のお爺さんのお陰であってお前ではない。
そうは思ってもなかなかそうも言えない。
もしこいつが何かお爺さんに言って寄付を止められたら、皆が困る。
「まぁいい。お前にやってもらいたいことがある」
ちらりと私の胸を見てからいやらしい笑みを浮かべて言う。
もし抱かせろとか言われたら殴ろう。
私がしたってばれないようにすればいいわよね。
「次の合同授業で一組との模擬戦を持ち掛ける。そこでサクラをボコボコにしろ」
「は?」
何かいやらしいことを言われるんじゃないかと思っていたけど、そうではなかった。
まあ、こいつにそんな度胸はないか。残念ね。
それよりも言われたことに少し戸惑ってしまう。
何でサクラをボコボコにしなくちゃいけないのよ。
「あいつは色々とむかつくからな。お前なら出来るだろ」
これまでの実技授業で私のある程度の実力も知られている。
チート能力を持っているので、私が一番このクラスでは強い。
それを最初はこいつも気に食わなかったみたいだけど、利用できると分かればご機嫌になる。
本当にむかつくわね。
「……分かったわ」
だけど、こいつの言うことは逆らえない。
逆らえば孤児院の皆に迷惑をかけるかもしれない。
だから申し訳ないのだけど、サクラをボコボコにするしかない。
……いつも胸ばかり見られている恨みと思えば少しは気がまぎれるわね。
これからは少し見れらてくらいでは睨まないであげるわ。
「ふっ、あいつが大勢の前で痛みつけられるのを見るのが楽しみだ。
徹底的に痛みつけろよ」
本当にごめんなさいサクラ。
そして合同授業。
タロウの思惑通り、模擬戦を行うことになった。
各クラス代表者を三人選別しての形式。
でもこれだと、そもそもサクラが出てこないんじゃ。
そう思ったんだけど、タロウはサクラが出てくると確信しているらしく、何も焦った様子を見せない。
サクラも変な噂が多いし、二組にもタロウの仲間が居るのかもしれないわね。
「まずは俺が行く」
タロウが宣言する。
特にそれに誰も文句を言うことはなかった。
これは別にタロウに誰も逆らえないとかではなく、ただ皆が戦いたいと思っていないだけだ。
見る方としては楽しそうにしているけど。
タロウが前に出たところで、残ったもので少し話し合う。
「次はどうする?」
そう言ったのはエリス・コーラル。
「多分あっちも最後に一番強い人来るだろうし、私が行ってもいいかしら」
そしてエリスは自分が最後に行きたいと言う。
だけど最後は私も行きたい、と言うか最後じゃないとダメだ。
タロウもさっきサクラを最後にするようなとこ言ってたし、最後に行かないとサクラと戦えなくなってしまう。
「待って、私も最後に行きたいんだけど……」
「へぇ、マリーが?出るって言うと思わなかったわ。
まぁあなたなら私より強いし仕方ないわね」
すんなりと最後を譲ってくれるエリス。
なんだかこの娘、少し脳筋な時を感じるけど、話していると優しさも感じる。
貴族って言うと私の中だと、タロウみたいな横暴な奴ばかり想像してしまうけど、エリスからは全く感じない。
優しい貴族って感じがするわね。
それから少し皆で話し合って二番目にエリス。最後に私と言うことでまとまった。
これで最後にサクラが出てこなかったら私のせいじゃないわよね。
でもタロウの性格上、理不尽に私に攻めてきそうね。
サクラ、最後に出てきて私と戦ってくれないかしら。




