マリー③
和気あいあいと話しながらパンを選んでいる二人を見る。
噂で聞いたことだけど、サクラはシスコンだと言うのは本当のことみたいで、妹と話しているときのあいつは心底楽しそうに見える。
前世でもあの年であそこまで仲のいい兄妹を見たことはないわね。
そんなことを思いながら二人がなにを選ぶのか見ていると、アイリが一つのパンを指さす。
「あ兄ちゃん。これ見て!カレーパンだって!」
アイリは珍しいものを見つけたとばかりに楽しそうにカレーパンを指さしている。
このカレーパンは私が店長に提案して置いてもらってるもので、この世界にはないものだと思う。
何かいい新商品を考えているとき、カレーパンがこっちの世界には見たことがなかったので提案してみたところ大絶賛された。
だから彼女も初めて見るものだろうし、興味津々にしてくれていて私も嬉しい。
あいつもどんな反応をするのかと思っていたけど、私の予想とは違う反応を返していた。
「あぁ。懐かしいな」
懐かしい?もしかしてこっちの世界にもすでにあったのかしら。
私は見なかったけれど、それでもあいつの方が裕福そうだし、色々食べているのかも。
そう考えるだけでもすこし、むっとしてしまう。
勿論、今の暮らしに不満があるわけじゃないけど、生活の質の違いを感じるとむっとする。
「あれ?お兄ちゃん、知ってるの?」
「あぁ、昔よく食べてからな」
だけど二人の会話を聞いていると、何か違和感を感じる。
サクラは食べたことがあるのに妹のアイリは食べたことは何のかしら。
それに昔って、懐かしいとも言っていたし、ずいぶんと昔のことを語る様にいうわね。
そして次のあいつの言葉にふと頭に一つのことが思い浮かぶ。
「こっちにもあったんだな」
その言葉は別の場所にあったというもので。
もしかしたら、こいつも私と同じ。
そう思ってしまう。
何となくではあったけど、サクラを鑑定してみた。
もしかしたら何かわかるかもと思ったのだけど、思った以上に凄いものだった。
スキルが三つ。色々な人を鑑定してきたけど、こんなに多く持っているのは初めて見た。
それから称号も三つ。この数も凄いと思う。
だけど、これはどうかと思う称号ね。
一つは私と同じ【鑑定士】。正直同じ称号を持っていることには驚いたけど、それはまあいいわ。
二つ目は【魔導士】。これも強力ではあれけど、今は大して気にはならない。
三つ目が【シスコン】。これは正直驚いた。思わず少し声が漏れてしまったけど、二人には気づかれてないみたいで良かったわね。
それにしても凄いわねこいつ。
スキルはそれなりに持っている人がいるから、人より少し多いだけと思えるけど、称号を三つも持ってる人は初めて見た。
私以外だと、二つ以上も見たことがないのに。
こういう所を見るとさっき思ったことが本当にそうなんじゃないかと思えてくる。
だってこいつ、私よりチートな気がするから。
私も相当だと思うけど、こいつの魔法チートはすさまじいわね。
「……ありがとうございました」
二人はパンを数個選んでレジに持ってきたので袋に入れ、お金と交換する。
そんなやり取りの間も、更にあいつのことが気になりじっと見てしまっていたけど、あいつも私の胸ばかり見ていたしお互い様よね。
いえ、胸ばかり見られていても不愉快だから睨みつけておいたけど。
ちなみにアイリを鑑定してみたら、スキルと称号が一つずつ。
その称号が【シスコンの加護】なんて意味の分からないものだっけど、これもあいつのせいよね。
普通、今くらいの年頃だと兄と言うのはうざく感じるものじゃないのかしら。
前世のクラスメイトも「兄貴がうざい」って言ってたし。
でもアイリからはそんな感じは一切受けない。
むしろ彼女もブラコンな気がするわね。
それを含めて、更にあいつのことが気になる。
一度私と同じ、この世界に転生したのか訊いてみたいけど、あいつと正面から向かい合うと、何かムカムカとしてくるのよね。
やっぱり胸ばかり見て来るからかしら。




