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マリー ②

 魔法学園に入学してとある休憩時間、私は一人の男とぶつかった。


 「きゃっ」


 ぶつかった勢いで私は転んでしまう。


 「ごめん。大丈夫か」


 転んでしまった私に謝罪しながら手を差し出してくれる男。

 

 「ありがと…あっ!」


 その差し出された手を取りながら立ち上がりお礼の言葉を口にした。

 けれど、さっきの衝撃で私は手に持っていた大きなクッキーを落としてしまったことに気づき確認してみると粉々になっていた。


 「ちょっと!どうしてくれんのよ!」


 これは滅多に手に入らない限定クッキー。

 しかもそこそこ値が張る物。

 それを無駄にされてつい頭にきて怒鳴ってしまった。


 「ごめん。でもぶつかってきたのはそっちじゃ」


 少し頭に来ていて冷静ではなかった私は言い訳のようなことを言う男に更に怒鳴る様に抗議する。

 

 「うるさい!あんたがいきなり出てきたからでしょ!」


 「分かった。ごめんって。代わりに何か上げるからさ」


 何かって何よ!

 それなら。


 「なら、お金を頂戴。結構高かったのよ」


 これは本当に高かったのでついついそんなことを言ってしまった。


 「はいはい。……今財布持ってないわ」


 面倒になったのかため息をついた後ポケットを探る動作をする。

 が、しかし、財布がないと言ってきた。


 「何?言い訳して弁償しない気?」


 私のクッキーを粉々にしたんだし弁償した貰わないと。


 「いや、本当に持っていないんだよ」


 どうやら本当みたい。


 「なら、クラスを教えなさい!後で取りに行くわ!」


 急いでいた私はその男からクラスを聞いてその場を去った。






 「私、最低」


 後から冷静になって考える。

 急いで廊下を走っていたのは私。

 あいつはただ単にトイレから出てきただけだし私も不注意だった。

 それにあいつは謝ってもくれた。

 それなのに私はクッキーを落としてしまった怒りをあいつにぶつけた。

 そのお詫びにと言う気持ちにお金を要求した。

 

 私、凄く最低だわ。

 これだと当たり屋と変わらない。


 そして放課後、私はあいつに聞いたクラスへと来た。

 そしてその男の前まで行く。


 「その……あの……」


 謝らなくちゃいけない。

 でも言葉が出てこない。

 

 そんな私をみてカバンから財布を取り出す男。


 「今出すから待てよ」


 ここでこいつが「どうして払わないといけないんだ」と抗議してくれれば私も「今回は許してあげる」くらいは言えたかもしれない。

 けど目の前の男は

 面倒だと思ったのか財布を取り出してきたのだ。

 

 ど、どうしよう。

 このままだとお金を受け取ることになる。

 流石にそれは気が引ける。


 「あっ!こ、これでいいわ!これで許してあげる!」


 クッキーの箱が置かれているのを見た私はそれをとる。

 

 「いいのよ!それじゃあ!」


 私がお金でなくクッキーを撮ったことに驚いたような顔をしていたので「これでいい」と伝えてそのままこの場から去った。

 箱の中身は残り少なかったし別にいいわよね。


 ……はぁ。

 私何してるんだろう。

 お詫びの言葉も言えないなんて私のバカ。






 そんなことがあって別の日。

 私は食堂で昼食を食べていた。

 ここは安くて量も多く、美味しいからよく利用している。

 そして昼食を食べながらあの男のことを考える。


 結局謝ることは出来なかった。

 あの時謝れなくて、今となってはますます謝りづらくなってしまった。

 きっとあいつも私のことを最低な奴とでも思っているのかもしれないけど、それは仕方ない。


 そんなことを考えていると、ふと聞き覚えのある声が聞こえてきたのでそちらに視線を向ける。

 その声はやはりあの男だった。

 その男に申し訳ない気持ちが浮かんだのだが、だけどその気持ちも少し薄れた。

 それはあいつが私の胸をじっと見ていたからだ。


 そんな視線に対し私は睨んで返すと慌てて目線を逸らす男。

 本当に男って、大きい胸が好きよね。

 そんなに大きい方がいいのかしら。

 すれ違う男たちはどいつもちらちらと私の胸に視線を向けてくる。

 それにしてもあいつ、見すぎじゃないかしら。

 さっきまで申し訳なく思ってたのがどこかへ行ってしまったわ。

 何なのよあいつ。

 なんだかあいつに対する感情が複雑になるわ。






 パン屋でバイトをしているときのことだった。

 お客さんが来たみたいなので挨拶をしたのだけど。


 「いらっしゃいませ…‥あっ!あんた」


 そのお客さんはあの男だった。

 名前はサクラと言うらしく、何度か噂を聞いたことがある。

 そしてサクラともうひとり魔法学園の制服を着た娘も一緒に来ていた。

 

 「えっと…マリー、ちゃん、だっけ?

 初めまして?アイリです」


 首を傾げながらアイリと名乗り挨拶をしてくれる。

 この娘、いつもサクラと居たような気がする。

 そういえば噂でサクラには妹がいたというのを聞いた気もするし、この娘がそうなのかしら。


 「あっ!初めまして……って!何しに来たのよ!」


 挨拶をしてくれたので挨拶を返したのだけど、どうしてここに来たのかとサクラに尋ねる。

 こいつに対する感情が何か複雑であたりが強くなっってしまった。

 それもまたこいつが私の胸を凝視しているのが悪い。


 「何しにきたって、パンを買いに来ただけだけど」


 「そ、そう」


 そんな当たり前のことを返されてしまった。

 本当、私、馬鹿。

 ここはパン屋なんだし何しに来たなんておかしな質問だ。

 

 やっぱり私、いろんな意味でこいつ苦手かも。

 胸ばっかりみてくるし。

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