マリーとの対談
セレン先生が出て行った後、二人きりになった教室でマリーから話を聞く。
『あんたも、もしかして日本人?』
一体何の話があるのだろうと思っていた俺の耳にそんな言葉が入ってくる。
しかもその言葉は懐かしく聞く日本語であった。
日本語!?
それに「あんたも」と言ったということは……。
「もしかして、マリーもなのか?」
「ええ、そうよ。やっぱりそうだったのね」
やはりそうだった。
まさか俺以外にも日本からこっちの世界に転生している人が居るとは思わなかった。
でもよく考えてみると俺だけが特別に選ばれたとかではなく、地球で死ぬとこっちの世界に転生する人が稀にいると考える方が自然か。
この世界にも地球であったようなものがたまにあるし、「昔ここに日本人がいたんじゃ?」なんて考えたこともあるしな。
「やっぱりって、いつから気づいていたんだ?」」
模擬戦の時だろうか?
でも模擬戦の時に俺が日本人だと分かるようなことをした覚えはない。
それとも俺の知らないだけで見分ける方法があるのだろうか?
「あんたがパン屋に来た時よ」
パン屋?あの時から?
でもあの時も日本人だと分かるようなことをした覚えは……
そういえばあそこにはカレーパンがあったな。
それを見て俺は懐かしいと言った気がする。
この世界では初めて見るカレーパン。もしかしてその時の俺の反応で気づいてのだろうか。
「もしかしてカレーパンか?」
「ええ、そうよ。あれは私が作ったものなの」
成程そういうことだったのか。
「それじゃあその時言ってくれればよかったのに」
せっかく出会えた同郷の奴。
色々と話してみたい。
「……それも考えたわ。でもあんたを鑑定してみたら……」
ああぁ、成程。
模擬戦の時に鑑定している様子がないと思ったらその時に既に鑑定していたからなのか。
それにしても最後何か言いにくそうな感じになったが……。
「あんたの称号見て、少し笑っちゃって……」
少しもうしわけなさそうな顔で告げるマリー。
……その気持ちは分からなくもないが。
「そうか……」
なんだか少し変な空気になってしまった。。
いっそのことシスコンだとからかってくれた方が良かったかもしれない。
「そ、それはさておいて、話してくれてありがとう。同郷の奴と話せるなら嬉しいよ」
「そうね。でも一つだけ言っておくわ。あまりジロジロと私の胸ばかり見ないでくれるかしら」
「……すみません」
ジロジロと見てるつもりはないが、それに関しては本当にすみません。
これは男のサガなのでどうしようもないのです……。
「ところであんたのそのスキルと称号凄い量ね」
そんな風に話を切り出してきたマリー。
だけど、俺はそれに何か引っかかりを感じる。
凄い量?
それは俺が【創造神】を持っているからだ。
この称号のお陰で様々なスキルと称号が得られている。
だけどそれは【鑑定士】を持っているマリーも分かっているはずで、さっきの言い方は少し引っかかる。まるで不思議に思っているような言い方だった。
「それと私ももちろん守るけど、お互いのスキルと称号は口外しないでよ」
それはもちろん守るつもりだ。
自分の手の内を誰彼構わず明かすつもりはない。
この世界は日本よりも物騒なことも多いからな。
「それは約束する。だけど一つ聞いてもいいか、さっきの言葉だが、どういう意味だ?」
「どういう意味?特に意味なんてないわよ。ただ単にそんなにスキルとかが多い人を初めて見たから少し不思議に思っただけよ」
んん?やっぱり何かおかしい。
「えっと、マリーは俺の称号が見えているんだよな?」
「?当たり前でしょ?私に【鑑定士】があるの分かってるんでしょ?」
それならば俺にスキルと称号が多いのを疑問に思うはずがない。
「【創造神】があるのも分かってるんだよな?」
「創造神?」
……あれ?この反応、分かってない?
どうしてだ?マリーも【鑑定士】を持っているなら分かっているはずだ。
「創造神って何のこと?」
「……俺のもってる称号の一つだ……見えないのか?」
すると少し時間を空けてから「見えない」と答えるマリー。
恐らく今改めて鑑定したんだろうけど、どうやら何故かマリーには【創造神】が見えないらしい。
マリーがとぼけているようにも見えないし事実だろう。
なら一体何故?
そこでふと思ったことがある。
さっきの模擬戦でマリーが行った水の矢をどこかへと消した手段。
【鑑定士】でマリーのスキルと称号を見てその二つの可能性を消したが、もし【鑑定士】え見抜けないものがあるとしたら?
「……さっきの模擬戦で、どうやって俺の魔法を消したんだ?」
思い至った可能性を確かめるため訊いてみる。
「何言ってるの?そんなの【暴食神】を使ったに決まってるでしょ」
マリーから返ってきた答えは予想通り、全く知らないものだった。




