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マリーの心配事

 初めての合同授業も終わり、今日の授業も全て終わった放課後、空き教室に俺とセレン先生、マリーが集まっていた。

 

 「それであれはどういう意味だ」


 先生がマリーに訊いているのはタロウの言っていたことだろう。

 「どうなるかわかってるのか」と言った時のマリーの顔色は明らかに悪かった。

 それを察しての今回の話会いだ。


 「……私は孤児院にいるんです」


 俯きながらそう口にするマリー。

 だけどそれがどうしたのだろうか?

 マリーの言葉の続きを待っていると、何かに気づいたのか先生が納得したような声を出す。


 「成程」


 先生は何か納得しているみたいだけど、俺には全く理解できない。

 マリーが孤児院に居たら何か問題なのか?

 孤児だからと言って悪いことは何もないし、この国でも孤児だからと冷遇されているわけでもない。

 もちろん学園も同じで孤児だからと不都合は何もないはずだ。


 今だ俺だけ理解できていないのをみて、先生が説明してくれた。


 「実はな、タロウの実家は大商会なんだ。それでその商会は孤児院に多くの寄付をしている」


 成程。そういうことか。

 つまりはタロウが言っていたのは「孤児院がどうなってもいいのか」と言うことか。


 「私は孤児院で生まれた頃から過ごしていて、それで孤児院の皆も家族みたいで。そんな皆に迷惑を掛けちゃうなんて……」


 暗い表情のマリー。

 本当に孤児院が大切なんだろう。

 俺は孤児院のことはよくわからないが、それでもマリーからその場所がとても暖かい場所だと言うことだけは分かる。

 孤児院が現在どれだけタロウの実家に援助されてるかは知らないが、それでも寄付金が少なくなれば厳しくなるのかもしれない。

 今まであったものがなくなるのだ。当然だ。


 だけどくらい表情のマリーとは反対に、先生の表情は何故か安心したようなものになっている。


 「安心していいぞマリー。あの商会がそんなことで寄付金を止めることはないからな」


 その言葉に俯いていた頭をはっと上げるマリー。


 「ほ、本当!?」


 「あぁ、間違いない」


 問い詰めるようなマリーの言葉にも何の動揺もなく確信をもって答える先生。

 先生がここまではっきりと言うことはきっとそうなのだろう。

 それを察したのかマリーも先ほどよりかは遥かにましな表情になる。

 それでも少し不安そうではあるが。


 「あの商会の現在のオーナーの父、つまりはタロウの祖父は孤児院に恩があるんだ。それの恩返しとして多くの寄付金を孤児院に送っている。

 それにオーナーも私利私欲で動くような奴ではないから、子供の我儘で寄付金を止めると言うのもあり得ないことだ」


 恩返し、か。

 確かにそれなら簡単に寄付金が打ち切られると言うこともないだろう。

 それでも恩があるのは飽くまでオーナーの父親の方で子供のためにと動くかもしれないと俺は思ってしまうが、そうなならないと先生は確信しているようだな。


 「そう、ですか……」


 先生の説明を聞いて少しほっとした表情になってはいるけど、それでもやはり完全には安心できないらしい。


 「まぁ、一応私の方からも話は通しておく。だから安心しろ」


 不安そうなマリーを見てそう告げる先生。

 その顔は本当に頼れる大人といった表情だ。

 

 この先生、本当に優しくて頼れるな。

 俺のことに対しても心配してくれたし、いい先生だと思う。


 「ありがとうございます」


 先生に対して頭を下げて礼を言うマリー。

 それに対して先生は「生徒を守るのは教師として当たり前だ」と返す。

 そのは本当にカッコいいなと思った。


 「まぁそういうことだ。あとは任せろ」


 少ししんみりとした空気になったところで先生がそう告げ教室から出て行った。

 そんな先生の後ろ姿にマリーは再び頭を下げながら「ありがとうございます」と口にしていた。

 

 いつも強気のこいつがここまでしおらしくなると言うことは本当に孤児院が心配だったのだろう。

 そんあ場所が守られるみたいで俺も安心だ。


 「ところで、話って?」


 先生が退室して少したってところで、マリーが言っていた二人きりで話したいと言うことに関して訊いてみることにした。

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