初合同授業
「次の授業だが、二組と合同で実技を行う。遅れずに訓練場に来るように」
教室で座学をして、チャイムが鳴り授業が終わったときにセレン先生からそんな報告があった。
「合同授業は初めてだな」
俺の隣に座っていたカインが話しかけてくる。
「そうだな。と言っても、そんなにやる事って変わるのか?」
まだ俺たちは入学したてだ。
授業も基礎の基礎ばかりをしている。
それは実技も変わらない。
なので人数が増えようと、自分一人での練習になると思うのだが。
「多分、色んな人の魔法を見るためじゃない」
俺の疑問にアイリが答えてくれる。
「うん。それと、違う先生に教えてもらうのもあるかも」
フローラも補足で説明してくれた。
成程。それはあるかもしれない。
見ることも勉強になると言うし、教師一人一人、教え方が違うだろうから、色んな人に教わると言うのもいい勉強だな。
「まあ、お前には必要ないかもな」
カインが冗談めかして言ってくる。
いやいや。そんなことはない。
確かに俺はクラスの中で一番いい結果を出せているが、それは全てスキルと称号のお陰だ。
スキルと称号がなかったら、クラスで一番ダメかもしれない。
だから他の人の魔法は色々見たい。
話しながらも俺たちは、次の授業に向けて教室を出て訓練場に向かった。
「全員、そろっているな」
訓練場に移動し、チャイムが鳴ったところで、先生が確認を取る。
セレン先生と他のもう一人の先生、カーム先生がそれに続いて自己紹介をしてくれた。
カーム先生は40代ほどの男性だ。
「一組の方は初めまして。二組担当のカームです。よろしくお願いします」
丁寧な挨拶と共に軽く頭を下げるカーム先生。
落ち着いた雰囲気が印象的だ。
「それでは、私たちの自己紹介も済んだところで、さっそく授業に入るぞ」
セレン先生の仕切りで授業が始められる。
見た目的にはセーラ先生の方が年上に見えるが、セレン先生はエルフだ。
見た目年齢は全然変わってくる。
俺としては歳が上のセレン先生が仕切るのには納得だが、他の人たちからしたらそうではないみたいだ。
少しざわついている人もいる。
「うるさいぞ。何をこそこそ話しているんだ。私語は慎め」
そんな生徒たちをセレン先生が注意する。
「先生、質問があります」
注意する先生に対し、二組の生徒が手を上げセレン先生に問いかける。
どうやら、直接問いかけるみたいだな。
「カーム先生の方が歳も上なのにどうしてセレン先生が仕切ってるんですか?
それに、カーム先生は三年生も担当したことがあると聞いたことがあるんですけど…‥」
直球な質問を投げかける男子生徒。
実際、二人は同僚で同じ立場なんだし、そこまで年齢のことは関係ないと思うが、やはり、年上の者を立てる心意気は大事だ。
俺も先生がエルフだと知らなければ、どうして先生が?と思っていただろう。
歳が上のカーム先生が仕切ると思うのは当たり前だと思う。
それから質問をした男子生徒は年齢のこと以外でも引っかかるところがあるらしい。
カーム先生が三年の担当していたという実績の部分だろう。
当たり前だが一年と三年では実力はかなり違ってくる。
一年なんて学園に入りたての初心者だ。
この学園に入学できている段階で優秀であるともいえるが、飽くまで一年の、それも入学したてとなると、よく言って初心者に毛が生えた程度だろう。
そんな一年と卒業を控える三年。
教える技術の差は言うまでもない。
まぁ、一年の担当の先生は初心者にでもわかる様に説明しないといけないという技術は問われるだろうが。
それは教える技術であって、魔法の技術ではないが。
だからと言って一年の担当の先生が魔法の技術で劣っているということではないと思うが、質問を投げた男子生徒はそうは思わなかったのだろう。
三年生を担当したという功績のある先生と、何もない先生。
俺もどちらに教わりたいかと問われれば、前者を選ぶ。
だから、男子生徒の言いたいことはよく分かる。
そんな男子生徒の質問に答えたのはセレン先生だはなく、カーム先生だった。
「確かに私は三年生の担当をしたことはありますが、それだけです。
魔法の技術も、教える技術もセレン先生の方が優れています。
彼女に教わることは、素晴らしいことなのですよ」
男子生徒に子供を諭すように質問に答える。
その答えを聞いても、質問をした男子生徒だけでなく他の人も納得がいっていないという顔をしている。
あれだけではセレン先生がどれだけ凄いかは分からないだろう。
そういう俺も、先生がどれだけ凄いのかは知らないが。
それにしても、カーム先生、セレン先生のこと絶賛しているな。
この口ぶりを聞くにセレン先生がエルフだということは知っているのだろうけど。
それと気になることもある。
セレン先生はこの学園に長く勤めていると言っていた。
いつまでも若い先生が居れば、噂になったり、正体に気づいた人もいると思うけど、全くそんな話は聞かない。
俺は知らないが、カーム先生は三年の担当をしていたというのを知っている人もいた。
それと同じようにセレン先生のことも知っている人が居てもおかしくないだろうに、この場には一人もいない。
何か秘密でもあるのだろうか?
「納得のいっていない人もいるでしょうがいずれ分かります。
では、セレン先生お願いします」
「あぁ、そうだな。それでは今度こそ授業を始めるぞ」
そうして皆が納得のいかない顔をしたまま、初めての合同授業が始まった。




