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アイドルジョッキー馬になる  作者: ゆらゆらゆらり
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信一 ♠ 咲き乱れる桜

【浦和11レース 桜花賞3歳牝馬オープン 1600Ⅿ 11頭立て 天候:晴れ 馬場:良】



 俺は引綱を手に大型ビジョンに映る姿を見つめていた。そこに映るゲート後方で輪乗りする姿を。


 やるべきことは全てやった。あれだけの調教をしても馬体減りはなく、むしろ4キロ増えて、ついに400キロになっていた。

 後はユッカとまなっちゃんに全てを任せて見守ることしかできない。

 無事に戻ってきてくれることを祈りながら。



 スターターの姿が映し出され、ファンファーレが耳へと届いてくる。


 ドクドクと心臓が動く音が聞こえてきそうだ。


 各馬が順調にゲートへとおさまっていく。ユッカも問題なくその身をおさめた。そして、ゲート前方から係員が出ると、大外の馬もゲートへと導かれる。


 最後にその係員がつまずきながら、ゲート前方から外にでて、ゲート裏へ。


 全ては整った。思わず生唾を飲み込む自分がいる。



 そして――ゲートがゲートが開いた。


 一頭飛び出している。フライングじゃないかというくらいに、一瞬で青い帽子が1馬身前にでている。


 相変わらずの反応の良さを見せるアイウォンチュー。他は?


 横からのカメラアングルで見にくいが、出遅れた馬はいなそうだ。最内のグリンも好スタートといえる。3枠のユッカも悪くない。


 とにかくすぐにコーナーだ。というより、いきなりコーナーを曲がりながら走っているようなものだ。


 おいっ! うそだろ……。


 アイウォンチューの村下騎手はがちりと手綱を抑えている。このレースのためだけに、わざわざ園田から呼んできた騎手だ。


 前走のこともあるし、大逃げを打つんじゃ……。


 予想に反して、ゆったりとコーナーを周り、なんと2番手で正面に。2番枠からでたパーピーハーピーの騎手が、行かないの? という感じで横を見ながら、コーナーワークで無理することなく先頭に立っている。


 マジか……。


 アイウォンチューは2番手でも口を割ることなく、しっかり折り合っている。折り合い知らずといわれたあの馬が。


 枠なりで3番手の外にはサクットネ。インコースのポケットにグリーングリン。

 ユッカはその真後ろのインコースになっている。


 ギャルルンバは? ユッカの少し後ろの外。これまでよりは少し前めか。


 予想どおり有力馬が前を固めたか。いやいや、全然予想どおりなんかじゃない。アイウォンチューは2番手だし、なんだこの()()()()(ペース)は。





 1、2コーナーをまわり向こう正面。


 ヤバいぞ、このままだと。嫌な感じで心臓は動きを速める。


 強敵であるグリーングリンとユッカが内に押し込められているからか、誰も動かない。馬群は団子のままだ。

 このままだとインでつまってしまう恐れが……。頼む柿沼君、仕掛けてくれ!


 同じ小林で、一緒に追い切りまでした彼へと、胸の中で声を飛ばす。

 外の3番手サクットネが動いてくれればペースが上がる。そうすれば馬群がばらけて道もできる。


 だが、彼の手は動かないまま3コーナーへ。


 柿沼という騎手は、どちらかというと消極的ではある。ユングラフ賞の時のように誰かが併せてくれば一緒に押し上げるのだが……。


 サクットネの斜め後ろにはウラワッコダマシイ。前走とは違い丹波さんはまるで動く気配がない。



 そこで、ふと気付いた。古久保先生……。


 このレース、全ては彼に操られているのか。枠順発表後にこの作戦を考え付いたのだろうか。

 いや、もっと前から準備していたのだ。


 このレースに向けて、アイウォンチューに折り合うことを叩き込み、ユングラフ賞でウラワッコダマシイに早仕掛けさせることも全て計算のうちだったんだ。


 あのレースがあったからこそ、サクットネは動かない。きっと、あの時のように早仕掛けになれば後ろの馬に差されると思っちまってる。


 このまま直線を迎えれば、丹波さんが外にださせないように馬群をしめてくるぞ。


 頼む。誰か仕掛けてくれ!



 3コーナー過ぎ、早くもパーピーハーピーの騎手の手が動き始めた。


 アイウォンチューとサクットネが楽な手ごたえでかわしにかかる。

 パーピーハーピーが下がり、真後ろのグリーングリンの騎手は手綱を引いてスピードを落とさざるおえない。

 馬群が固まっていて、外にいくに行けないのだ。その後ろのユッカまでも下がってしまう。


 くそっ! どこかに道よできてくれ。


 このままではアイウォンチューにやられる。全てが古久保先生の思うがままになっちまってる。


 お願いだ。馬群のどこか割れてくれ!



 だが、願いもむなしく直線へ。


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