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アイドルジョッキー馬になる  作者: ゆらゆらゆらり
30/98

信一 ♠ なんで

【11月×日大井第10レース 特別2歳選抜1700m(外周り) 天候:小雨 馬場:重】


 大型ビジョンに映る姿は、今日もいつもと変わらず落ち着いて輪乗りをしている。実質初ナイターでも問題なさそうだ。

(今まではナイター競馬といっても16、17時だったので昼間開催と変わらなかった)


 体調も万全。まだまだ黒っぽい芦毛だがライトで輝いている。馬体重も6キロ増えて372キロになっていた。


 今回は前回のように坂路で追うことはなかったが、周回コースで毎日のように軽めとはいえ乗り込んでいた。インナーマスッルを鍛えるようにじっくりと、といった感じだ。

 今回のような調教にした理由はもうひとつ。長めの距離を使うにあたって折り合い面を重視してのものだ。

 短距離からの初距離だと気持ちが乗り過ぎて折り合いを欠いてしまう馬もいるので、先生はその辺りを気にしての指示だったと思う。


 もちろん、ユッカなら距離を自分で理解できているし問題ないのだが、軽め調教でだいぶ気持ちはリラックスしている様子だった。

 緑豊かな小林という地も合っているようだ。


 それはまなっちゃんも同じなのだろう。

 小林は競馬場に隣接していないからか、厩舎であってもピリピリとした雰囲気がない。

 牧場外もそうだが、緑に囲まれた田舎で人も温かい。


 そんな雰囲気が合ったのだろう。まなっちゃんは明るくなった気がする。とはいっても、大井の時はよく知らないのだが。

 ユッカでの2連勝は精神的なものはもちろん、他厩舎から声がかかるという効果ももたらしていた。


 それに応えるように、まなっちゃんは積極的に他厩舎の調教にも乗るようになり、騎乗数も少しずつ増やしている。

 しかも、ユッカの2勝も含めて、この短期間で5勝もしている。それまで今年は0勝で、デビューからだって6勝しかしていなかったジョッキーがだ。


 いやいや、もうひとつあった。今日の3レース、サトミノヒメで見事に逃げ切り勝ちをしていたのだ。


 上手くいくときはいくもので、ヒメは大外を引き当てていた。相変わらずのスタートだったが、まなっちゃんが激しく手綱を押して、外から先頭に立つと、重馬場で泥となった砂を浴びることなく、最後は迫られて危なかったがなんとか首差残していた。


 とにかく竹川厩舎は絶好調だ。

 今日は全馬出し(といっても2頭だが)なので先生も留守番の必要がなく、競馬場に来ていて、ヒメとまなっちゃんの勝利を喜んでいた。


 そういえば、ヤマさんまで見に来ていた。暇なんだか、近頃毎日のように厩舎に顔を出している。もしかして速攻で首に?

 まさかね。いや……あの人の性格からするとなくはない。



 まあ、それはそれとして、やっと厩舎も騎手も少しは認められたということだろう。ユッカは実力どおりの圧倒的な人気になっている。


 頭数も10頭と手ごろで、これといった馬も見当たらない。

 特に出足が早い馬もいないので、1番枠から逃げ切りといきますか。


 そんなことを思っていると、ゲートが開かれた。


 ユッカはいつものように好スタートで他馬より1馬身飛び出した。このまま一気にハナ(先頭)に。いや……なんで?


 いつもなら自ら加速していくはずなのにユッカの反応が悪い。慌てた感じでまなっちゃんが手綱を持つ手を動かしている。

 外からは内側に向けて、馬たちが押し寄せてくる。


 だめだ。このままでは包まれてしまう。


 まなっちゃんも思いは俺と同じなのだろう。激しく手を動かしている。それでもユッカのスピードは乗っていかない。


 デビュー戦のように他馬にぶつけられたわけじゃない。なのに、なんで進まないんだ。重馬場に脚を取られているのか。初めてのナイター照明が気になっているのか。


 なんでだ!


 まなっちゃんが左手にあるユッカ(雪香)の鞭をくるりと回して持ち直している。まるで最後の直線のように、しっかりと淡い紫の持ち手を握って鞭を放った。


 それに対しユッカは――なんでだ!


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