雪香 ☆ 勝負の直線
3、4コーナー、内ラチ沿いの最短コースを周っていく。位置取りは勝負圏外の馬を除けば、ほぼ最後方。
真夏から反応はない。
私がハミを抜いたから、脚(力)がなくなったと思って、あきらめてしまったのかもしれない。
【直線入口】
内側が混み合っている。内は突けない。ならば――直線まで我慢。
コーナーはインをぴったり周り、直線に入ってから馬群の大外へ。
後は、私にどれだけの脚があるかだ。
お願い。伸びて!
【直線半ば】
行ける! 行ける!
脚が前へ前へと伸びる。
馬群を飲みこみ、残るは内側から抜け出しているあの一頭。内外で離れているが、間違いなく3番のあの馬だ。
ハミをぐっと噛んで、さらに脚を前へと。
だが突然、脚が重くなってきた。
スタート直後と3コーナー手前で脚を使ってしまったからか、まるで鉛でもつけられたように重い。
お願い。あと少しだけ力を!
そんな願いも虚しく脚が重くなっていく。
と、その時耳へと、「ユッカがんばれ! がんばれ!」
真夏が声を張り上げている。手綱を必死に押しながら。
絶対に負けるわけにはいかない。絶対に。
真夏の悲しむ顔なんて見たくない。(電話で聞いた)あの苦し気な声なんてもう聞きたくない。
だから――伸びろ! 伸びろ!
自分の脚に向かって叫び、重い脚を必死に前と伸ばした。
重い。重い。重い。重い。
重いけど、なんで?
確かに脚が伸びていく。
そうか、リズムだ。真夏が手綱を動かして、リズムを刻んでくれているんだ。
幼い子供が1、2、1、2の掛け声とともにしっかりと足をだして歩くように、私の脚も前と向かっている。
「ユッカがんばれ!」
さらに、何度も聞こえてくる声が、私を押してくれている。
そして――




