雪香 ☆ まさに馬なりです
よしよし。なんとか大丈夫そうだ。
ここ(大井競馬場)に着いた直後は、マジでヤバかった。
もーうだめーえって言ったら、信ちゃんがすごい険しい顔になっちゃったから、大丈夫なんて、言い直したけど、本当はけっこう車酔いヤバかったんだよ。
でもまあ、車酔いもパドックを周る頃には治まったし、返し馬も順調、ゲート入りも問題なしと。
後はゲートが開くのを待つだけ。
――真夏。がんばろうね。
ガシャン!
相変わらずゲートが開く音って凄いわね。
あれ? 誰もいない? もしかして突進しちゃった。いや、ちゃんとゲートが開いてからスタート切ったよね。
うんうん。大丈夫だね。
真夏が少し手綱を押しているのが、見えはしないが伝わってくる。手綱を引いて私を止めなかったってことはレースが成立しているということだ。
つまり、他の6頭(7頭立て)より好スタート、それも置き去りにするほどのロケットスタートだったんだね。
能力試験はゲートなどに問題がなければ、合格タイムの基準が厳しいわけではないので、騎手たちは無理しない。
真夏もスタート直後に手綱を動かした感じがあったが、後は流していた。
直線に入って後続の騎手が仕掛けたのか、気配と脚音は聞こえてきたが、終始楽に走ってきた感じだ。まさに馬なりというやつだ。
何もかも問題なし。
――さあ、いよいよ次はレースだね。真夏。
この時の私は、真夏と一緒に走れたことに浮かれていた。だが、知るのである。能試とレースが全く違うということを。




