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アイドルジョッキー馬になる  作者: ゆらゆらゆらり
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信一 ♠ 怖っ!

 北海道を朝一で立ち、こっちへと戻ってきていた。だが、小林ではなく別のところを目指している。ユッカ(雪香)がこっちに来る前にして置かなければならないことがある。


 ぐうううう~。


 限界とばかりに腹がなった。


 手にしているスマホを見れば14時過ぎになっている。

 思えば、朝早くに場主の奥さんの朝ごはんをいただいてから何も食べていない。


 それにしても遠い。同じ千葉県内だからと甘くみていた。遠いわけではなく、それもこれもこのせいか。


 振り返れば、歴史を感じる古びた駅舎。

 このローカル線の本数がとにかく少な過ぎた。でも、車窓から見える風景は北海道とはまた違った自然があふれ、ほっこりして最高だったけど。


 スマホへと目を落として確認すると、ここから歩いて10分ほどのところに、ユッカが教えてくれたパン屋はあるようだ。


 スマホの地図で当たりをつけ歩きだす。


 ちょうど、地元人らしき人がいたので聞いてみると、すぐに教えてくれた。


 どうやら美味しいパン屋らしく地元では有名らしい。それだけじゃなく、知っている人が来るのかもしれない。中向真夏の実家だということを。






 教えられたとおりに歩いていくと、木々に囲まれた中に建物が見えてきた。ログハウスというだけで確定。絶対ここのパンは美味しい。






 やっぱ(美味しいということに)間違いはなかった。


 テラス席に座り、あっという間に2個目を食べ終えた。全然食い足りないが、さすがは人気店ということもあって、こんな時間ではそれしか残っていなかった。


 家族3人でやっているということで、レジには彼女(真夏)のお姉さんだという人の姿があった。


 変に怪しいやつとか思われないようにユッカ(彼女の親友である雪香)を最大限に利用して、いろいろ理由をつけて、彼女に会いたいことを告げると、親戚が経営している乗馬クラブにいるとの言葉が返ってきた。

 車で30分ほどのところらしいので、タクシーを呼んでもらい、待っているという状況だ。


 ほぼ引退状態で実家に戻っていると噂で聞いていたが、乗馬クラブにいると聞いて、少しほっとしている。


 彼女も俺と同じ。馬が大好きなんだと。だから、希望が少し膨らんでくる。



――それは彼女の姿を見た時、さらに大きく膨らんだ。






【乗馬クラブ】



 乗馬クラブにつくと入口の木戸が締められようとしている。慌ててタクシー料金を払い、車から飛び出して走っていく。そして、声をかけると、


「申し訳ないが、今日の営業は終わったんで」


 ぶっきらぼうな言い方に、声をだすことにひるんでしまう。


 だって、怖そうなんだもん。体はでかいし、ひげ面で、格好からも荒くれ者のカーボーイって感じだし……。

 本当にこの人が親戚の人? いや、この人がというのは俺の思い込みか? となると番人? 警備員? いや、こんな格好だしそれはないか。

 でも、中向真夏は女性ジョッキーにしてはすらりと背は高かったし。とはいっても、あくまでもジョッキーにしてはということ。

 こんなでかい人が本当に親戚?


 まあ、それはそれとして、ここで引き下がるわけにはいかない。ユッカに、「俺にまかせとけ」なんて言ってきちゃったし……。


「あのう、乗馬がしたいわけではなくて……」


 声が小さくなってしまう。大きな目がぎょろりと向かってきた。悪いことなんてしていないのに、すみません、とつい謝ってしまう。


『もーう! ちゃんと、はっきり言いなさいよ!』


 いつだったかユッカに言われた声が、北の大地から飛んできた。


 わかってるって。


「中向真夏さんに――」


 ちょっと怯えながらではあるが、ここに来た理由を説明した。もちろん、ユッカを最大限に利用しながら。


「――それで、彼女ユッカは落馬事故の前から、ずっと真夏さんのことを心配してまして、地元で兄のような存在だった俺にも、よく相談してくれてたんですよ。それで俺にとっても真夏さんのことは他人事に思えなくて」


 またっくもって嘘ばっかだ。俺の出身は静岡で、ユッカは栃木。当然、会ったことなんてありゃしなかった。


 目の前では大きな男が腕組みをして、無言のまま地面を睨みつけている。


 怖っ! それでも――「彼女(真夏)に会いたいんです」


 きっと、この人も彼女のことを心から心配している。じっと、何かを考えている姿からそれが伝わってくる。


 彼が顔を上げ、俺を一瞬見ると向きを変え、閉じかけていた戸を開いた。そして、無言で歩きだした。


 俺も慌てて後に続いた。


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