第9話 家族
大地震の度に起こる通信障害は本当に困る。
スマホはネット閲覧関係は完全にカットして、メールと通話のみ、なんならメールのみに限定してしまえば、今のようにはならないと思うのに。
どうなんでしょう。
動き出したスマホの画面に表示されたもの。
それは家族からの数十件にも及ぶ、メールや繋がらなかった電話の履歴だった。
特に多いのは父親で、最初のメールは僕を心配する言葉と、僕が送ったメールへの感謝の言葉だった。
最初の惨劇直後に僕が送ったメールは、自分では覚えていないものの、かなり的確で説得力のある物だったらしい。
元々、普段とは違う空気を感じ取っていた父は、会社に着くとすぐに半信半疑の警備員を説得し、出入り口を一カ所以外封鎖。
部下と手分けして、チョコレートなどの高カロリー食を近隣コンビニで買い込み、自分達の会社への避難を訴え、更に出入り口を全て封鎖した後も、避難用の縄梯子を使って人々を避難させていたようだ。
その後、すぐに連絡が取れなくなってしまった僕への、父、母、妹からの心配するメールが何通も続く。
何通も、何通も。
父も、母も、妹もここより危険な場所にいる事は間違い無いのに、
僕を心配してくれていた。
僕が家族のことも忘れ、黙々と家の強化をしていた間も、僕を心配してくれていたのだ。
はっとして、部屋を見回す、
沢山の家族写真。
そんな物、2年前まであっただろうか。
僕があの女に出会う前、
そして自分の部屋に引きこもる前。
その頃には1枚くらいしか飾って無かったように思う。
溢れる涙を拭いながら、急いで最新のメールを見ると、それは父からのメール。
父から僕に宛てられた、遺書のメールだった。
言ってくれないと、わからないよね。
聞いてくれないと、伝えられないよね。